前回、F-117の初飛行が1981年とお伝えしましたが、議会の承認を得たのが1978年ですので、この飛行機は実質3年もかからずに完成させたことになります。
まるで量産の乗用車のような開発スピードです。
開発したのは、かのロッキード社です。今はロッキード・マーティンですね。
そこにはスカンク・ワークスという機密度の高い仕事を超特急でやっつける部署があります。F-117は大変興味深い飛行機ですが、実はこのスカンク・ワークスの方が興味深かったりします。
実際、スカンク・ワークスを紹介した書籍を手に入れた際、F-117を良く分かっていなかったくらいですから。
スカンク・ワークスが生み出した機体をいくつか紹介しましょう。
有名どころでは、まずは高高度偵察機のU-2 ドラゴン・レディです。
1号機が飛んだのが1955年ですから、誕生してから実に70年近くが経過しているのですが、今だに現役です。
先頃のアメリカ本土上空を飛んだ中国の気球を撮影したのはU-2です。(写真はその時の機体ではないと思いますが)
偵察気球は、普通の飛行機では飛べないような高高度を飛んでくるのです。
そこで旅客機の2倍以上の飛行高度である21,000m以上の成層圏を飛べるU-2の出番となったのでしょうね。
奇しくも、このU-2の開発コンセプトも同様なのでした。
ミサイルが届かない高い高度で敵国上空に侵入すれば打ち落とされることは無いだろう、というわけです。最終的にはミサイル技術も向上して打ち落とされてしまい、偵察機としての利用頻度は下がるわけですが。
この他に類を見ない高高度を飛行するための技術は大いに学べるポイントなのですが、スカンク・ワークスの場合、やはりアイデアこそが学ぶべきポイントです。
例えば、この飛行機の降着装置(車輪)は、機体の前後に1カ所ずつ、そして両翼の端末に1カ所ずつあるのですが、翼にある車輪は、離陸時に外れてしまうのです。そうすれば飛行時はその分軽くなりますし、機体の構造側も軽量に作れます。
常識的な感覚からすれば
「え?そんなのアリなの?」
と思うでしょうが、それがアイデアというものです。
こういうヒントに触れることで
「え?そんなのアリなの?」
のレベルを変化させたければ、スカンク・ワークスの実績は大変参考になります。
ちなみにこのU-2、現在では空軍の他にNASAが各種観測などに使用しているそうです。