アメリカ遠征 11日目

明日は早くも帰国日です。
遠征は朝から晩まで大忙しで、10日なんてあっという間に過ぎてしまいます。

今日は早朝4時起きでリノ・タホ国際空港に向かい、オークランド経由でロサンゼルス国際空港へ。
ロサンゼルスは久しぶりです。
2007年にFormula SAEの遠征で来たので、実に15年ぶりでした。
空港周辺の雰囲気は変わりませんね。
詳細については良く覚えていませんが。

空港到着後は、コータローのリクエストで、カリフォルニア・サイエンスセンターに行ってみました。科学博物館です。

展示物は自然に関することや宇宙開発について
なのですが…

ここにはスゴイ奴がいます。

スペースシャトル エンデバー
本物です。

以前、スミソニアン博物館のウドバー ヘジー センターに行ったときにスペースシャトルがあって興奮したのですが、実は実物大のモックアップでした。
でも、こっちは実物です。

残念ながら内部などは見られませんが、外観だけでも良い勉強になりました。
想像とはかなり違っていましたね。

白い部分はツルッとしていて、全体的にもっと緻密な作りになっているのかと想像していましたが、実際は白い部分は繊維質のような質感です。セラミック繊維なのかな?
黒い部分は皆さんご存じのセラミックタイルで、まるでパズルのよう。
タイヤはミシュラン製でした。

2022年9月23日追記
ウドバー ヘジー センターへは2009年に行ったことがあるので、その時の記録を確認してみました。
あったのは60パーセントだったか80パーセントだったか、中途半端なスケールのエンタープライズのモックアップでした。
その後、そのモックアップは本物のエンタープライズに置き換わって、さらにその後、本物のディスカバリーと入れ替わり、エンタープライズはニューヨークにある本物の空母イントレピッドを博物館にした、イントレピッド海上航空宇宙博物館の甲板上に設置されたスペースシャトルパビリオンに移されています。
ややこしいですね。
もう一つの現存する実機(アトランティス)は、ケネディ宇宙センターにあるそうです。
なお、エンタープライズは大気圏の滑空試験に用いられた機体なので宇宙へは行っていません。

巨大だけど軽くて丈夫にしたいロケットの胴体(つまり燃料タンクの外板と言ったらいいのか)を構成しているのは単なる板材ではなかったりします。
これ、以外と知られていないのではないでしょうか。

まず、アルミ合金の厚板の片面(ロケットの内面側)を以下の写真のような格子状に削り出します。この工程で材料のほとんどはゴミになっちゃうのですね。
形状を付けるのは内面側だけで、外側は平坦でツルッとしてます。
その後、コイツを曲げて、湾曲したものをつなぎ合わせて、大きくて長いパイプ状にします。それがロケットの本体です。

要はロケットの本体は削り出しってことです。なんとゴージャスな!

NASAは長方形格子のオーソグリッド

対してJAXAは正三角形格子のアイソグリッド

JAXA 種子島宇宙 センター 宇宙科学技術館にて

ロケットの大きさとかコストとか、色んな理由でやり方が違うのでしょうし、どちらにも一長一短があるのでしょうね。
個人的にはアイソグリッドの方がカッコイイと思ってます。ネジレ方向にも強いでしょうし。
JAXAの研究者に材質を聞いたところ、5000番台のアルミ合金を使っているそうです。5052だったかな。「吊るし」の材料だったはずです。
溶接ができる最強のアルミ合金7N01材なんかを使っているのかと思っていたのですが
「コストがありますから」
だそうです。
対してNASAはアルミ・リチウム合金です。リチウムは最も軽い金属なのですが、こりゃお高いでしょうね。

その後は、近くにあった自然史博物館に行きました。
一般的にはこちらがメインなのでしょうね。
もちろん、お客さんもこちらの方が圧倒的に多いです。

建物は立派です。大理石造りです。

たしかどこかで
その国の将来を考えるなら、若者の教育に力を入れるべきで、博物館などを充実させるべきだ
みたいなことを聞いた覚えがあります。
台湾の奇美博物館なんかはまさに良い例で、内容も外観も素晴らしいです。
たぶん、日本で同じようなことをやろうとしたら「無駄遣い」と言われることでしょう。
でも、上野の東京国立博物館は良い線行ってますね。

おっと脱線しました。

ここの目玉は恐竜の化石なのですが、やり方がうまいのは、目玉になる恐竜が施設のあちこちに分散してあることです。

子供はやはり恐竜大好きなので、一部屋に集めてしまうと、そこを見たら「もういい!帰ろう!」ってなるでしょうから。
その辺のやり方は、ニューヨークのアメリカ自然史博物館なんかとはちょっと違っていて斬新です。
反面、何がどこにあるかは分かりにくいですが。

という感じで、1日があっという間に終わりました。

今日の夕食はメキシコ料理です。
ホテルのフロントスタッフに、近くでお勧めのメキシカンレストランは無いか聞いたところ、老舗の良い店を教えてくれました。
アメリカ遠征では、できるだけメキシコ料理屋さんに一度は行くようにしています。
安くて量があるから(笑)
でも、大抵は多すぎるんですよね。まぁ、アメリカで食事をしたらそんなものでしょうけど。

今日もとても良い経験ができました。

アメリカ遠征 10日目

今日と明日はオフです。
本来、今日はプレゼンテーションの発表と表彰式
明日はCOVIDのPCR検査に充てていましたが
発表と表彰式は閉鎖空間で実施する必要があるため
感染防止の観点から中止になり
PCR検査は不要になったため
今日と明日はフリーな日になりました。

ARLISSが終わった後に、まずやらなければならないこと
それは洗車です。

砂漠を走っていると、パフパフの微細な砂によって
ボディは凄まじく汚れます。また、隙間という隙間、あらゆる所に入り込みます。
これがなかなか落ちないのです。

仮にそのまま返却すると、500ドルの罰金というか手数料を取られます。
確か10年くらい前は、50ドルだった気がするのですが、恐らくバーニングマンの参加者のせいで額が上がったのではないかな。
というわけで、ホテルをチェックアウトしたら、まずは町の洗車場に直行。

その後は全米最大のエアショーである
リノのエアショーに行ってきました。
以前はARLISS終了後に良く行っていたのです。
アメリカの文化を知ることができるし、エンジニアリングの勉強にもなりますので。

今回はスタンドの指定席です。
チケットを買うときに、一般席も指定席も同一料金だけどどうする?と聞かれたので、迷うこと無くチョイス。
でも、特別良い席というわけではありませんでした。
恐らくコロナ対策で各観客間の空間確保のためでしょうね。

では、一般席はなぜ必要なのか?
このエアショーでは、狂信的な愛好家グループがいて、彼らはグループで固まって盛り上がるので、そういう人達のための席が必要だったのでしょうね。

それにしても今年のリノのエアショーは、コロナ禍前に比べて三分の一程度の規模だった気がします。
観客席は確実に減っていました。
とはいえ、なんだかんだ言って結構盛り上がるのですけどね。

F-22が来ていました。
デモ飛行はもちろん、新旧最強の戦闘機の共演と言うことで、P51とのランデブー飛行もあって、かなり盛り上がりましたね。
F-22のデモ飛行は以前見たことがありましたが、強力なエンジンと偏向ノズルのお陰で、普通ではあり得ない動きをします。

F-18です。
デモ飛行はもちろん、こちらはベア・キャットとのランデブー飛行がありました。
映画「トップガン マーヴェリック」のヒットのせいか、デモ飛行は気合いが入っており、かなり長い時間飛んでいました。

こんな大きな輸送機も見られます。
機内も見られるのですが、後部から内部に入ると長い列ができていて、何かと思ったらコックピットを見学する人の列でした。
並んでみました。

コータローご満悦。

大会終了日は、リノのホテルに泊まって、翌日の早朝の便で移動するのが常。
今回泊まったのは、以前に一度泊まったことがあるカジノです。

なぜカジノかというと、場所や時期にもよるのでしょうけど
安いのです。ヘタをするとモーテルより安かったりします。

ただ、ここはあまり治安が良くない地域なのですよね。
なので安いのでしょうけど。
まぁ、カジノの中は逆に安全なので特に問題はありません。

夜は近所のレストランで食事。
大きなステーキで、コーターローもご機嫌です。

明日は4時に起床して4時30分にチェックアウト
7時のフライトでオークランドを経由してロサンゼルスに行って、空港の近くで一泊して翌日に帰国します。

アメリカ遠征 9日目

今日はいよいよ打ち上げ最終日、いつも通り4時半起床で…
と思ったら、コータローが機体を組んでます。
思いのほかトラブル解決に手間取ったようです。

それでも6時30分には出発して、8時30分ごろ砂漠に到着しました。

気温は12度くらいで寒いです。
雲多く砂煙で視界はいまひとつ
視界が悪いと機体をロストしてしまう可能性が高いので、少々心配ではありますが、風は微風でまあまあのコンディション。

さて、現地での最終セッティングを…と思ったら
誘導の鍵であるGPSが不調。

どうやら前回の着地の衝撃でGPSモジュールのコネクターが抜たようです。
通常は抜けるようなものではないので、相当な衝撃がかかった可能性があります。

他にも損傷した部品がありましたが、スペアパーツをふんだんに準備していたので組み替えて完了。

この日は打上げが多く、ロケットの準備が思うように進まなかったようです。
打上げの申し込みをしたのは午前中でしたが、結局は午後3時頃の打上げになりました。

まずはロケットオーナーのところに機体を持っていって搭載してもらいます。

一緒にロケットを担いで発射台まで移動

発射台にセットしたら打上げです。
風もほとんど無く、晴れてきました。

今回は3000m程度の高度に打上げ。
わずか6秒程度でその高度まで上がり、空中で放出された機体はパラシュートで降下・着地。

着地地点に到着。ゴールから訳3..5kmの地点です。
懸案だったパラシュートは無事に切り離されています。
が、動かない?

と思ったら走り始めました。
今回は我々捜索隊が到着してから走行開始するようにプログラムにウエイティングを入れていた模様。
走行開始直後は結構なスピードでしたので、車で追跡。
ただ、駆動系のメカに問題があるようで、動力伝達がうまくいっていないようにも見えます。

何とか1時間10分ほど走行して、ゴール手前100mで停止しました。
写真ではゴールのパイロンが点のように見えます。というか、ほとんど見えませんが。

我々の他にはゴールまで20cmに迫ったチームがいたので、優勝というわけにはいきませんでしたが、ここまでゴールに迫ったチームは今回の参加16チーム中で2チームのみでした。
他の多くは、着地衝撃で故障するなど走行することすらままならなかったようです。
やはりARLISSは厳しい。

理想のゴールと呼ぶには今一歩及ばず、不完全燃焼気味ですが、当チームがARLISSに参加しておおよそ10年間チャレンジしてきた中でも今回の成果は快挙と言って良いでしょう。

例年であれば、この後に閉会式などがあるのですが、今年はCOVIDの影響もあり、各チームが予定をこなした順に終了、解散となりました。

これにて今年のARLISSは全日程を終了しました。
コータローには今後に繋がる大変良い経験となったと思います。