大事なものは目に見えない

ハイラックスを車検に出したので代車を借りました。

以前は整備やら車検やらは可能な限り自分でやったものですが、最近は時間や労力の都合もあってすっかりお任せです。
で、信頼できる地元の整備屋さんにお任せしています。

その整備屋さんは、スズキのディーラーでもあるので、当然ながら代車はスズキの場合が多くて、毎回「最近のスズキは良くできてるなぁ」と関心するのです。
質感や居住性はもちろん向上していますが、動力性能や操縦安定性もかなり良くなっています。小型車も軽も。

今回の記事はたまたまマツダを出しましたが、スズキもマツダも味付けこそ違うものの、最近のクルマは総じて良くなっている気がします。
10年くらい前から格段に良くなったような気がします。

で、何が良くなっているか?

感心しちゃうのは、何と言ってもハンドリングです。

まず直進時、中立付近の直進性が良い。
路面の荒れによってフラフラせず、しっかり落ち着いた感じ。
操舵時は、狙ったとおりに頭が入るので、分かりやすい。
旋回時の姿勢もしっかり感があって落ち着いています。

もちろん設計的に良くなっているのは想像が付くのですが、この分かりやすく信頼できる感じは一体どうやって得ているのか。

こういう設計って、むやみに反応を良くすればいいってもんじゃなくて、適度な遅れと反応の大きさがあるのです。
遅れが小さくて反応が良すぎると、ドライバーには過敏で乗りにくい印象を与えますし、もちろんその逆でも乗りにくさを感じます。

その辺の最適化は、設計である程度はやりますが、社内にいる操縦安定性評価のエキスパート(テストドライバーの親分みたいな人)が自ら試作車を運転して官能評価によって行います。

で、この時点でのチューニング(味付け)が最終的なフィーリングを決めるのです。
もちろん、設計的にダメなものはいくらいじってもダメなので、良い設計であることは前提ですが。

それらは正解とされる値があるわけでなく、数字に表しにくいことです。
なので、設計者が良い値がを出せば済むものではありません。

この最終的な評価を担当するテストドライバーは、操縦技術や車体に関する豊富な知識はもちろんですが、凄いセンシング能力も持ち合わせています。

どのくらい凄いかというと、テスト車両に装着したセンサーが読み取れないことも彼らはセンシングしたりします。

品質とか性能とか、目に見えるとことはもちろん重要なのですが、クルマは走るものなので、走ったときにどう感じるの?というのが最重要で価値の根源だったりするのですね。

本当に大事なものは目に見えないのですよ。

新しい技術 ギガキャスティング

ギガキャストとも呼びますが、これは自動車のアンダーボディ、言ってみれば床面を構成する下部ボディを、一体成形の鋳造で作っちゃうと言う技術です。
始めたのはテスラですが、今はそれを各社がやろうとしています。EV向けとしての採用が主流のようです。

これ、何が良いかというと、今まで数十点の大型のプレス部品をスポット溶接で一体化していた構成を、鋳物として一つの部品にしてしまおうということで、コスト削減には大きく効いてきます。
おまけに強度や剛性も確保しやすいのではないかな。

作り方としては、巨大な金型を用いて、溶融した材料を流し込んで冷やして型から抜くという工程です。
材料はアルミ合金ですね。

初めて耳にしたのはずいぶん前ですが、ここに来て各社が追従していく姿勢を見せていることに少々驚いています。
良いとか悪いではなく、この製造方法の変化はかなり大がかりなものなので、そのスケール感というか、チャレンジ精神に対してです。

この方法を採ると、現行の製法に対して、思いのほか色々変えることになります。

まず、材料はアルミ合金などの軽合金であること。
現行の多くの量産車は鉄系の合金でできています。
鉄だと融点が高い事に加え、比強度といって、重さと強さで考えるとアルミやマグネシウムに劣ることになります。
そう、同じ重さだと、鉄よりアルミの方が強いのです。
そういうわけで、電池が重いEVにはピッタリなのでしょうね。

で、フロア周りをアルミで作るとなれば、上のボディ、床周りのアッパーボディに対して、アッパーボディと呼びますが、そっちもアルミで作ることになります。これ、一般論ですが。
なぜかというと、鉄とアルミを接触させて使うと、「電食」といって、腐食しちゃうからです。
なので、大抵は車体全体をアルミで作ることになるのです。

これは日本にはキツいはず。
なぜって、アルミの精錬は電気を使うので、電気代の高い我が国には非常に不利だから。
国内で精錬すると高く付きます。
なので、海外産の精錬済みの材料を購入して製造することになるでしょう。
その点、テスラのあるアメリカとか、フランスなんかは原発があるので電気代が安くて有利です。
現に、夢工房の学生達も、最近では強度の高いアルミ合金は、国産材ではなくフランス製を入手して使っています。

あと、ちょっと気になるのは、この製法で作ったクルマがクラッシュした場合の補修です。
鋳物の部品は、一般的に脆性が高いです。柔軟性が低くて脆いってことです。
なので、変形した場合には従来のような鈑金修理が難しいのではないかな。
あと、鋳物の溶接はできないことはありませんが、やりにくいです。強度も出しにくいはず。

さらに言うなら「では変形した部品は交換してしまおう!」っていうわけにもいかないでしょう。やっちゃうのかな?
だって、床面一式ですよ。そりゃエライことだ。
なので、フロア周りの変形を伴う事故なら即廃車?

とまぁ、色々とあるわけです。
もちろん、良いとか悪いとか一概に言えるものじゃなくて、全てはトレードオフですけど。
それをメリットとして採用できるのは、財力がある、国力が高い国のメーカーでしょう。

そんなことを考えていると、クルマはまだまだアイデアでゲームチェンジできる余地はあるんだよなぁ、とか、今後はこの調子で作る方も買う方も二極化していくのか?とか思うのです。
うむ。興味深い。

ディーゼルの話

先日、車屋さんにオイル交換をお願いしました。

昔は自分で換えてたのですが
最近はすっかり車屋さんにお任せです。

ハイラックスのエンジンはディーゼルターボです。
調子良いので、あまり細かいことはあまり気にしていないのですが、興味本位で、どんなオイルを使ったのかなー?
と伝票を見ると…
「DL-1」
とだけあります。

どうもこれ、DPF(Diesel particulate filter:ディーゼル排気の黒煙粒子を捕まえるフィルター)を装備しているクルマ用のオイルの規格なんですね。

この規格のオイルを使わないと、DPFの目詰まりが早くなるとのこと。

DLは、ディーゼル・ライトで、小型のディーゼル車用ですね。
対して、DH(ディーゼル・ヘビー)ってものあって、これは大型用。

環境対策が施されたディーゼルって大変なんですねぇ。
オイルまで専用の規格になっちゃうのです。

ちなみに、煤(HC:ハイドロカーボンと言います)は、比較的燃焼温度が低いときに発生しやすいです。
DPFでキャッチしておいて、溜まったら燃焼させます。

ディーゼルの排気には、もう一つ問題があってNOxってヤツですね。窒素酸化物です。
こっちは燃焼温度が高いときに発生しやすい。
これに対しては、アドブルーと呼ばれる尿素水をマフラー内に噴射して、NOxを、無害な水と窒素に変えますす。

このアドブルーは、補充が必要ですが、満タンにすると1万キロくらい走れちゃうので、普段はあまり気にしません。
ただ、使い切っちゃった状態でエンジンを切ると、ある程度の量を補充しないとエンジン始動できなくなるので注意が必要です。

と、昔に比べて色々あって面倒なようですが、良くできていますよ。
パワーもあるし、車内にいれば静かだし、振動もあまりありません。