安全率のお話し

それほど専門的なお話しではありません。

今、調子よく動いている機械などを見て

「今まで壊れなかったのだから
今後も壊れないだろう」

と思うことがあったりします。

これ、ある意味当然で、ある意味危ない。

確かに、今までの使い方に対して、大きく余裕を持った設計になっているなら、今後も壊れないかもしれません。

でも、そうでもない場合。例えば…
一般的には、かかる力とかの負荷に対する余裕を持った設計をします。
この余裕の大きさを安全率と呼びますが、これを小さく設定した場合は、想定した力の大きさとか、使用期間とかに対して余裕が小さくなります。
なので、想定以上の使われ方をすると壊れやすくなります。

なので

「今まで壊れなかったけど(壊れなかったからこそ)
ボチボチ壊れるかもしれないね」

ということになります。

「なんだよ!そんな危なっかしいことしないで
ちゃんと大きく余裕を持った設計にしろよ!」

と思いますか?

でも、そうすると

性能が低下したり
コストが増大したり

といったことになります。

なので、高性能なレーシングマシンは安全率を小さく取ります。
想定された使われ方に対して余裕を小さく取って性能を向上させるわけです。

そういう設計をしてあるので、ちょっとイレギュラーなことがあると壊れちゃうのは当然のことです。

ちなみに、レーシングマシンにおいては、安全率をいくつに設定するかによって性能が大きく左右されるので、機密情報扱いです。

さて、我々の生活においても似たようなことがありませんか?
「一応」とか、「念のため」なんて考えることがあるでしょう?

それをやっておくにも労力や時間など、色々とリソースが必要になるわけで、そのために何かが犠牲になるのです。
「一応」とか、「念のため」をやり過ぎると、強みになる武器がなくなります。

自分にとって大事なものは何なのか

そこにフォーカスして強みを伸ばす
これも設計の安全率と似たような考え方ですよね。

ご参考:
零戦を設計した堀越次郎さんの本に書いてあった、主翼の外板の安全率の考え方が面白かったのを思い出しました。

軍部から出された零戦の要求性能を満たすためには、とにかく軽い機体にしなければならなくて、主翼の外板を薄く、低い安全率にしたかったのだけど、そうすると高負荷をかけた飛行の際に、引張り方向には耐えるけど、圧縮方向では表面にシワが寄ってしまう。
一般的に材料は圧縮に弱いですから。

でも、圧縮が収まれば、再度ピンと張るから良いじゃないか、と。
もちろんそこで喧々諤々の議論となるのだけど、結局はそのアイデアが実現して、零戦は当時としては驚異的な性能を手に入れたわけです。

鈴鹿8耐

鈴鹿サーキットで行われる日本最大のオートバイのレース
鈴鹿8時間耐久ロードレースのことです。

今日、8月6日が決勝でした。

夢工房からは5名の1年生が、元世界GPライダーの上田昇さんが監督を務めるTEAM FRONTIERのクルーとして参加させて頂きました。
プロのレーシングチームでのインターンシップ、つまりレースの修行ということです。

前列と左の方の5人が夢工房の学生達
一番右が上田昇さん

鈴鹿8耐は、コロナ禍によって2021年、2022年と2年連続で中止となり、昨年は開催されたものの、外国人ライダーの入国ができず、外国人ライダーを擁するTEAM FRONTIERは出場できませんでした。

夢工房からは、上田さんとのお付き合いが始まった当初から、学生達をチームクルーとして加えて頂いて、プロのレースの現場での経験を積ませて頂いています。

これによって学生達は、単に憧れているだけではどうにもならんという現実と、勝つためにはいかに考え、いかに動くべきかという基本を学んで、それらを夢工房で展開・共有するということになります。

鈴鹿8耐には、メーカー系のいわゆるワークスチームなども出場していますが、TEAM FRONTIERはプライベーターではトップクラスの実力を持ちます。

今年は満を持してニューマシンを投入しての参戦となりましたが、少々残念な結果となってしまったようです。
ただ、ラップチャートを見る限り、かなり高いポテンシャルを持っていることは明かなので、来年以降はマシンも熟成されて、かなり良い結果を期待できそうな気がします。

止まったら終わりだ

夢工房で学生達がどんなことをやっているか
というのは、あまり具体的に説明してきませんでした。

もちろん中には、口外できない機密度の高いことをやっていたりもしますし
なかなかうまく行かなくて形にならないというのもあります。

当然、学生の活動で、なおかつチャレンジなので
うまく行かないことなんて山ほどあって
むしろ、うまく行かない方が多かったりするのですけど
その中に成長のチャンスが山ほどあるわけです。

やったことが無いこと
答えが無いことに向き合えるのか?

そういう壁にぶつかって
超えることができるのか?

そこがまさに成長のチャンス
というか
人は、それでしか成長なんてできません。

もっとも、そういう経験をチャンスと捉えられるかどうか
そこがカギですが。

そんな経験を在学中にどれだけできるかが問題なのです。
「どれだけできるか」というのは
「何回できるか」
と言っても良いと思います。

よーく考えて
失敗しないように一発で決める

実はそれは最悪です。

そういうのが得意な人
というか、得意かどうか知りませんが
そうしたい人は山ほどいるでしょう。

その中で優位性を獲得できるのですか?
というのもあるし

そもそも、それでうまくやれるなら
何でキミは最優秀校にいないのさ?
ってな話です。

そのやり方は
戦略的に最悪なのです。

そのやり方では
数をこなせません。

経験の数の優位性というのは
絶対的なものがあります。

数を重ねて、ある一線を越えると
感覚というか嗅覚というか
直感で理解できる領域に突入します。

これは、生真面目に足を止めて
ずーっと考えることでは得られないことです。
理屈で説明できませんから
教えることもできません。

理屈で説明できたとしても
納得できなかったりします。

それは圧倒的な優位性です。

彼らは、たった4年しかチャレンジできません。
それは
人生のベクトルの根っこの角度を確定する
分かりやすく言えば
ロケットの発射台の角度を決める
重要な期間なのです。

低い確度で打ち上げても
後で急上昇すればいい?

できるもんならやってみろ。
そもそも、そういうのを先送りにした時点で
決して、やりはしない。
今やらないことは、大抵はできない。

日々チャレンジしていれば
どうしようもない失敗をすることもあります。

けど、その度に俯いて足を止めている場合ではないのです。

止まったら終わりなのです。
サメとかマグロみたいなもんです。