カントの哲学

こういうのを知っておく必要があるのだろうなぁ、とは思っていました。

先日のアメリカ遠征では、四六時中学生に付きっきりではないので、時間があるときに写真にあるような本を読んでいたわけです。
大変勉強になったのですが…

これは想像と違っていました。
ただし良い意味で。
でも、多くの人は価値観がひっくり返ります。

意外だったのは、「善」とか「徳」という話が展開されていることです。
人間社会は相互依存しているのだから、他者を大切にするのだ、という話です。

そして、正義のためとか自分の幸福のためといった動機を肯定しません。

極端に言ってしまうと
正義とか幸福のためとか言うが、それは自分のためだ。
もしそれを皆が継続的にやったらどうなるかを考えて
それで社会がうまく回らないようなら、それは悪だ
それでうまく回るなら善だ
というような考え方です。

まぁつまり「個人の損得とか、快楽の追求なんてのは道徳的では無い」ってことです。

さらに言うと「良い事すると気持ちいいよね」ってのも個人の快楽の追求なのだそうです。で、そんなのは道徳的では無いだろう、と。

だって、自分が気持ちよくなるために良いことをやっているだけであって、気持ちが良くなければやらなくていいということになるのだろう?それでは道徳的では無いぞ。ということです。

うーん、面白い。確かにそうだ。

「正義」については、なんでそれがダメなの?と、理解しにくいかもしれませんが、何が正義かは、自分の幸福を基準に考えるわけで、それは人それぞれであって、皆にとって絶対的で究極的な幸福なんて無いだろう、と。

とまぁ、こんな説明では良く分からないでしょうけど、この本を読んで分かったのは、個人の幸福や利益の追求みたいなことをやっていくと、うまくいかなくなるのは当然なのだな。ということです。

個人主義で、多くが利己的な考え方をするような社会は崩壊してしまうぞ
徳性を高め、善を行うべきである
と。

なるほど。確かにその通りだ。

研究室のアイテム紹介

小平研の卒研生には、卒業時に渡す記念品があります。
今回は、それらを紹介してみましょう。

まずは、東京の月島の鍛冶屋さん、左久作(ひだりひささく)さんにお願いして作ってもらっている小刀です。いわゆる火造りの打ち刃物ですね。大きさは四分。
鍛冶屋さんは、それぞれ得意分野があって、左久作さんは、ノミやカンナ、小刀などがお得意です。もちろん腕は超一流。

こういった和式の刃物は、柔らかい軟鉄の地鉄(じがね)に、切り刃となる硬い刃鉄(はがね)を日本刀のように鍛接して作られているのですが、地鉄は「お任せで面白い材料を」ということで、毎年異なる材料を使って作ってもらっています。
最初にお願いしてから、かれこれ10年以上お世話になっています。

「面白い材料」というのはどういうことかというと、一口に「鉄」とは言っても色々あるわけで、和式の刃物であれば日本刀同様に、砂鉄から作られた玉鋼(たまはがね)、いわゆる和鉄が代表的なところですが、そんな材料はそんじょそこらには無いわけです。

ところが左久作さんは、古いいわれのある材料を色々お持ちで、それこそ江戸時代以前の鉄材とか、そういったものを使って作ってもらっています。そのくらい古ければ、100%和鉄です。
他にも、黒船の鎖とか、エッフェル塔の鉄とか、なんでそんなの持ってるの?!と驚くような材料で作ってもらったこともあります。

左久作さんの小刀には特徴があって、刃金と地金の接合部の写真をよーく見れば分かるのですが、刃金と地金は単純に二層に接合されているわけではなく、刃金が地金をV字に巻き込んでいます。
こういう作りの小刀は、恐らく他にないでしょう。

そもそもプロ中のプロが使う刃物なので、もちろん切れ味は凄くて、実用性の面で優れているのは当然。
とはいえ、バリバリ使えば切れ味は落ちてくるわけで、そんな時は砥石で研ぐ必要が出てきます。
それがまた、精神修養に良いと思っています。
近年、そういうことをする機会は無いでしょう?刃先のミクロの世界を想像しながら、一心に集中して作業するとか。そういうの大事ですよ。

全体はこんな姿。
先端の方、刃鉄がV字に巻いています。
銘はタガネで切ってくれています。

今回は、新アイテムを追加してみました。
もちろん自分で作ったわけじゃなく、プロにお願いしたのですけどね。

ブツは、いわゆるピンズです。近年はエポキシ樹脂での着色が多いようですが、伝統工芸技法の七宝焼きで作ってもらいました。

実は、当研究室のロゴデザインは、レース仲間のプロのデザイナーさんによるものなのです。それを中心部にあしらってみました。直径は18mmです。仕様は二種類。
今日、手元に届いたのですが、想像以上にカッコ良くてビックリです。

こちらは純銀製で素地のまま。赤色は半透明色です。
こちらは丹銅製でロジウムメッキ。赤色は不透明色を選択。

一つは純銀の母材を素地のままでお願いしました。
純銀は硫化によって黒ずむので、通常はメッキをするそうですが、磨いて手入れをする楽しみってのもあると思うので、あえて素地のままにしてもらいました。

もう一つは、丹銅にロジウムメッキを施したもの。ロジウムは耐食性が高く、反射率が高く、硬いです。よって、かなりピカピカのツルツル。赤色は不透明を選んだこともあり、かなり鮮やかな発色です。

というわけで、当研究室の卒業記念アイテムの紹介をしてみました。
ウチの卒研生達、いくら好きなことをやってるったって、あんなことを継続するのって大変なのですよ。
これくらいのご褒美があっても良いと思うのです。

ARLISS 2024 帰国

帰国しました。
到着は往路同様に成田です。

その後、クルマをピックアップして大学へ。
これにて今回の遠征は終了です。

が、学生達は、夢工房で成果の報告と遠征の総括を行いました。

今回、成績は振るわなかった訳で、応援・ご協力頂いている皆様のご期待に添えず、大変申し訳ない限りです。

しかしながら一教員としては、実に多くのことが見えてきました。
ちろん学生達も、それぞれが多くの発見があったようです。
大事なのは「で、どうする?」です。
それらについては、追って記事にしていきます。