失敗は許されない…のか?

学生にはどんどんチャレンジして
どんどん成長して欲しいと思っています。


常に障害となるのは
彼らの心の中にある
「失敗したくない」
という壁です。

その壁が強固である限り
何が起きるかわからない未来へは
一歩も進めません。

ものを作るという環境で
「失敗したくない」
が発動すると
考えるばかりで前に進めなくなりますし

経験の数が少なくて
使いものにならなくなってしまいます。

なので夢工房では
失敗を許容する環境を
どのように構築するか
というところが重要だと思っています。

単に
「失敗してもいいんだよー」
なんて感じで
失敗を全く気にしないのは論外なのですが

大事なのは
成功したい
と強く思うことです。

まぁ思っているだけでは何も起きないのですが

何が何でも成功したい
と思ってチャレンジするなら
失敗しっぱなし
というわけにはいきませんから

経験の無いことにチャレンジして
その先に何が起きる可能性があるのか
失敗したときにはどうするか
を考えられるようになるでしょう。

むしろ価値があるのはその考え方です。

ずいぶん前に
とある自動車メーカーのエンジニアをされていた方が
夢工房に来てくれて
学生達に色々とお話をして下さったのですが
一つ引っかかっているセリフがありました。

「プロは失敗は許されないんだよ」

と言っていたことです。

まぁ確かにそういう意識は大事なのですが
ぶっちゃけ、どんな仕事だって失敗はします。
新しいことにチャレンジしていたら当然です。

恐らくご本人は
学生に刺激を与えるために
あえて強い表現を使ったのだとは思いますが。

大事なのは
「失敗は許されない
と受動的な思考を持つことではなく
「絶対うまくいかせたい
という主体的な意識だと思うのですよね。

許されない!
とかやっちゃうと
失敗しないで成功する方法は無いのか?
と、馬鹿げた方向に考えが向いて
行動せずに考えることばかりに時間を費やしたり
失敗したら思考停止しちゃったり
ちょっとクリティカルなことになっちゃいますから。

でも、たまには「許されない!」みたいな
刺激があってもいいのかもしれませんけどね。

それでも前に進もう

うまくいかないとき
そんなときにどうするか

これが成長の度合いに
大きな影響を与えているのだな
なんて思っていました。

それこそ
明暗を分ける
というくらいに。

うまくいかないときに
何を見ているか
何を選んでいるか
何をするか

たぶんそういうのは無意識です。

なので
うまくいかないときに
うまくいくようにする
というのは難しいのでしょうね。
自分でコントロールができないから。

夢工房の学生達は
ものを作っているので
うまくいかないときに
なぜうまくいかないかが
とても分かりやすいのです。

例えば
ある部品を設計している
といったシーンで

良いアイデアが出ない
なんて時はどうしているか?

大抵は、良いアイデアを求められている自分の設計領域を
その狭い領域を凄く集中して見ています。

で、悩んでいるのですが
悩めば悩むほど
その領域にフォーカスしていって
考える領域がどんどん狭まってきます。

これは危険。

なぜかというと
今考えている部品は
何かのため
です。

その部品単体では何の意味もありません。

その部品が構成するシステム
そのシステムが構成する全体のためにあるのです。

なので、行き詰まった時に見るべきものは
狭い領域ではなく
全体なのです。

開発しているマシンは
一体何を目指しているのか?

それを考えれば
そのために各部はどうあるべきか?
そんなことは簡単に分かるはずです。

と、説明すれば
大抵の学生は
「なるほど!」
となりますが…

まぁ、そう簡単にうまくいきませんよね。
けど、諦めずに続けないと。

なので、意識的に日々繰り返して
習慣を上書きする必要があるのです。

習慣は簡単には修正できませんが
今の自分に満足できないのなら
変化と努力を続けるしかありません。

狭いところを見ても答えは無くて
むしろ大きいところを見なきゃ
なんてのは組織も一緒で
だからこそ「社是」なんてのがあって
迷走したらそこを見れば良いわけです。

我が大学なら
「技術は人なり」
といったところです。

仕事も「心」なのでした

「できる」ようになるためには「やる」必要があるわけで
そのためには探究心とか好奇心は欠かせませんよね
なんて話を卒業生としていました。

例えば、プレス金型で製品を打つ(金属材料などをプレス機で成形することです)場合、一見やっていることは単純なようですが、実は細かなノウハウがあって、精度の高い製品を作ろうと思ったら、通り一遍の知識ではどうにもならないのです。

実に繊細な条件や調整の結果、設計通りの製品ができあがるわけで、これは単にAIにお任せで何とかなる世界ではないと思います。

「え?そんなところをいじると、そっちが変わっちゃうの?」
みたいなトリッキーな仕事なのです。

そういう繊細な仕事をキッチリ仕上げていくには、「なんでそうなるんだ?」という自発的なアプローチや、「なんで?なんで?…」と突き詰めていく姿勢が必要です。

これは単に勉強ができるとか何とか、そういうものではないのです。

というわけで
探究心とか好奇心とかを持って
やっぱりその仕事を好きにならないと無理だよね。
そういうのを楽しめないとね。
と、そんな話をしていたのです。

で、探究”心”とか好奇”心”とかなんだから
結局は「心」ですよね。
それが無いと仕事できるようになりませんもの。

うん、確かにそうですね。
本当に仕事ができる人を見ても
学生を見ていてもそう思います。

その「心」を土台として
技術やら何やらが乗っかってくるんだなぁ。

うん
技術は人なり
です。