仕事のビジョン

将来、どのように仕事をしている自分を想像しますか?

例えば、設計者だったらPCの前で一人でコツコツと?

うん、そんな想像をしても仕方ないとは思う。

でも、いろんな部品で構成される
大きな製品の開発をするのであれば
そんなふうにはなりませんよ。

例えば、自動車の開発だったら
車体を構成する各パートの設計者だけでも相当な数がいます。
そもそもパートそのものもいっぱいありますしね。

テスト部門や試作部門も
それぞれ相当な人数です。

で、設計者は
考えて図面を描いて
下流工程に流せばいいって思ってませんか?

甘い。

周辺のパートとの調整はもちろん
試作現場やテストのフィールドからの
フィードバックの反映なんかはあるし
事務系の人にもお世話になります。

今回は
車の設計に限らず
大抵の仕事は一人では成立しないんだよ
ってことが言いたいのです。

「自分のパートさえ良ければ」
「言われた通りに仕事を流せば」
なんて思いがちだったりしますが
そんな自己満足な仕事で
果たして良い製品が作れますかね。

最低限のものはできるかもしれませんが
最低限の成果では面白いことは起きません
面白くないのに良い仕事はできません

やり甲斐を持って楽しく良い仕事をするなら
関連部署と密に連携を取りながら
周囲の仕事の中身を見ながら
彼らのやりやすいように
自らの仕事を進める必要があります。
で、お客さんに喜んでもらうのがゴール。

どの部署に行っても、どの段階や工程でも
そこには人がいるわけですよ。
仕事を回しているのは人ですから。

仮に設計だからといっても
別に数字や形状と向き合ってれば良いというわけではなく
人対人が基本なんですよね。

なので
共通の目標を持ったチームの中で
自分がどんなふうに立ち回りたいのか
そんなのが将来の仕事のビジョンになると良いのではないかと思います。

とはいえ
学生って意外なほど仕事の中身を知る機会が無かったりするのですよね。

夢工房でやっているのは
開発現場の縮図なので
レベルや規模の違いこそあれ
かなりリアルな経験を得られるのではないか
と思っています。

というか
そうせねばならん
と思っています。

何をもって成功とするか

学生は何のために学校に行っているかというと
将来のためなわけで
そのためには何が得られればいいのでしょうね。

一般的には
学校には知識を得るために行っている
という認識でしょう。
もちろんそれは重要です。

言われたことを覚える
言われたことをやる
ということですね。

こと技術系の世界では
基本は重要だったりします。

じゃ、点数が、成績が重要?

確かにそれも大事かもしれませんが
それが学生の成果として全てではないでしょう。

点数や成績は
将来の成果や成功を保証するものではありません。

技術系だったら
将来、新しい技術と対峙しなければならないことは自明です。

その時にどうする?

自分で調べたり学んだりする必要がありますね。

で、新しいことをやるのだから
もちろん困難に遭遇しますね。

その時にどうする?

自分で乗り越える必要がありますね。

この「で、どうする?」という経験を
学生のうちにしておければ
社会に出てからかなり違います。

というか
学生のうちにこそ
そういう経験をすべきなのです。

一所懸命勉強して良い会社に入っても
業務上の困難に遭遇したり
失敗して怒られただけで折れてしまう
そんな例は多いでしょう。

むしろそういう思いをしたくないから
困難やリスクに対して距離を置く傾向でしょうか。

難しい仕事や面倒な仕事ほど
そこに潜む価値は大きくて面白いのに
なんてもったいない!

じゃぁ、何のために一所懸命勉強したんだい?
って思ってしまいますが。

乱暴な言い方をしてしまえば
学生のうちにやったことがことごとくうまくいく
なんてのはあまり良いことではなくて

むしろ失敗したときのリカバリーとか
困難に遭遇したときの対応を
身をもって経験しておくべきだと思います。

実践的な教育や経験というのは
実際に手を使ってものをつくる
という以外に
実践のフィールドで起こりえる事態に
いかに対処するか
という点を重視するべきかと思っています。
プロセス重視ってことですね。

皆と同じようなことをやって
皆と同じように良い点を取ろう!
それが学生としての成功だ!

のような感じに
他人と同じ成功が自分の成功だ
みたいなことをやるから
他と比べちゃって辛くなったりするんじゃないかな
なんて思ったりもするのですが
まぁ少なくとも、そんなのは面白くはないですね。

デッカく行こうぜ!…最初はね 最適化のしかた

レーシングマシンを使う際の大事な作業一つが
調整です。
セッティングなんて言ったりしてますが。

エンジンやらサスペンションやら
色んなところに調整が必要です。

一口にレーシングマシンとは言っても
色んな形態があります。

市販レーサーといって
レーシングマシンとしての形で売られているものは
「吊るし」の状態でもそこそこマトモに使えたりします。
それでも各部の調整は必須ですけどね。

でも、どこか大きな変更を加えたり
もしくは手作りのマシンだったりすると
そもそもの基準がなかったりするので
その場合の調整は厄介です。

そもそも組み上がったままの状態では
まともに動く保証すら無かったりします。

そんな状態から
性能を発揮できるようにするまでのプロセスが
レースに関係しない人にも参考になるかな
と思って今回の記事を書いています。

なので、対象はエンジンでもサスペンションでも何でも良いのです。
それこそ日頃の行いでも。

さてさて
まず、何かしら調整を要するシステムがあるとして

調整する要素が複数ある場合に気をつけるべき事は

一度に複数の設定を変更しない

ということです。

というのも、それをやっちゃうと
出た結果が、どの設定による影響を受けているのか分からなくなるからです。

なので基本は
一度に一つの要素しか変更しない
です。

もうこの時点で、今からやる仕事が面倒だということの予想がつきますね。

これが我慢できなくて
一度に色々いじっちゃったりする人は
ドツボに嵌まって出られなくなって
「振り出しに戻る」を繰り返す宿命にあります。

まぁこれは基本中の基本なので
言うまでもないことかもしれませんが、念のため。

では、実際に設定を変更するときにどうするかというお話しに入りましょう。

まず現在の設定が良いかどうか

これは設定を変更してみないと分かりません。
「良い」というのは相対的なお話しなので
比較対象がないと「良い」ということにはならないからです。

なので設定を変えます。

最適な設定値を探す作業のイメージはこんな感じです。

目盛りが切ってある定規があるとして
現状は、その目盛りのどこかにいるとしましょう。

で、最適値は、同一線上のどこかにある
でも、どこかは分からない。

そんなふうに想像するとイメージが掴みやすいと思います。

さて、変更する設定値を選んだら
最初は
今の位置に対して最適値があるのは
プラスの方向なのか
マイナスの方向なのか
を調べます。

この時気をつけることは
微調整ではなく大きく変える
ということです。

今知りたいことは「方向」です。
プラスとマイナスのどちらが良いのか
です。

微調整しちゃうと
当然小さな変化しか現れないので
分かりにくいのです。

なので、そこそこ大きく値を変えること。

これで今から進むべき方向性が見えます。

せっかく定規の例を出したので
それで例えましょうか。
30センチの定規でいきましょう。
あくまでもイメージですよ。

文章だけでは分かりにくいので
手元の紙に線を引いて目盛りを書きながら読み進めてください。

ここに図を載せれば良いのかもしれませんが
見るだけでなく
実際に「やる」ことによって頭に入るので
ぜひやってみましょう!
…と手抜きの言い訳をしました。

では行きますよ。

今の位置が「15センチ」の位置だったとします。
これが良いのか悪いのかが分からない。

で、最初に試すのは
「5センチ」と「25センチ」という感じです。
プラスマイナス10センチで大きく振ります

で、最初にいた基準位置に対して
どちらの方向が良い感じかをチェックします。

方向性が見えたら
次は「範囲」を加えて
徐々に絞り込んでいきます。

最初の基準位置から25センチの方向
つまりプラス方向が良いってことになったら

次に試すのは
「25センチ」の位置に対して
プラスマイナス5センチにしてみましょうか
「20センチ」と「30センチ」ですね。

それを試すと
「25センチ」の結果に対して
「20センチ」と「30センチ」の
どちらの方向が良いかが分かります。

もしここで「20センチ」が良いということになると
最適値は25センチ未満であることは確実です。

次は「20センチ」を挟むように
「22.5センチ」と
「17.5センチ」を設定してみたりすると
同じように比較して絞り込みができます。
ここまできて、やっと細かい数字が出てきましたね。

こんなふうに方向性と範囲を考えながら試していくと
最適値が見つかるという寸法です。

最初は荒っぽく大胆に
方向性を定めて範囲を絞っていって
最終的には微調整になっていく

これを最初から細かい数字で微調整なんかしていくと
誤った方向に進み続けたりするのはもちろん
とてつもなく時間が掛かったりして
何が何だか分からないうちに時間切れになります。

このやり方は、日頃の行動や考え方にも適用できると思います。

若い頃は暴れん坊のヤンキーだったけど
社会に出てみたら意外といい仕事する
みたいな感じですかね。

え?違うって?
いや、同じでしょう(笑)

ちなみに、センチ、センチ言ってきましたが
メカ屋は基本的にセンチなんて単位を使わないので
凄く違和感がありました。
我々の世界はミリメートルです。
それしか使わないと言っても良いくらいです。