チャレンジャーが必要だ

今、どんな若者が求められているのだろうか?と日々考えています。
求められているものは色々あるだろうけど、自分がいる環境をうまく使う前提であれば、やはりチャレンジャーを育てることだろうと思っています。

自分のやりたいことを、「やりたい!」と言って、どうすべきか考えて、試行錯誤する。
転んでも壁にぶつかっても進み続けるためには、やはりお仕着せではなく、自分がやりたいことをやるべきでしょう。

一般的な学校のやり方だと、モチベーションが十分でない学生にも対応するために、やるべきテーマを用意して与えるわけですが、それは捉え方によっては「やらされる」ということになりかねません。
というか、やらせてるんですけどね。
理想的なのはモチベーションの高い学生達に、自身がやりたいことを考えさせることだと思います。

恐らく今超えるべきハードルは、教育は「やらせるものだ」というところから脱却するということではないでしょうか。

小学生に英語やらせるとかプログラムやらせるとか、やらせている限りはたかがしれていると言ったら言い過ぎでしょうか。
高いスキルを身に付けていても、それを使うのは人の心なのですから、そこを伸ばしてあげないとせっかくのスキルは役に立たないのではないかな。

皆にある一定レベルのことをやらせて、それをできるようにするというのは、やはり高度経済成長とか、大量消費に合わせた、低コスト大量生産のための均質なエンジニアを大量に育成する方法だと思うのです。

それに、「やらせる」方法だと、結局は「やりたくない」という気持ちが生まれてしまうのは仕方ない。
なので、多くの学生のゴールが、「短期的に楽に」という方向に向かうのは仕方ないことだと思います。

「やりたくない」ものを「やらされて」、それをできるようにするだけでも大変なのに、さらにイノベーティブにとかクリエイティブにとか、無理言いなさんなという感じでしょう。

大学で好きなものにチャレンジしているはずなのに、いつの間にか「やらされる」やり方をしてしまう学生を見ていると切なくなりますよ。
今までの訓練の成果なのでしょう。10年以上「やらされて」きたのですから、そう簡単には抜けません。

なので、根源の部分を入れ替えてしまう外ないのではないでしょうか。

とはいえ、既存の教育システムを急激に総入れ替えするのは、あまりにリスキーで無理があります。

というわけで、色々なものづくりチャレンジを自発的にやっている学生の成長こそが未来への試金石となるのではないかな、と思っているのです。

今のところ夢工房は、ほぼ順調と言って良いと思います。

初めてA0版のレイアウト図にご対面の2年生
実寸の迫力に驚いてます。

学校の成果

夢工房には卒業生がしょっちゅう来てくれます。
大変有り難いことです。

彼らと話をしてると
学校での成果って何なのだろう?
と思います。

就職先?
いわゆる一流企業に入れれば良いのか?と言われれば、決してそんなことはないでしょう。

所得?
もちろんそんなの論外でしょう。
お金があればそれだけでハッピーかというと、決してそんなことはない。

一教員としては、社会に出て皆の役に立つ良い仕事をしてくれるといいな
というところかなと思ってます。
「こいつを採用して良かった」
「こいつと仕事ができて良かった」
「こいつがいてくれて良かった」
と周囲が思ってくれたら成功かな。

でも、社会に出てすぐに成果は見えないし
色々と内外の変化もあるでしょう。

なので、教育の成果なんていつ出るか分からないんですよね。

ということは、何が正解なんていつになっても分からないということなんですね。
いやー、まいっちゃうな。
本当はあまりまいっちゃってないけど。

正解は見えないとはいえ、方向を定めずに通り一辺倒のことをやるわけにもいかないので、つたないながらもこれまでの経験を元に、自分が信じていることを伝え続けるしかないのですね。
でもまぁ、仕事をする上で普遍的なことってあるわけなので、あまり迷いはありませんが。

そんな時に卒業生がいると、いろいろとフィードバックが掛けられてとても良いですね。
最近の情勢も知ることができるし。
在学中にどういうことをやると、社会に出てどういう成長をするかという推測が付けやすくなりますから。

今日はたまたま大手機器メーカーから自動車メーカーに転職が決まったという卒業生が来てくれました。
結構長いこと努めて肩書きもあった彼が、上司に転職することを伝えた際には、昇進とか大幅昇級とかを持ちかけられたそうですが
彼曰く「金の問題じゃないんだよな~」

そうだよね。
お金の問題じゃないんだよ。
心が動き続けられる環境が無いとダメなんだよな。

自力でそういう環境を作れれば良いけど
会社が大きかったりすると、それにも限界があることがありますね。
そういうときは、新しいフィールドで勝負を賭けるのも良いでしょう。

この彼は、学生の時から海外の大会に出てバリバリやってたので
本来は自動車メーカーなどで世界中を飛び回って頑張る方が合っている気がします。
なので、やっと収まるべきところに収まったという感じかな。
これからどうなるかお楽しみ。

という感じで、卒業してすぐになんて
どうなるか分からんのですよね。

そうそう
今日はもう一人卒業生が来たのです。

彼は希望していた航空機メーカーに就職したのですが…
あまりにモチベーションが高いので、希望していた航空機の部門ではなく
製造機械の部門に配属されてしまいました。

どういうことかというと
その部門の製品はシェア日本一なのですが、世界一を狙うと。
そこに必要とされたようなのです。

でも、本人は腐ることなく高いモチベーションを維持して嬉々として仕事をしてます。
これからも、ぶつかったり転んだりしながら成長し続けていくでしょう。
これまた楽しみです。

我が夢工房
在学中にずっと在籍して頑張り続ける者がいれば
もちろん、ここから離れていく者もいます。
いずれにせよ社会に出て
この部屋での経験を少しでも活かして良い仕事をしてくれれば
それは成功なのだろうな
と思っています。

トレードオフ

何かを得て引き換えに何かを失う
そういう考え方をトレードオフと言いますね。

これ、あらゆるものについて言えることだと思ってます。

レーシングカーの設計なんかだと分かりやすいかな。

丈夫で耐久性が高いものにすると重くなりやすいので、運動性能が低下するとか。
なのでもちろん、運動性能を向上させるためには軽くする必要があって、そのためにいわゆる安全率を削っていくと強度とか耐久性が犠牲になる。
F1マシンなんかは、驚くほど安全率が低いです。
具体的にどの程度の安全率を持たせるかというのは、各チームの機密情報なので、一般的にはオープンにされません。
それが分かっちゃうと、チームの戦略とかも明らかになっちゃいますからね。

「速い車を作ろう!」
とか言うと、アレ付けてコレ付けて…と足し算で考えていく人がいるけど、色々足されていくと重くなるし、それだけ信頼性が低下するとか、弊害があるわけで、良いことばかりが足し算されるわけではありません。
何よりそういうものって美しくないですよね。

自動車で言えば、もちろん量産車も色々なトレードオフがなされています。
誰でも乗れる、安全性や快適性も求められるなど、色々と複雑な要求がある量産車は、様々なものがトレードオフされて、商品としてのバランスを取ります。
トレードされちゃうのは、性能だったり、重量だったり、価格だったり、外観や品質だったり…。

これ、人の生き方も同様だと思います。
何かを得て何かを失う。
一見失ってばかりの人生でも、意外と見えないところで何かを得ていたりするものです。
失う瞬間は、得られるものが見えなかったりすることが多いですが。

そんなことを考えていくと、何か集中すべきものを見付けて、ストイックに注力していくと、そのために色々失うこともあるでしょうけど、何かを得られるのは必然なんですよね。

やっぱり勇気ある決断とか行動とかが大事なんだよなぁ、と思う今日この頃。
初動の時点で迷うとロクな結果が得られないもの。
これ、最初のトレードオフで何かを失うことに躊躇しちゃって、その時点でトレードオフが効いちゃってるんですよね。
まぁ、ややこしい。