修行僧の帰還

先週末、オートポリスで行われたスーパー耐久(通称S耐)に
当チームのメンバーが見習いレースエンジニアとして
参加させて頂きました。

プロのレースエンジニアをやってる卒業生がいるので
その彼の指導のもとでお手伝いというか
修行させて頂いたのです。
役得!

お世話になったチームはクラス優勝したようで
良かった良かった!

なのですが
一番良かったのは
行った学生が
勝つチームの空気感を掴んでくれたことです。

学生達は
日頃勝ちたいと思って頑張ってますが
何せ初めてやることだし
どこまでやれば
どんな風にやれば勝てるのかは分かりません。

で、どうなるかというと
「これなら勝てるだろ」
という予測をしてやるべき事を決定します。

が!
これが大抵甘いのですよ。

しょうがないです。
経験が無いのだから。

で、私の仕事はその辺を評価して
アドバイスをすることなんですが…
問題は
先生の言うことを聞いてくれない
ってことです。

いや、別に反抗的なのではないんです。
むしろウチのメンバーは凄く素直な連中です。

でも、学生ってね
基本的に先生からのダメ出しに慣れてるんですよ。
でしょ?

なもんで
「それじゃ勝てないぞ」
と言っても、あまり効かないんですよね。

もちろんこれは
私の実力不足ってのはあります。

でも、何というか
「先生が言ってるレベルが理想なので
最大限でそのレベルに行けば良いんじゃね?」
みたいなところがあるんだと思います。
「先生がOK出せば良いんじゃね?」
みたいな。

「それじゃ勝てないぞ」
ってのは
本当は最低限のレベルの話をしてるので
そのダメ出しレベルを満たしても
最低限なんですよね。

「先生がOK出せば良いんじゃね?」
じゃないんです。
勝てないとOKじゃない。

じゃぁ、最大限のアドバイスをしたら良いだろう
と?
「こうしたら勝てるぞ」
と。

そりゃ私は実務経験があるんだから
ビギナーの学生よりも色々知ってたりはしますよ。

でも、それじゃ意味が無い。
先生の言ったことをやるだけになっちゃうから。

別に言われたことができる人間を育てているわけではないのです。
言われてもいないことができるようにならないと意味が無いのです。

それにね
言われたことをやる人間は
言われたことを満たせません。
分かります?

狙ったとことまでなんて
大抵到達できないんですよ。
「~で良いんじゃね?」
なんて考えているレベルならなおさらです。

なので
自分達で、どうしたら勝てるんだろう?
って、真剣に考えて努力するようになって欲しいのです。

これは決して無理な話ではありません。
学生の力を見くびってはいけない。
20歳そこそこの人間だって
本気になれば凄いことができるんです。

それにリミッターを掛けてるのが
「アレやれ!コレやれ!」
ですよ。

それやっちゃうと考えなくなりますから。
何とかその状態から逃げたいって思いはじめます。
できればやりたくないって。
しかも無意識で自動的に。
そうなったら何やっても無駄です。
外部から何かやればやるほど無駄になります。

もう一つ大事なことは
勝つための空気感です。

これ、チーム内で独自に作れれば思想的なのですが
何せ基準が見えないので
何をどれくらいやったら良いか分からない。

なので、今回のように
勝つプロのチームで
その空気感を掴むことは非常に大事なのですね。

先生に
「それじゃ勝てないぞ」
なんて突っ込まれているうちはダメで
本人達が
「こんなんじゃ勝てねぇ!」
って思うようになれば
やっとスタートってとこです。

今回は大変良い経験をさせてもらいました。
卒業生の存在はありがたいです。
彼らは私の宝物です。
在学中は大変だったと思うけど。

再度試練きたる

国内のコロナ感染者が爆発的に増えてきました。
これに伴い、夢工房で活動する学生にも
大幅な制限を掛けることにしました。

大会に向けての準備が大詰めとなっているし
「作ってなんぼ」の我々としては
残念ですが仕方ありません。
まずは学生達を守らねば。
もちろん学生が感染源になるようなことも無いように。

またまたオンライン環境での開発に逆戻りです。

昨年度までオンライン環境で頑張ってきたので
そのノウハウが再度活きることになります。

こんな状況になって思うのは
2年間やりたいこともできないような日々が続くとして
私などは、たかだか人生の4%くらいの期間なのでですが
20歳の人にとっては
人生の10%に相当するんですよね。

これ、今後にどのような影響を及ぼすのでしょうね。
もちろん、この時期の過ごし方の影響は大きいと思います。

どうなるかは時間が経ってみないと分からないでしょうが
とはいえ、この時期を何かしら頑張って過ごすのと
単に恐れて我慢ばかりして
気持ちが小さく縮んだ状態で過ごすのでは
大きく変わってくるはずです。

冷静に考えてみれば
こういう危機的状況(と思っていない人もいるかもしれませんが
死者数を見れば間違いなく人類規模の危機です)の中で
冷静にリスクのコントロールをしながら
自分のなすべきことを定めて
知恵を絞って努力する経験ができるというのは
貴重な時期を過ごしていると言えなくもありません。

試されてますね。

実戦 or 実践だ!

レースで良い成績を得たいと思ったら
頑張って練習するのはもちろんですが
沢山レースに出る必要があります。
実戦に勝る経験はありませんから。

どんなに練習しても
何が重要なのか?
なぜそれが重要なのか?
何のために必要なのか?
そのへんを本当に理解するのは難しい。
というか、無理です。

学校の授業は
社会に出る前の練習のようなものです。

「なんでそんなことやるの?」

それは理屈の上では伝えられますが
本当に理解できるかというと難しいでしょうね。
というか、無理です。

在学中に、試しに仕事をできれば良いのですが
なかなかそうもいかないので
インターンシップがありますね。
でも、これも本当の仕事ではありません。
お試しというか、疑似体験のようなものです。

インターンシップで設計のまねごとを短期間やったとしても
別にお客さんや会社の仲間のために頑張る必要はありませんし。
でも、やらないよりは良いかもしれません。

というわけで
学生のうちに実戦を経験するのは大変難しい。

さてさて

学生の
コミュニケーション能力不足などに対して
大学だって危機感を持っているわけで
授業で色々とやっているのです。
恐らく今や相当多くの大学で
色々やっていることと思います。

もちろんその辺は学生だって危機感を持っているわけで
それなりに努力をしてなんとかしようとしています。
何とか就職したいですもの。

そんな授業でも取り組み
当然、やらないよりは遙かにマシなわけですが…

何か気付きました?

授業でやらせている
学生が危機感を感じている

これ、あまり良い結果になるとは思えません。

外発的動機で危機感を伴っているのですから。

でも、学校で取り組むとしたら
授業としてやるとしたら
そうならざるを得ません。

学生は
点数を取るために
危機感を埋めるために
やるでしょう。

知識は身に付くでしょう。
でも、その知識を有効に使えるかは全く別の問題です。

どうせやるなら
学生が本当にやりたいことで
ワクワクする
ポジティブな気持ちを持てる
本格的な何かが良いですね。

それを達成するために
コミュニケーションやチャレンジが
どうしても必要になるもの。

そうしたら
何でコミュニケーションが必要か
何でチャレンジが重要なのか
一発で分かりますよ。
しかも理屈でなく。

そういうのは一度身に付けたら忘れません。

というわけで夢工房では
学生が自発的に
レーシングカーや惑星探査機を作ったりしてるわけです。
実戦に限りなく近い実践ですよ!

夢工房の学生達は
緊急事態宣言下でも、感染対策をしながら
過密にならないようにローテーションを組んで
色々工夫しながら日々頑張ってます。

本人達は思い通りにならなくて
ムラムラ
じゃなくて
イライラすることもあるでしょうね。
「これじゃ勝てねぇ!」
とか。

その度に考えて対策を打って
成果を確認して…
良くやってますよ。

ショボショボになってる者は
意外なほどいません。

彼らを見ていると
あぁ、日々成長しているなぁ
と思うのです。

この状況下での経験も
きっと将来役に立つのでしょうね。