成長の本質

本学の授業では「将来どうしたい?」
というのをレポートにする機会があります。
主に1年生の授業ですけどね。

提出されたレポートは、全て隅々まで読みます。
だって、凄く興味深い内容ですから。

「将来は、~な~になりたい
そのために~などの経験を積んで…」

みたいな内容なんですけど
読んでいて思ったのは

多くは
自分のことしか考えていない!
ってことです。
まるで昔の自分を見ているようです(笑)

若いって、そういうことですよね。
自分が得することしか考えてない!
そんなもんです。

で、経験を積むに従って
自分の欲だけ満たそうとしても
なかなかうまくいかなかったり
満たされなかったり
そんなことに気付き始めれば
徐々に視野が広がってくる。

「情けは人のためならず」
とか、そのへんの本当の意味を分かってくる
って感じでしょうか。

なので
自分のことしか考えていない段階の学生に説教したところで
何言ってるのか分からないでしょうね。

普通に学生生活を送っていくなら
就活とか
もしくは卒業して働き出せば
相手のこととか組織のこととか
周りのことを考えないと
自分のやりたいこともできないんだな~
なんてことが分かってきたりしますよね。
その辺が「大人になる」ってことなんですね。
成長の本質的な部分は、ここなんだと思います。

色々もの知ってるとか、そんなことだけじゃないんだよ~。

何か機会があって、道徳心を育むチャンスを掴めば
成長は、より早くなるかもしれませんね。

と、ここまで書いて思いましたが
「人間学」を学んで成長するって
そういうことか。

組織とか環境とか
利他心を身に付けて行動できるようになれば
自ずと成長して仕事ができるようになって
他から必要とされる(=価値が高まる)
そういうことですね。

多くの人のサポートを得て
やりたいことができている
そんな活動をしている学生達は
周囲のことを考えずして活動の継続は不可能です。
なので、マインド面での成長は早いのですね。
彼らは日々確実に成長していますよ。

技術は人なり

止まったら負けだ

キャリアデザインって聞きますよね。
私、そういうの考えたことないんですよ。

仕事していて、たまに
「この仕事していると偉くなれんのかなー?」
なんて思うことも以前はありましたが
それはいわゆる「偉い人」になりたかったわけではなく
ふと思っただけです。

今さらながら考えてみれば
今に至るまで
やりたい事や、やるべき事を
好きなようにやってきたらこうなった
みたいな感じですからね。
無計画な人生と言う人もいるかもしれませんが
それなりに意味は感じてるので
結構、満足感はあるんですよ。

今まで色んな事をやってこられたのも
色んな人のお導きのおかげですから
そうれはもう、沢山の人に感謝しています。

いわゆる「偉い人」に自分は向いてないんじゃないかな
と思ったのは
前職で、ある日ボスに呼び出されて
「小平、おまえ係長な」
と言われたときに
うれしさよりも寂しさを感じてしまったときでしょうか。

それまでは、班長とかグループリーダーとか
やらせてもらっていましたが
それは現場へばりつきのエンジニアだったわけですよ。
でも、係長となると、ちょっぴり管理側で
ちょっぴり現場の実務から離れるわけですね。
図面描くより見る側で
マネージメント側の立ち位置に変わってくる。
この辺は会社によっても違うでしょうけど。
それがとてつもなく寂しく感じたんですね。
だって現場大好きだったから。

まぁ、結果としては
ボスが新しい部署を作ってくれてハッピーな日々が始まりました。

その部署は
自分で図面描いて
自分で部品作って
自分で組んで
車を走らせることができるという
まるで今の夢工房のような組織でした。
少人数で構成した、その「特殊部隊」を回せ
それが私にアサインされた仕事です。

「特殊部隊」では、入社間もない新人設計者数名と
ベテランの試作のエキスパートが
私の部下に付きました。
変態野郎ばかりで最高でした。

こういう部署があると
超短納期かつ低コストで試作車を作れるので都合が良いんですよね。
でも、普通の人にはかなりキツイんじゃないかな。
そう簡単に「できない」とか言えないし。
変な仕事ばかりだし。
でも、変態野郎達のチームは、毎日がお祭りでした。

あるとき、試作車の改修作業をやっていて
「こりゃ、締切までに終わらんわ」
ということになって、ボスに
「絶対終わらせたいから徹夜させて欲しい」
って頼んだら、労働組合と交渉しなきゃいけないし
徹夜なんて認められるわけないって言うので
「じゃ、組合辞めます」
って啖呵切ったら何とかしてくれたりしたのは良い思い出だなぁ。
今、そこそこ色んな事ができるようになっているのは
無茶言って無茶やっても
フォローしてくれた周囲の人達のおかげです。

ちなみに
当時、労働組合には専従(組合の仕事だけしてる人)に
幼稚園~高校まで一緒だった友達がいたんですね。
で、組合事務所に乗り込んで行って
「組合費を巻き上げておいて、やりたいことをやらせないのか?オレは組合辞めるぞ!」
なんて言いに行って喧嘩したのも良い思い出。
その後、なぜか社則が変更になって
「従業員は労働組合に所属していること」
という一文が追加されましたとさ。
「オレのための社則だ!」
と喜んでいた私は、やはり馬鹿野郎です。
やっぱり、キャリアデザインなんてどうでも良かったんです。

そういうの、考えたい人は考えれば良いけど
考えてる暇があったら進んじゃうのも手ですよ。

最近の会社では、とてもこういうことはできないでしょうけど
夢工房の学生達には
ムチャクチャでドタバタでヒーヒー言いながらも
凄い流れに乗っているような感覚で突き進む
そんな経験をさせてあげたいのです。

あの歳でそんなことやってたら凄いヤツになれるはず。
普通の物差しでは測れないから
いわゆる「優秀」ってことにはならないかもしれないけど
希少価値はありますよね(笑)

技術は人なり

…でいいのかな。

良い仕事してください

よく勉強ができるコを
「頭が良い」
って言うじゃないですか。

本当ですか?それ。

学生達が、勉強ができる友人を指して
「あいつ、頭良いから」
とか言うし
「俺、頭良くないっすから」
とか言います。

まぁ、こういう場合は
できない
やらない
言い訳のことが多いですよね(笑)

本当に頭が良いというのは
果たして知能指数が高いことを言うのか
要領が良いことを言うのか
定義ははっきりしていませんが
きっと何かしらの能力が高いことなんでしょうね。

勉強ができて
良い大学に入って
有名企業に就職
というのが、果たして幸せになる王道
…ってことはないのは誰しも知っているところ。
とはいえ、ついつい多くが
それこそが成功であるような錯覚をしているのも事実。

そんなねー、学業の成績だけでハッピーになれるほど
世の中単純じゃこざいませんよ。

世の中には色んな仕事がありますね。
みなそれぞれ、色々な役割を担っています。

「職に貴賤なし」
とはよく言いますが
まさにその通りで
何も一流会社のサラリーマンだけが
価値ある仕事をしているわけではないし
いっぱい稼いでいる人が必ずしも
ハッピーというわけではありません。

皆さん知っての通り
店員さんだって
コックさんだって
大工さんだって
尊敬すべき素晴らしい人は沢山います。

いわゆる一流企業に勤めている人だって
しょうもない人は沢山います。

もしそれが分かっていないようだったら
そりゃ不幸ですわ。

私は子どもと話をする機会があると
「将来何になりたい?」
なんてことを良く聞きます。

「お花屋さん!」
とか
「電車の運転手!」
とか聞くと
「あー!それはいいねー!!」
なんて返事をしますけど
それ、本気でそう思ってますから。
「このガキ、どうせそのうち一流大学行って
一部上場の会社に…とか言い出すに決まってるぞ」
なんてことは思いません。

私は大学の教員としては
色々な仕事を経験している方だと思います。
その中でも、職人さんと付き合う機会が多かったと思います。

それはもう色々な職人さんがいました。
鈑金職人とか
とび職とか
看板職人とか
最終的には自動車の試作の職人さん。
大学にも技術職員の先生がいますね。
ああいう方も職人さんに近い存在でしょうか。

振り返ってみると
凄い人達とお付き合いさせてもらったなぁ
と思います。

だってね、ミラクルですよ。
ゴッドハンドです。
彼らの手から、素晴らしい物が次々に生み出されてくる。
そういうのを目にしていた時の私の立場は
経験の浅い職人だったり
営業職だったり
設計者だったりしたんですが
いつも
「すっげぇなぁ」
と驚いていましたよ。
色々学ばせてもらいました。

自動車好きなもんで
やはり自動車の試作の現場は最高でしたね。
だって、車作っちゃうんですよ!
量産工場とは訳が違います。
定盤と呼ばれるでっかい鉄の塊の土台の上で
どんどん車が形づくられていきます。
「おぉー、できてきてるぞー!」
という感じです。
良く分からないでしょう(笑)

そうそう
今はもう、そういう人はいないでしょうけど
以前、一枚の鉄板からボディの形を作る
昔ながらの技術のトレーニングをしている人を見たことがあります。
そりゃぁもう、何というか
神ですわ。
ハンマーでボディの形を叩き出しちゃうんです。
一日中でも見てられます。
仕事さぼって見てたら怒られるから無理ですが。

試作車の最終的な仕様を決めるテストドライバーも凄いですよ。
彼らもある意味職人です。
テストコースをガー!っと回ってきて
足回りの細かい仕様を具体的に指摘してきます。
普通じゃ感じられない振動とかノイズとか
バシバシ指示してきますしね。
「え~、そんなの分かるの!?すっげー!」
って思っちゃいますよ。

そういう人たちと付き合ってると
単に勉強できることが頭良いなんて
笑わせるんじゃないよ
と思っちゃうのですよ。

大学出てエンジニアになるのは結構なことです。
でも、お客さんを喜ばせるのは当然として
自分達が考えた物を形にしてくれる人たちを
それを売ってくれる人たちを
喜ばせるような仕事をしてください。
そういう人たちのチームの一員であることを
誇りに思えるような仕事をしましょう。
そうすれば、きっと自分もハッピーになれるはずです。

その辺の基本的なマインドを大学で…
ってのは難しいかな。
やっぱり自ら手を動かしてやってみないと
分からないでしょうね。

夢工房では
その辺をできるだけ分かってもらえるようにしているつもりです。
やるからには単なる工作の次元を超えないとね。
知識の量とかスキルだけじゃ良い仕事はできませんから。

技術は人なり