Formula SAEに見る日本人の特徴

国際的な、しかも学生が関わるレースとなると色々と興味深いものが見えてきます。
一番分かりやすいのがマシンの作り方でしょうか。

レーシングカーは、レギュレーション(車両規則)に沿ってマシンを作らなければなりません。

で、この解釈に違いが出ます。

日本人の多くはポジティブリストによる行動を基本としています。
つまり、明示されたやるべきことに従って行動する傾向があります。

対して、ライバルとなる国々の多くはネガティブリストによる行動を基本としています。
つまり、明示されたやってはいけないこと以外は自由に判断して行動する傾向があります。

その結果

ポジティブリストに沿って行動する場合
レギュレーションをあたかも取説や教科書のようにとらえてマシンを企画・設計する傾向があります。
ライバル達も自分達と似たような戦略をとっているということを前提にしていることが多く、本質的な部分にはあまり手を入れない。
なので、あまり斬新なアイデアは盛り込まれず堅実な構造となり、実走による最適化(いわゆるセッティング)に重きを置く傾向になります。
マシンの熟成度が高く、信頼性は高めやすい。
ブレークスルー、ゲームチェンジはし難く、既存のトレンドに従う傾向があります。

ネガティブリストに沿って行動する場合
レギュレーションで禁止されていなければ何をやってもいいという考え方でマシンを企画する傾向があります。
他人の土俵で相撲を取りたがらない。
なので、アイデアを具現化するために奇抜なマシンとなりやすく、設計から製作段階で多くの時間を必要として、実走による最適化が不十分になる傾向があります。
熟成度、信頼性は低いが斬新でゲームチェンジャーが生まれやすく、トレンドを生み出す傾向がある。
ただし、マネージメントが優れている場合は、熟成度、信頼性を高められるので、強力なマシンを仕立ててくる場合があります。

とはいえ、国を問わず共通の特徴はありますね。
例えばこんな感じ
フォーミュラで一番速いのはF1でしょ?
じゃ、F1マシンみたいにしよう!
とかね。

あとは足し算の設計になることが多い。
ターボだ何だと。
速くなりそうな付けられるものどんどん付けようぜ!
みたいな。

本学チームはオリジナリティ命です

最近のバイク CRF450Rその6

その1その2その3その4その5に続き、今回は外装部品です。

ラジエータの横に付いているカバー、ラジエータシュラウドです。
材質はポリプロピレン。

表面のグラフィック、昔はデカールでしたが、今は違います。
シールを貼ったものではなく、部品の表面と一体化しています。
一体どうやっているんだろう。
型に樹脂を注型する時点でグラフィックのシートを仕込んでるのかな。
※2020年12月8日追記:やはりシートを仕込んだうえでの注型のようです。フィルムインサート成形というそうです。

これならペロッと剥がれることは無さそうですね。
しかも美しい。

裏側はこうなってます。

大きく赤い部分と黒い部分から構成されているのが分かりますね。

接合部分のアップはこうなってます。

2色の樹脂部品がはめ込まれているわけではなく一体化してます。多色成形ですね。
これなら激しい使い方をしても分離してしまうことはないでしょう。

技術の進歩は凄いなぁ。

最近のバイク CRF450Rその5

その1その2その3その4に続き、またまたまたまたCRFです。

今回はブレーキローターです。

いわゆるウェーブディスクですね。
フロントも同様の形状です。

外径が旧来の円形状ではなくギザギザしてます。
見るからに軽そうですね。
最近のスポーツバイクでは良く見るようになってきました。
最初にやったのは、アフターマーケットパーツメーカーのBRAKING社だったかな?
違ってたらすみません。

メリットは何といっても軽量で放熱性が高いという点でしょう。

ブレーキは、マシンの運動エネルギーを熱エネルギーに変換して大気中に捨てる装置ですから、放熱性は設計のキモです。

あと、回転する部品の軽量化はジャイロ効果を低下させるので、運動性能向上に効きますし、ブレーキローターはバネ下部品なので路面追従性も向上させます。

こんな特性を持っているのでレーサーやスポーツバイクには最適でしょうね。
デメリットとしては、生産コストと寿命ってとこでしょうか。

ブレーキローターを設計するときに、よく冷却やパッド表面のクリーニング効果を狙って穴を設定しますが、この位置には注意が必要です。
写真のローターにもいっぱい開いてますね。

穴位置を均等ピッチに配置すると、ブレーキをかけたときに「ピュー」って音が出ちゃうんですよ。
なので、わざと均等ではない位置に穴を設定します。

なんでそんなこと知ってるのかって、そりゃそういう設定のヤツに乗ったことがあるからです(笑)
一般的に市販されてる乗り物で、そういう設定になってるのはまずあり得ないでしょうね。

あ!でも、昔のロードレーサーは均等ピッチの穴開きローターがあったはずです。
今、これを書いていて思い出しました。
サーキットのストレートエンドで、「ピュー!」「ピュー!!」って鳴ってました。
あれはあれで格好良かったなぁ。

本学チームの学生が設計したマシンも不等ピッチで穴位置を設定してあります。

同じ理由で、タイヤのパターンも設計されてるんですよ。
回転方向に対してブロックの長さは微妙に不均等になってます。
そうしないと「ウィーン!」ってロードノイズが出ちゃうから。