乗り物の進歩

以前、最近の乗り物はユーザーが手を入れにくいといったような話をしましたが
ユーザーどころかお店でも手に負えない状態になっていくような気もします。

分かりやすいところで言うと
最近、ワイヤースポークのホイールを組めないバイク屋さんが増えてきた気がするのです。
さすがにモトクロスをやってるような店ならいけるでしょうけど
町の小さなバイク屋さんは、できないところが多いのではないかな。
だって、スポークホイールのバイク、最近激減してますものね。

もう亡くなってしまった叔父は
先の大戦時に陸軍航空隊の整備兵でした。
戦後は自動車の整備工をしばらくやっていたそうです。

戦後すぐの頃は、部品の入手にも困ることが多かったらしく
修理の際は、よく部品を自ら作って組み付けたそうです。

そんな叔父が
「今の整備士は”とっかえ屋”だ」
とよく言っていました。

故障箇所を部品単位で修理するというより
ユニット単位で交換してしまうことが多いからです。
(アッセンブリとか呼んだりしますね)

そう言いたくなる気持ちは分かりますが
今どきコツコツ部品単位で直せるような時代ではないのです。

そもそも部品が細かい単位で販売されておらず
ある程度組み上げられた単位でしか入手できなかったりします。
これはそうした方がコスト的なメリットが大きいからです。
部品の生産はもちろん、管理とか、修理に要する時間とか。
結局、最小単位の部品で交換できるようにすると
そのためのコストは製品に載せざるを得ないわけで
ユニットにしちゃった方が、売る方も買う方もハッピーでしょ
ということです。

もちろん、そういう製品になってくると
直す方の技術も変わってきます。

コツコツ小さな部品を加工・修正するようなスキルから
診断機に繋いでトラブルシュートするようなスキルに変わったりします。
そして細かい部品単位での修理スキルは
徐々に必要とされなくなってきます。
もちろん、基本的な知識とかスキルが
ある程度必要なのは変わりませんが。

そんな風に環境を作っていくと
発展途上国で車を売っても、先進国とあまり変わらないレベルで修理ができるとかの
メリットがあるようです。

最近の車のエンジンルームを見たりすると
みっちり部品が詰まっていて
うわぁ…ってな感じで
今やエンドユーザーが気軽に手を入れられないのも仕方ないと思うのですが
工場のラインで組み上げる時には、効率よく作業できるようになっています。
おかげで、あれだけの性能・品質の車が
あの値段で手に入るわけですね。
それはバイクも同様でしょう。

一昔前だと
エンジンのオーバーホールなんかは
バイク屋さんにとっては良い商売だったのですが
今や面倒な仕事の一つなのかもしれません。
そもそも、エンジンをオーバーホールしてまで乗り続けよう
というお客さん自体ほとんどいませんから。

先日、久しぶりに30年もののハーレーに乗ってみました。
しばらくエンジンに火を入れてなかったので
キャブレターのオーバーホールをしてから乗るべきか迷って
結局は何もしないまま乗ったら、案の定不調だったのですが
まぁ、これは簡単に直すことができます。

もしこれがフューエルインジェクションのバイクだったらどうなのだろう?
と考えてしまいました。

しばらく乗らずに燃料が劣化してたりしたら
燃料ポンプも燃料ラインも、インジェクターも劣化した燃料で影響を受けるでしょう。
そもそも、30年も経ったら交換部品なんて手に入らないでしょうし
かといって、何とか部品を自作して解決するなんて手段も現実的ではないでしょうね。
なので、快適にツーリングできる今乗っているBMWは
恐らく10年も乗らずに手放すことになるでしょう。
気に入ってるのに手放さなきゃいけないのが
今から分かっているってのも寂しいものです。

対して、キャブレターのハーレーは、まだまだ乗ることになるでしょう。
消耗部品は問題なく入手できますし
物によっては加工して流用したり、作っちゃえば何とかなりますから。

新しい乗り物の方が環境に配慮して作られているはずなのに
何か皮肉なことになってますね。

バイクやクルマの未来 技術と情熱編

コロナ禍の影響で
バイクに乗る人が増えているとかいないとか。
増えているなら大変良いことですね。

人気のカテゴリーや車格・排気量も
特定の一つではなく
程よく分散されているような気もします。

乗って楽しんで
いじって楽しんで
色々な楽しみ方があると思いますが
色々な人が色々楽しめば良いと思います。

昔々
私が学生の頃は
80年台の、いわゆるバイクブームで
かなり狂った時代でした。

多くがバイクに乗りましたが
志向は結構画一的で
スピード命(のように見える)がほとんど。
もちろん、レースブームでもありました。

それに比べれば
最近の状況は健全ではないでしょうか。

以前に比べて販売台数は減っていて
各メーカーのラインナップも
かなり絞られたようですが
結構ツボを押さえた構成になっているように見えます。

技術的な進歩も凄いですね。
今やキャブレターではなくFI(燃料噴射)で
小排気量でもABSですし
(これらは法規などが理由でもあるけど)
スロットル・バイ・ワイヤーが増えてきて
クイックシフター装備だったり
トラクションコントロールや
クルーズコントロールなどの制御が効いてたりして。
クルーズコントロールなんて
クルマみたいに前車との車間を保つ
「アダプティブ」の領域に入ってきてますし。

乗り手が色々とやることが多い分
バイクの運転は難しかったり技量の差が出たり
そんなところが面白さでもあって
色々と制御が入ったりすると
面白くなくなっちゃうんじゃないの?
という危惧もありましたが
そんなことはありませんでしたね。

ただ気になるのは
ブラックボックスが増えて
色々と統合されたシステムになったために
以前のような分かりやすさが無くなって
ユーザーが手を入れられる領域が減っているところです。

もう以前のように
ダイナミックに自分の乗り物に手を入れるのは
難しい時代になってしまっています。

もちろん性能や安全性とのトレードオフで
これは仕方ないことではあります。

とはいえ、以前のように素人が手を出しにくくなったことにより
乗り物をいじりながらユーザーが成長して
そのうちのマニアックな一定数が開発側になる
というストーリーにおいて変化が出ることになるとは思います。
果たしてどのような形になるかは分かりませんが。

自動車の開発に携わる人のほとんどは
クルマ好きの人間で構成されていると思います。
色々な「好き」がありますが。

その中でも スポーツカー好きなどのマニアックな人達の熱量による
貢献度は大きいのではないかと思うのですが
どうでしょうか。

彼らにとってのバイクやクルマは
単なる移動の道具ではなく
愛着が持てたり
自己実現のための重要な何かだったりして
大量の熱意を投入する動機になり得ました。

まぁ、こんなのは単なる思い込みかもしれず
これからもクルマを含めた乗り物は
どんどん進化・発展して行くのだとは思いますし
その方向性や勢いがどうなるかは大変興味深いところです。

ただ、その世界がこれからも「熱」を感じさせてくれる存在で
あり続けてくれることを願ってます。

世界中でFormula SAEを頑張っている若者達がいるので
逆に期待できる状態なのかもしれませんけどね。

勝ったり負けたり

グローバルなビジネスなどは
パイの奪い合い
に例えられますよね。
食べ物のパイですよ。
数が限られた麻雀パイでも良いかもしれないし
ピザでも良いかもしれませんけど。

規模の限られた環境で
ライバルがいる中で何かをやる時は
そんな状況になります。

誰かがいっぱい取ると
他は少ししか取れない
そこには競争原理が働くわけです。
強い者が取る!
というより
優れた者が取る!
と言った方が良いのかな?
微妙な違いだけど。

別にこれは特殊な環境とか
世界規模のマーケットに限られたことではなく
我々の日常にもよく見られるものです。

レースしかり
受験や就活しかりです。

レースは日常じゃないだろうって?
いえいえ、夢工房では日常です。
そのために学生達は日々過ごしてますから。

まぁ、それはともかく
パイの奪い合いみたいな状況を
鳥瞰するように理解しておくのは大事だと思うんです。

そういうのを知らないままで
パイカッター作ってもしょうがないと思うんですよね。
どんなパイを切るのかを決めないと
それに合ったカッター作れないでしょう。

今日は何を思ったかというと
多くの学校って
根本にある大事なことを教えてないんじゃないかな
ということです。
難しい理屈は沢山教えるんでしょうけど
もっと大枠の
我々の現状とか
そもそもの起源とか
そういうのをもっと知っておくと
その後の学びは違ってくるんじゃないかなぁ
と思ったのです。
本学は結構教えているのかな。
学校自体歴史ありますしね。

例えば自動車です。

我が国が世界有数の自動車大国(生産側として)
というのは
皆さん何となく知っているんじゃないかと思います。
でも、何となくですよね。

ところが
我が国の自動車産業は異常に強いわけですよ。
こんなに国土面積が狭いのに
こんなに自動車メーカーがいっぱいある国は無いですよね。
これから統廃合が進む可能性も無きにしも非ずですが
バイクメーカーもあわせれば
トヨタをはじめ
ホンダ
マツダ
日産
三菱
SUBARU
スズキ
ダイハツ
いすゞ
日野
UDトラックス
ヤマハ
カワサキ
(略称&順不同)
という感じで凄い数です。
乗用車もトラックもバイクもスクーターも
なんでも作れます。
で、安くて物が良い。

こんな国無いですよ。

というわけで
日本は自動車に関しては
圧倒的な勝者で
パイ取りまくり
なわけですよね。

自動車本体のみでなく
周辺産業まで含めたらモンスターですよ。

さらにこれは自動車に限らず
造船とか工作機械とか電子系とか材料系とか
他の業種でも似たようなことになっている分野も多いでしょう。
ついでに言うなら
鉄道車両も飛行機もロケットも戦車も潜水艦も作れるんですよ。
作れないものあるの!?

なのにパイの全体像を見ようとしないで
細かいところを学んでるとしたら
大変もったいない気がするんです。

だって、この状況を分かっていれば
夢を持って色々妄想をしながら学べるし
少なくとも誇りを持って学べるんじゃないかと思うのです。
そうしたら、状況は変わってくるんじゃないかな。

国にしても学校にしても
「我々はあそこに行くべきだ!」
という方向性が見えないですよね。

こういうこと言うと
「何やろうと個人の勝手じゃん!」
とか言う人がいますが
そう、勝手なんですけど
大方針として大筋が決まってなければ
みんなバラバラの個人の力でやることになるでしょう?
それで、デッカいパイを取りに来たヤツにどう対処するんですか?
と言いたいのですよ。
巨人に対して個人で闘うんですか?
別に社会主義とか全体主義にしたいわけではないのです。
そんな環境では私は生きていけませんから。

企業は強い方針を持っています。
だから強いし生き残っていけてるんですよね。
社員が
「何やっても勝手じゃん!」
で組織が生き残っていける訳ないです。
何で組織でやってるかというと
一人じゃできないことを皆で力を合わせて達成するためです。
超シンプルです。

何も、ガチガチに縛り付けろ
ということではなく
もうちょっとみんな同じ方を向こうよ
と言いたいのです。
緩くて大きな流れのような感じでも良いから。

世の中の状況は
若者の心を形作る鋳型みたいなものです。

力を合わせることができる若者がいなくなっちゃったら…
レース勝てないじゃんか!!

結局そこかよって?
そうですよ。

まぁ、ウチは何とかしちゃいますけどね。

今年は、F1でレッドブル・ホンダが好調なので大変嬉しいです。
みなさん、頑張ってください。
MotoGPも頑張ってね。