クルマはまだまだいけますよ@大学

今日はオープンキャンパスでした。

コロナウイルスの影響と気温の高さもあって
人の入りはボチボチといったところでしたが
私の研究室には結構多くの来場者がありました。

「東京電機大学」とは言うものの
ここは埼玉の鳩山キャンパスです。

ウチは自動車通学が可能ということもあり
車好きの入学希望者が結構集まるのです。
ありがたいことです。

若者の自動車離れ
なんて言われたりしますが
自動車と離れて生活が成立するのは
公共交通機関に恵まれている
都市部に住んでいる人だけでしょう。

地方に行けば
車が無いと不便だったり
生活が成り立たなかったりするわけで
そんな所に住んでいる若者達は
幸か不幸か車やバイクの面白さに
目覚めてしまったりするケースも
まだまだ多いのだと思います。

車好きの高校生と話をして思うのは
比較的元気なコが多いということですね。

電子工作が好きだったり
要素に興味を示したりするコは
相対的に線の細い感じがする場合が多いです。

若者の自動車離れ
全体的に見れば
それが現実なのかもしれません。

でも実は
そんなに悲観していません。

自動車業界が無くなってしまうことはないでしょうし
そんな中で自動車業界を志す若者は
モチベーションが高いコが残るわけですから。

なので、絶対数が減少しても
元気なチャレンジャーが集まる大学になれば
何ら問題は無いわけで
むしろ今がチャンスだとすら思っています。

こういう状況も
我々のモチベーションの源泉になっているわけです。

さて、明日も猛暑の中でオープンキャンパスですよ!

勝負はアイデア つまり人そのもの

自動車メーカーでは
彼我比較(ひがひかく)と称して
ライバルメーカーのクルマを徹底的にバラして
細部まで比較検証します。

前職で、自動車の開発をしていた時は
ドイツの某メーカーの小型乗用車のボディをぶった切って
内部を見たことがあります。

新車をバラしてぶった切っちゃうんですよ。
ゴージャスですよね~。

メーカーが異なるだけでも
設計の考え方は大分違うものですが
国が変わるとなおさらです。

板の重ね方や溶接の仕方
「あ、コレやっちゃって良いんだ?」
とか
「ここまでやるんだ。すごいな~」
みたいな発見があって面白かったですね。

各メーカーが拘っているところは
ぶった切ると大抵分かります。
一般的な構造と違うから。

組み立てやすさとか
衝突時の力の伝達とか
そんなところの工夫を見るのは
他メーカーのエンジニアの
頭の中を覗いているようで楽しかったですね。

自動車の設計って
基本や法規に基づいて
作っていく建築などと違って
構造からアイデア勝負ですから
よその製品を見ると発見が多いのです。

メーカーのプレスリリースを見ても
技術資料を見ても
細部までは分かりません。
やっぱり現物をバラさないと。

もうそういう現場から離れて20年も経ちます。
最近はどうなっているのでしょう。
各社どんな工夫をして
どういうところに拘っているのか
とても興味深いところです。

対して
学生が作るものだって
場数を踏んで視野が広がれば
それなりに拘りを持ったものができてくるものです。

でもやはり
そうなるにはそれなりの時間が必要なわけで
学年が低いうちからガンガンやらないと
それなりの領域には行けないでしょうね。

面白いのは
夢工房でレーシングカーをつくっている連中は
活動発足当初に打ち立てたコンセプトを
いまだに大事にして
新しい解釈をしながら
世代を跨いで追求を続けていることです。

いい加減、違う方向性もうやってみたら?
と言いたくなることもありますが
彼らにとっては
まだまだ「やり代」があるようで
本質の部分を守りながら
新しいアイデアを入れ込んで
性能の過激化を狙っているようです。

活動立ち上げ時のメンバーが
いかに凄いことをやったのかというのは
20年経った今だからこそ実感するところです。

彼らのアイデアを
20年経ってもしゃぶり尽くせないのですから。

現役メンバー達
「初期のメンバーのようにやりたい」
って言いますからね。

今年のイベントはどうなるか分からないけど
今作っているマシンが形になるのが楽しみです。

デッドエンドは成長への発射台

学生と付き合っていくというのは
彼らの喜びと同時に
彼らの悩みとも付き合っていく
ということでもあります。

夢工房で色々やっている学生達
日々新しいことができるようになったり
新しいことに気付いたり
そんなこともありますが
もちろん
やりたいことが
できなかったりすることもあります。

理論的に分からないとか
技術的にうまくいかない
そんなことは頑張ると何とかなったりするのですが

手強いのは
本人の意識に上ってこないことが原因で
うまくいかないこと。

コイツが非常に手強い。

大抵は自分でも
何が起きているのか分からないんです。

例えば
「ものごとは大枠から決めていくんだよ」
と言っても
ついつい細かいことから始めちゃう。


「先生、この部品どうですか?」
と図面を持ってくるんだけど
単品の図面見せられても
その部品がどうなのかは判断できません。

部品の形状は
周囲の環境で決まっているわけで
「何のために、そうなっているのか」
それが分からないと
良いも悪いもありません。

そういうのはビギナーに多いですね。
何事も小さいところから始める
そんな訓練を延々とされてきた成果です。

実際に手を使って何かを作ったことが無いと
「大枠から考えろ」
と言っても
一体どういうことなのか実感が湧かないかもしれません。

実際にものをつくれば分かるんですけどね。
小さいところからなんて作れないって。

でも、プラモデルなんかだとダメかもしれませんね。
実際、細かいところから組んでいくから。
なにも経験が無いよりは良いのですが。

スクラッチで
ゼロから何かしらのモデルなんかを作ったりすると
良いかもしれません。
今時なかなかそんな学生いませんが。

絵画とか
何かしらの造形物を作るのも
良い経験でしょうね。

なので
夢工房に来て、1年生の時に何かの道具とか
雑務のようなものでも良いので
何かしら作った経験のある学生は
結構伸びます。

レベルが低くても良いから何かやれば
大抵は、どうしたら良いか分かるものです。

ダメでも何かやってみれば分かる!
ってことが分かったり。

でも、たまたま
そういう経験を逃してしまった学生もいます。

そういう場合
作るための準備がしっかり整わないので
作り始めることができない
なんてことになっちゃってることが多い。
そうなると事態はややこしくなります。

なんで準備が整わないかというと
経験が無いからです。

なんで経験が無いかというと
準備が整わなかったからです。

以降ループが続く

結局
いつになってもできるようにならないのですね。

そうこうしているうちに
締め切りが近付いてきます。

で、どうするかというと…

逃げ道を探します。

そもそも逃げ道なんて無いんですけどね。

まぁそれでも
うまいこと、その場は逃げて
学年を重ねてしまうケースもあります。

でもいつかは
もう本当に逃げられない
デッドエンドがやってきます。

本人は困るでしょうね。
凄く悩むと思います。

でもそれ
チャンスですよね。

消極的な気持ちを突き破って
その先に行くことができるようになれば
凄い飛躍ができるかもしれませんから。
それをやるしかない状態。

そういう状態から飛躍する学生を見られるのも
こういう仕事をしている特権だと思ってます。

技術は人なり