世の中の多くの製品はCADで設計します。
コンピューターで図面を描くためのソフトですね。
(CAD:computer-aided design
コンピューター支援設計 キャドと発音します)
このCAD、昔は単に平面の図面を描くためのものでしたが
そのうち三次元の立体モデルも作れるようになって
今や立体のデータを作ったり
それを元に様々な解析ができるような追加機能を持っていたりします。
私は二次元から三次元への移行期で仕事をしていましたので
色々と知ることができました。
当時は、あちこち余計なところに首を突っ込んで仕事をしていたので
CAD自体の開発や管理に関わる方
ベテランのデザイナーさんなど
いろんな方と仕事をさせてもらったのは良かったですね。
多くの発見がありました。
そうそう
英語でDesignというと
機構などの設計も外観を考えるのも全て含みますが
日本語でデザインというと
普通は外観を考えることを指します。
ジュエリーや服飾デザイナーは
設計者とは呼ばれませんものね。
なので、英語ではメカを設計する人も
見た目を考える人もデザイナーなんですよ。
面白いですね。
目に見えるものに関して
我々の脳がしている凄い仕事についてお話ししましょう。
「見える」
というのはどういうことなのでしょう。
私は医学とか人体の専門家ではないので
ざっくりいきます。
映像が目のレンズを通して
球面状の目玉の内側にある網膜に投影されたものが
視神経から脳に送られて処理しているのですが
このとき網膜に投影された映像は鏡像です。
つまり上下左右が入れ替わっちゃっている映像です。
このひっくり返っちゃっている映像を元に
我々は目に見えるものを認識しています。
さらに、映像は
球面上の網膜に投影されるので
直線的な形状をしたものは
真っ直ぐな形に投影されません。
なので、直線的な形状をしているものは網膜上では曲線になっているのです
それを脳の補正で「これは直線だ」と認識しているのです。
もうこの状態だけでも
脳ミソの働きが凄いと思っちゃうのですが
私が脳による補正を実感したのは
こんなことがきっかけでした…
今から30年くらい前
それまで仕事に使っていたコンピューターのディスプレイは
ブラウン管だったのですが
液晶ディスプレイが登場しました。
平らで薄いディスプレイを見たとき
「未来が来やがった!」
って思っちゃいましたね。
ちなみにCADで使っていたコンピューターは
パソコンではなく
エンジニアリングワークステーションと呼ばれる
1台何百万もするデカいマシーンで
ソフトウェアも含めると
1セットでフェラーリが買えると言われていました。
さて、ブラウン管の表示面は
ゆるい球面になっていますが
直線形状を表示しているときは
何の疑いもなく直線に見えていて
もちろん業務上も支障がなかったのです。
対して液晶ディスプレイの表面は平面です。
そんな液晶ディスプレイに置き換わったらあら不思議
直線であるはずのものが曲がって見えるのです。
曲面のブラウン管に表示された直線は曲がっていて
平面の液晶ディスプレイに表示された直線こそ
本当の直線のはずなのに。
これ、脳の補正が効いたままになっているのですね。
ブラウン管のときの
「画面に映るコレは直線なのだ」
という補正が効きっぱなしになっている状態だとこうなるのです。
もちろん、そんな環境で仕事をしていると
液晶ディスプレイに、表示された直線を
ちゃんと直線だと認識できるようになって
逆にブラウン管のを見ると
曲がっているように見えるようになるのですが
これは、自分の周囲の環境や目の構造など
物理的には何も変わっていなくて
自分の脳内の認識だけが変わっているのですね。
というわけで
一口に「見える」とは言っても
どのように見えているかなんて
人によってはもちろん
環境や、それこそ
マインドとかスキルとか
いろんな影響で変わったり違ったり
ってことがあるんだよね
というお話でした。