最近の車は大変です

年の瀬は何をやっているかというと
頼まれもののハイエースの改修作業だったりします。

具体的には
サイドドアのオートクローザー追加
テールゲートの開閉電動化
車内へのFFヒーター設置
バックカメラ取り付け
という感じなのですが
いかんせん頼まれものなので
外観は綺麗に仕上げたいわけで
一番厄介なのは電線の処理ですね。

どこから電源を取るとか
見えないところを配索するとか。

そうなると内装剥がしまくりなのですが
車が大きいだけに
なかなか大変な作業だったりします。

この作業、車屋さんに頼んだら
やってくれなかったそうなのですが
うん。分かる。
これは大変だ。

でもまぁ、これはこれでかなり勉強になるのです。
ウチは曲がりなりにも自動車工学研究室ですからね。
量産車のお勉強です。

各種部品の取り付けや仕上げとか
(合わせ建て付けといいます)
部品そのものの形状や素材とか
自動車技術は日進月歩ですから。

アフターマーケットの部品のクオリティや
機能なんかも大変参考になりますし。

前職では、自動車の各部位を
一通り色々やらせてもらいましたので
全体的にそれなりに理解はできるのですが
今回の改修作業で一番インパクトがあったのは
電装部品です。

とにかく回路数が凄まじく増大しています。
ワイヤーハーネス(電線)の総量は凄い事になっていますね。

現役で設計をやっているときは
場合によっては試作車1台分のワイヤーハーネスを
全て一人で作ったりした事もありましたが…
これは無理だなぁ。

ちなみに、その時の車は
モーターショーの出品車で
コンセプトカーでした。

ショーカーって、以外とシンプルな電装だったりするんですよ。
量産車みたいに余計なものは付いてませんから。
エアコンとかオーディオとかセキュリティとか要りませんし。

自動車の電装部品のサプライヤーに勤めている卒業生が
「最近じゃ銅のコストがエライことになってます」
と言っていましたが
うん、それは分かる。

世の中何でも電動化するのも結構ですが
電線作るにも資源やエネルギーが要るのですよ。

あと、作業をしていて思ったのは
やたらと制御が増えている関係上
何かすると初期化とか設定とかが必要になったりして
なかなか大変です。

個人的にはシンプルな車が好きなんです。
アシストなし、制御なしで
自分でどこでも手を入れられるような。

イギリスのバックヤードビルダーが組むような
スーパーセブンとかジネッタとか。
知ってますか?

そういう車、もう現れないでしょうね。

EVの話 エンジンとモーターの比較

欧米では、エンジンをモーターと呼んだりするので、このタイトルは不適切なのかもしれません。
日本でも、ナントカモータースとか言うでしょう。
本当は電動モーターとか呼ぶべきなのかな。

今回は、液体燃料で動くエンジンと電気で動くモーターの比較をしてみましょう。

EVは構成部品が少なくて単純な構造…と言われています。
でも価格が高い。
電池のコストが大きいのですね。
走行するためのエネルギーを貯めておくところのコストが高いなんていうのは、エンジンで走る乗り物に慣れ親しんだ者には違和感を感じるところかもしれません。

「電池」と表現すると、あたかも単一の部品のように感じますが、EVのバッテリーって小さなバッテリーの集合体なのです。それらを繋いで数百ボルトの電圧を作ってモーターを動かしています。
しかも温度管理とか、ダメージを受けた際の安全面とかも考慮した構造にしなければならないので結構厄介な代物です。リチウムイオン電池なんかは、一度燃え出すとなかなか消火できませんから。

それに、大きさや重さの割にあまりエネルギーが入らないので、たくさん搭載する必要があって、結果として重くなります。
なので、EVでエンジンの車と同じようなこと(軽くて長距離走れる)をしようとしたら、バッテリーの革命が起きないと無理です。
この辺は、全固体電池なんかが研究されているので、そういうのがうまくいけば将来的には面白いことになるのかもしれませんね。

対してエンジンの車は、エンジン単体で見ると凄い部品点数だし、高い精度を要求する部品を多数使っています。そして同じパワーを出すモーターに比べれば大きくて重い。
エンジンの構造は複雑で、燃焼で生じるエネルギーをベースにしているものだから、自然環境の影響を受けやすくて制御が難しい。
モーターは環境の影響を受けにくいし、エンジンと違って極低回転域から力が出るので制御しやすかったり、トランスミッションが不要になったりします。

エネルギーのチャージなんかは大きく違いが出るところですね。
ご存じの通り、ガソリンは液体なので、ガソリンスタンドで給油する際は数分で事は足ります。
鈴鹿の8時間耐久レースなんかは、20リッターちょっとのガソリンを僅か3~5秒程度でチャージします。
電気はケミカルですからこうはいきません。
つまり化学反応で電気の出し入れをしているので、ガソリンを給油するように、物体を移動すればお終いというわけにはいかないのです。

両者の比較で気を付けなければいけないのは、単にエンジンとモーターのスペック上の比較はできないということです。

エンジンの場合は、エンジン単体で馬力が決まります。
航続距離を伸ばしたければ、単に燃料タンクを大きくすればOKです。

しかしモーターの場合は、いくら単体の性能が優れていても、短時間でたくさん電気を吐き出すことができる電池が無いと馬力は出せません。
要はバッテリーとセットで性能が決まるというということです。
高い性能のモーターとバッテリーを組み合わせると凄い性能を出せます。EVの加速は凄いですものね。
ただ、大きさとか重さとの兼ね合いで、高速で長時間稼働ということになると難しい。

こんなふうに、色々と違うことが多いので、直接比較するのは難しくて、単純な置換えをするよりは、EVはEVなりの使い方をするのが適切なのだと思います。

久々のEVの話

久しぶりにEVの話をしてみましょう。

ウクライナとロシア間の戦争の影響で、エネルギー価格が高騰しています。
幸いにして日本の消費者は欧米並みの深刻な打撃は受けていませんが。

ヨーロッパでは、EV化の動きが鈍っていると聞きます。

結局、電池を作るのもかなりの電力が要りますし、充電するための電力にしたって化石燃料への依存度は大きいですから。

EVは効率が良いと言われますが、電力の元となる原油の採掘から走行までの最終的な効率を考えると、エンジンの車に比べても、その差は大して大きくないのですね。

さらに生産に必要なエネルギーを考えると、EVのエネルギー消費がエンジンの車を上回るのは、相当な距離を走った後、ということになります。
まぁ、そうなるでしょうね。
とはいえ、電動化の流れは消えることはないでしょう。

国内では小型EVの実証実験など、色々やっているようですね。
機会があったらぜひ体験してみたいものです。

ブログの記事としては久々のEVネタなのですが、日頃から色々考えてはいるのですよ。
将来はどんなふうに発展していくのかな?
とか
構造とかコストとか使い勝手がどう変わるのかな?
とか。

個人的には、どっちが良いとか悪いとか、好きとか嫌いとかは無いのです。
どっちも面白いんじゃないかな、と思っていますし、情報収集もボチボチやってます。

とはいえ、現状ではエンジンかモーターかというパワーソースよりも、車体そのものに対する興味の方が大きいのです。

「”電機大学”なのだからEVやらないの?」とはよく言われますが、そういう部分的な技術は、ソレ専門の人達が頑張ってやってくれていますからお任せしましょう。
で、良いものができたら使わせてもらいましょう。

続く