オーストラリア遠征準備中

国内では、コロナ感染の第5波が収まろうとしています。

昔から、疫病は第5波で終息するというのがあるそうで
それが本当なら素晴らしいのですが
どうなのでしょう?
もちろん油断はできません。

現在、夢工房では
レーシングカーを作っているプロジェクトが
12月のオーストラリア大会に向けて準備中です。

このまま感染が収まれば
彼らは活動を加速できるのですが
問題は開催国の状況です。

オーストラリアでは現在
第3波の盛り上がりを押さえ込もうという状態。

もちろんうまくいって欲しいのですが
「第5波終息説」が本当なら
まだ先は長そうです。
そうなると大会中止もあり得ます。

なかなか悩ましいのは
主催者はギリギリまで判断を遅らせたいのだと思いますが
我々海外勢は諸々の準備が必要で
それらが何とも難しい状況です。

海外遠征をする時に
どんなことをしているかというのも
参考になると思うので
良い機会ですので明らかにしておきましょう。

ざっとあげると事前に
こんな準備をしてます。

  • マシンや物資の輸送の手配
  • メンバーの飛行機の予約
  • 現地の宿の予約
  • 現地での移動用のレンタカーの予約

マシンや物資の輸送には「カルネ」を使います。
レーシングカーを外国に持ち込むのは
れっきとした輸出入なので
このカルネによって一時輸入という扱いにして
免税にしてもらう必要があるのです。
その手続きを事前にしておき
「カルネ手帳」なるものを準備しておく必要があります。
そこには、輸送する物品全てのリスト含まれており
申請はなかなか手間の掛かる仕事ですが
学生メンバーがやっつけます。
ちなみに輸送する物資一式は
大きな木箱に詰め込んで
航空便とか船便で送ります。
総重量は1トンあまり。

飛行機の予約は、誰か代表者がまとめて予約したり
メンバーそれぞれが予約したり
その時によります。
大抵は航空会社のサイトから。
問題は、現時点でオーストラリア往復の予約が
オープンしていないことです。
12月近くなってオープンしたら
多くが殺到して予約が取れるか心配なところ。

現地の宿は、最近では一般的な予約サイトで取ります。
現地での移動を考えて最適なロケーションと
とにかく安くて便利な宿を探します。
これは多分、それほど問題にならないのではないかな。

現地でのレンタカーは一般的な乗用車ではありません。
当チームの場合は、マシン輸送用の3トントラックを中心にして
人員はマイクロバスを使います。
普通のレンタカー屋さんでは予約ができないことも多いので
トラックやバスが得意なレンタカー屋さんに申し込みます。
オーストラリアの場合は、なじみのレンタカー屋さんがあるので
直接連絡してお願いしてます。

とまぁ、色々準備があるのですが
これらのうち、一つだけでもうまく行かなければ
遠征には行けません。

学生のうちに、こういうことを経験するって凄いと思います。
社会に出て、海外で何かすることになっても
大抵何とかしちゃうと思います。

現に、卒業生は海外駐在とか多いですね。
みんな頑張ってます。

さて、今回の遠征はどうなるでしょうか。
ワクチンパスポートは、今日現在で
オーストラリアでは有効ではありません。
現地に行って
2週間ホテルで隔離
なんてことになるなら遠征はキャンセルです。

みんな頑張れ!
頑張れオーストラリア!

良い子のロジック 悪い子のロジック

学生を観察していると
色々分かるわけですが
今日の発見。

結構高いモチベーションを保っている
明るくて現張るタイプの学生が
何で斬新なことができないのか
何で同じことを繰り返しちゃうのか
(この場合は、もちろん繰り返すべきでないことです
同じ失敗を繰り返すと言ったようなことです)

この辺が分かりました。
というか、ロジックが見えました。

彼らはいわゆる良い子です。嫌みではなく。
明るくて人当たりも良い。
元気もあるし
恐らく勉強だってボチボチできるのではないかな。

問題は
「良い子」だということです。

何と!
「良い子」なのが問題!?

「良い子」って何でしょうね。

一般的には、評価者(学校の先生や親)
にとっての「良い子」です。

つまり、学校とか家庭での物差しで
レベルが高い
ということでしょう。

問題を起こさないとか
言われたことをちゃんとやるとか
頑張り屋さんだったり
その辺が評価内容でしょう。

ここで何が起きているかというと
良い子は、評価者を安心させるために行動して
良い評価を得ることによって自身が安心したいわけですよ。

欲求が「安心」であれば
そのための行動をします。
そうやって生活してきたなら
それは無意識に発動します。

この、家庭とか学校で褒められるための「物差し」に従って
自動的に行動してしまうから
その物差しに適合するように無意識で動いてしまうから
うまくいかんのです。

目の前のこと、手元のとことだけに集中して
周囲なんて見渡しちゃダメ。
今やっていることが終わるまで
先のことなんて見ちゃダメで
そういうのは集中力が足りないとか
余計なことをしているとか言われちゃう。
言われてもいないことをやるなんて論外!

真面目に言われたことに集中していれば
学校では褒められます。
安心ですから。
それがゴールです。

視野を広く持って
先のことまで考えながら
言われてもいないことをやる
これはダメな子。

キョロキョロしながら
今やっていることも終わっていないのに
「次は何?次は?次は?」
なんて言いながら
言われてもいないことをやり始める子供は
学校や家庭では、大抵は怒られますよね。
目に浮かぶようだ。

レーシングカーを設計していたりすると良く分かりますよ。

速く走ることが命題であるレーシングカーは
可能な限り軽くしたい。

構成する、あらゆる部品は力を受けるので
使用する環境において掛かる力を想定して
軽量でありながら壊れないような設計をします。

でも、使用中にイレギュラーなことも起きたりするので
ちょっと余裕を持った設計にしておくのです。

この余裕を「安全率」と言います。
この値が性能のカギだと言っても良いと思います。

この安全率が「1」だと
余裕がゼロということで
想定を超える力が掛かると壊れます。
が、部品は最も軽くなりますので
高性能と言えます。

もちろん安全率が大きくなると
想定を超える力が掛かっても
壊れにくいのですが
重くなって性能は低下します。

こういう矛盾を高い次元でバランスさせる
(と言えば聞こえは良いですが妥協とも言います)
のがレーシングカーの設計です。
こういうのは人の本質が出ます。

良い子は無意識に安全率を大きく取りたがります。
安心したいから

悪い子は最初からギリギリを狙ってきます。
勝ちたいから

多くの人は言います。

「まずはちゃんと動くものにしてから性能を上げなさい!」

でも無理です。

安心なものを設計して
ちゃんと動くことを確認してから
安全ではない方向に変えていくことなんて
言うほど簡単じゃありませんし
果てしなく時間が掛かります。

安心を求める心が邪魔をします。
「これで良いじゃないか」と。
楽をしたい心が邪魔をします
「この辺にしとけよ」と。

他にもありますよ。

良い子はレギュレーション(規則書)の隙を突いて
性能を上げるようなことはできません。

言われたことをやる彼らにとっては
「それは卑怯なこと」で「悪いことだ」
という先入観があるからです。
なので、彼らにはルールの隙間は見えません。
書いてある条文しか見えない。

他人と同じ土俵で戦わないと卑怯だ
とも思っているでしょうね。

レーシングカーは
「禁止されていないなら何やっても良いじゃん!」
で性能を上げます。
アイデア勝負です。

「言われたこと」は斬新ではないので
それをやっても創造性は育まれないし
そのやり方で、どんなにハードにプッシュしても
良い成果は得られません。

「良い子」ってのは、家庭とか学校の物差しでの評価あって
そんなの社会に出たら通用すんの?誰か喜ぶの?
と思っちゃいます。

まぁ、それで良い世界もあるのかもしれませんが。

そもそも彼らが欲しいのは
「安心」ではなく「喜び」でしょう。
その辺は勘違いしちゃいけませんね。

なので
目的を達成したい
欲しいものは欲しい
そういう彼らには
「キミら、こうなってるよ」
とロジックを説明して
日々の成長を楽しんでます。

悪い先生ですみませんね。

注意:
何も考えずに、むやみに安全率を低くするのは危険です。
設計時に、どこを壊すか、壊れたときにどうなるようにするかを考えておき、安全確保をしましょう。
できれば、前もって実走行で各部の負荷を計測しておき、その値を元に設計できると良いですね。そういうことをやるなら、安全率の高いマシンが最初に必要になるという考え方もあるかもしれません。

オリンピック終了~学生達のオリンピック

東京オリンピックが終わりましたね。

コロナ禍の中での開催ということで
色々と議論がありしましたし
困難もあったかと思いますが
いざ始まってみれば
やはり世界のトップアスリート達の
レベルの高い闘いは見応えがあったし
日本選手の活躍にもエキサイトしました。

私は、開会式や競技はあまり見られなかったけど
閉会式はネットのライブ中継で見ることができました。

当初の計画通りに行かなかった部分も
多かったのではないかと思うのだけど
「さすがトーキョーだな」
って感じにまとめたのではないでしょうか。

やり切った選手達を見るのは気持ちが良いものです。
やはり何かを一所懸命やって極めるというのは凄いことで
人の心を動かすだけのパワーがある。

オリンピックの商業的な効果などは
もちろん大事なことの一つなのでしょうけど
最も重要なのは、この
人の心を動かす
というところなのではないかと思います。

平常時のオリンピックでも
自分の競技が終了した時点で帰国してしまう選手はいますので
今大会の閉会式はどうなることかと思っていましたが
多くの選手が参加してくれて良かったですね。
改めてこれだけの選手達が一堂に会しているのを見ると
理屈抜きで嬉しくなりますが
やはり自国でのオリンピックは特別なのだ
と感じました。

開催できて良かったなぁ。

今回は海外からの観客が来られなかったのは本当に残念です。
その分、閉会式が終わった後に
各国の選手達が日本を充分に
楽しんでから帰国してくれれば
と思うのですが
そうもいかなさそうなのは残念です。

さて、オリンピックのこの雰囲気ですが
我々にとっては
そうそう遠い世界という感じはしないのです。

と言うのも
Formula SAEのイベントは
アメリカ大会やドイツ大会が世界最大規模で
1大会で80チームくらいが世界中から集まります。
人数で言ったらかなりのものだし
会場の雰囲気や盛り上がりで言ったら相当なものです。

近年、我々が参戦しているオーストラリア大会だって
参加数は30チーム強といったところですが
色々な国からの参加があるワールドシリーズの一つなので
レベルが高く
それなりに国際色豊かなイベントです。

もちろん
単純にオリンピックと比べるのは
色んな意味でおかしいのかもしれませんが
参加している学生達にしてみれば
間違いなく
彼らにとってのオリンピックです。

学生が国際的な大会で一番を目指して頑張っている訳ですが
一生のうちに、こんな経験をできる人がどれだけいるでしょうか。

その貴重な機会を大事にして
悔いのないよう頑張って欲しいと願ってます。