電気の時代がやってくる 国防編2

以前、アメリカ陸軍の電動化について投稿しましたが
引き続き今回はアメリカ空軍の話しをしましょう。
もはや話は”電動”ではなくなる気もしますが。

結局のところ
バッテリーを使うと大きく重くなって
機動性の面で致命的で
液体燃料のもつエネルギー密度は凄いよね
ということでした。

これは航空機だとより顕著になります。
空を飛ぶものが重いとどうにもなりませんから。
空軍ならなおさらでしょう。

アメリカ空軍の研究を受託しているtwelveという企業が
空気と水と再生可能エネルギーから
E-Jetと呼ぶジェット燃料を作る研究をしているそうです。
それは2020年からスタートしていて
実際に燃料を生成すること自体は成功して
今年の夏に米空軍でのテストをクリアして
今年の12月で第1フェーズを終えるとのこと。

何か魔法のようなことを言っているようですが
理屈としては筋は通っています。

液体燃料は、ハイドロカーボン(HC)とも呼ばれてます。
水素(H)と炭素(C)からできてるんですね。

ちなみに
この図でガソリンの構造を示していますが
アルコールよりガソリンが「C」の繋がりが長いように
ガソリンより灯油が
灯油より軽油が
より長い構造を持っていて
長い方が、よりエネルギー密度が高いのです。
ちなみに、ジェット燃料のエネルギー密度は灯油と同等です。

大気には炭素が含まれています。
二酸化炭素という形で。
その割合は1%にも満たないのですが
大気中のCO2を削減するという意味では理想的ですね。
水素は水(H2O)から得られます。

なので、大気からCを
水からHを取り出して
合体させればHCのできあがり。
言うほど簡単なではないでしょうけどね。
もちろんこれを燃やしてもカーボンフリーです。

twelve社のサイトには、二酸化炭素と水から
一酸化炭素と水素を生成してE-Jetを作るとあります。
これを再生可能エネルギーでやると。
さらに、新たな汚染物質は出ないし
トレードオフ(恐らく環境面での)も無いとのこと。

でも、恐らくこのプロセスには
膨大な電力が必要なのではないでしょうか。
もしそうだとすると
その電気をどこから調達するかが問題になるでしょう。

太陽光パネルや風力は向いていないでしょうね。
システムの規模が大きかったり
設置に時間が掛かったり
目立つやり方はダメでしょう。
何せ国防向けシステムなので。

となるとやはり
陸軍が検討している
移動式の小型原子力発電機
これが有望なのかなという気がします。

この技術が将来的に民間に落ちてくる可能性はあるでしょう。
twelve社のサイトを見る限り
民間への技術の適用を
視野に入れているのは明白です。
このような方法で炭化水素を作れるとなると
プラスチックの原料にも
化石燃料を要しないということになります。
構成する主要元素は液体燃料と同じくHとCですから。

でもやはり
ネックになってくるのは
このプロセスに要するエネルギーですよね。

液体燃料を作るのに化石燃料を使っていたら本末転倒でしょうし。
いわゆる再生可能エネルギー-を使うにしても
そのシステムを構成するエネルギー量に対して
生み出されるエネルギーの比率も重要です。
もちろん、生成される燃料のコストも重要。

もし、この技術が化石燃料の代替となるのであれば
多種多様な既存の技術や製品が継続できるので
こういう方向性もありだと思うのですが
どうなることやらお楽しみ。

これがうまくいって
各国で似たようなことが始まると
面白いことになると思います。
追記:いや、でもやっぱりエネルギー収支上成立しない気が…。
身も蓋もないけど。

確か日本でも
藻から燃料を作る研究をしてますよね。
あれ、どうなったのでしょうか。

電気の時代がやってくる 国防編

私はいわゆるミリオタではないし
国防関係の研究もしていませんが
アメリカ陸軍が電動化について検討しているとのことで
ちょっと興味をもちました。

なにせ技術の世界は軍需も民生も
明確な線引きはありませんので
防衛関係の技術は、いずれ民生技術として活かされる可能性はあるし
その逆もあり得ます。
なので、分野を問わず色々と知っておくことも大事だと思っています。

さて、アメリカ陸軍ですが
軍用車両に対しての電動化を決めたわけではなく
あくまで検討をしたとのことです。

アメリカ陸軍の特徴ですが
燃料をJP-8というジェット燃料に一本化して
航空機や戦車などの軍用車両を運用しているのは興味深いですね。

ジェット燃料は、字面を見ると凄そうですが
モノは灯油に近いと思います。
軽油とも遠からずといった感じ。
なので、ディーゼルエンジンの燃料としても使えます。
おそらくジェット機、灯油で飛ぶんじゃないかな。

日本のトラックも灯油で動きます。
税制上違法ですが。
排ガスの煙が白くなって
ストーブの不完全燃焼のような臭いになるので分かります。
たぶんJP-8でも動くでしょうね。
税制上違法ですが。

参考までに、いわゆるレース用のガソリンは
市販のガソリンよりオクタン価が高いのですが
(今は普通のハイオクに一本化されてるのかな?)
さらにエンジンの圧縮比を上げたいなら
アブガスと呼ばれる航空用ガソリンを使います。
これで公道を走ると税制上違法ですが 。

ちなみに、ディーゼル燃料(軽油)は
寒冷地で凍ってしまうことがあるので
凝固点が低い灯油を混ぜると凍結を防げます。
税制上違法ですが
緊急時の手段として知っておいても良いかもしれません。

さて、アメリカ陸軍の話に戻ります。

基本的に、電動化すると
トルクが大きくできてエネルギー効率が良くなります。
その点はメリットですが…

一般的に軍用車両は民生の車両より
多くのエネルギーを搭載します。
たぶん2倍くらい。

となると、問題はエネルギー密度の低いバッテリーを
大量に積まないといけないということで
そうなると大きく重くなっちゃうので
機動性が阻害されてよろしくないようですね。

なんたってバッテリーに対して
ガソリンや軽油(JP-8も)などは
エネルギー密度は100倍くらいありますから。
高性能なリチウムイオンバッテリーでもそんなもんです。

加えて、バッテリーが被弾した場合の安全性も問題だと。
これは民生の自動車も同様です。
被弾とは行かないまでも
交通事故や、路上の異物に対する安全性は重要です。

あとは充電も問題なようです。
充電時間はもちろんですが
充電設備が問題です。

短時間に膨大な電力を必要としますので
ディーゼル発電機などでは間に合わないのでしょうね。
そこで、移動式の原子力発電機を検討したようですが
設備が大きいことに加えて
運用の前後に、それぞれ2~3日の時間が必要になるそうですので
常に移動しながら運用する陸軍には向いていないようです。

ただ、ピュアEVだとこういった問題があるのですが
内燃機関とのハイブリッドなら有望なようですね。

あと、バイオディーゼル燃料も有望なようですが
長期保管すると劣化してしまうのが問題なようです。

軍事技術は民間のビジネスと違って
機能・性能とか運用性とか、ある意味純粋な世界なので
結構参考になります。

色々勉強になりました。

バイクやクルマの未来 技術と情熱編

コロナ禍の影響で
バイクに乗る人が増えているとかいないとか。
増えているなら大変良いことですね。

人気のカテゴリーや車格・排気量も
特定の一つではなく
程よく分散されているような気もします。

乗って楽しんで
いじって楽しんで
色々な楽しみ方があると思いますが
色々な人が色々楽しめば良いと思います。

昔々
私が学生の頃は
80年台の、いわゆるバイクブームで
かなり狂った時代でした。

多くがバイクに乗りましたが
志向は結構画一的で
スピード命(のように見える)がほとんど。
もちろん、レースブームでもありました。

それに比べれば
最近の状況は健全ではないでしょうか。

以前に比べて販売台数は減っていて
各メーカーのラインナップも
かなり絞られたようですが
結構ツボを押さえた構成になっているように見えます。

技術的な進歩も凄いですね。
今やキャブレターではなくFI(燃料噴射)で
小排気量でもABSですし
(これらは法規などが理由でもあるけど)
スロットル・バイ・ワイヤーが増えてきて
クイックシフター装備だったり
トラクションコントロールや
クルーズコントロールなどの制御が効いてたりして。
クルーズコントロールなんて
クルマみたいに前車との車間を保つ
「アダプティブ」の領域に入ってきてますし。

乗り手が色々とやることが多い分
バイクの運転は難しかったり技量の差が出たり
そんなところが面白さでもあって
色々と制御が入ったりすると
面白くなくなっちゃうんじゃないの?
という危惧もありましたが
そんなことはありませんでしたね。

ただ気になるのは
ブラックボックスが増えて
色々と統合されたシステムになったために
以前のような分かりやすさが無くなって
ユーザーが手を入れられる領域が減っているところです。

もう以前のように
ダイナミックに自分の乗り物に手を入れるのは
難しい時代になってしまっています。

もちろん性能や安全性とのトレードオフで
これは仕方ないことではあります。

とはいえ、以前のように素人が手を出しにくくなったことにより
乗り物をいじりながらユーザーが成長して
そのうちのマニアックな一定数が開発側になる
というストーリーにおいて変化が出ることになるとは思います。
果たしてどのような形になるかは分かりませんが。

自動車の開発に携わる人のほとんどは
クルマ好きの人間で構成されていると思います。
色々な「好き」がありますが。

その中でも スポーツカー好きなどのマニアックな人達の熱量による
貢献度は大きいのではないかと思うのですが
どうでしょうか。

彼らにとってのバイクやクルマは
単なる移動の道具ではなく
愛着が持てたり
自己実現のための重要な何かだったりして
大量の熱意を投入する動機になり得ました。

まぁ、こんなのは単なる思い込みかもしれず
これからもクルマを含めた乗り物は
どんどん進化・発展して行くのだとは思いますし
その方向性や勢いがどうなるかは大変興味深いところです。

ただ、その世界がこれからも「熱」を感じさせてくれる存在で
あり続けてくれることを願ってます。

世界中でFormula SAEを頑張っている若者達がいるので
逆に期待できる状態なのかもしれませんけどね。