2019年12月31日(火) 乗車3日目
朝はEromanga Royal Hotelのランチボックス。
大きなサンドイッチが4ピース入っていたので半分食べて9時頃出発。
今日のルートは、あえて遠回りをしてアウトバックをしばらく走行した後に、南下してコバー(Cobar)を目指す。走行距離は900km程度。
待望のアウトバックの走行は、恐らく今回の全ルート中で最もリスクの高いエリア。
暑いうえに、ろくに人も通らないし、恐らく携帯の電波も届かないだろう。
何かあったら終わりだ。
気温は44〜45度。
激しく乾燥している。
道の幅は、車が何とかすれ違える程度で、制限速度は100km/h。
赤い荒野、高い木はほとんど無い。
途中にあったレストエリアには、屋根とベンチ、バイオトイレしか無い。
ここで休憩したらどんな感じなのかな、と出発前からGoogleマップを見て思っていたので停まってみたが、暑すぎてどうにもならないので、すぐ出発。
ここまで何も無い。車は1時間に1台すれ違えば多い方。
その車は、妙に車高が高いトラック。そう、四輪駆動のトラックだ。
このあたりで舗装路外に出てしまった場合、砂地でスタックすると面倒なことに…ことによっては命取りになる可能性があるということだろう。
こういうのは、やはり現地に来ないと実感を持って理解できないな。
途中、小雨が少々降るが全く濡れない。
まさに焼け石に水。
前方の路上に何ががある…と思ったら、赤茶けた地面と似た色の牛が道路にたたずんでいた。
直前に迫った時に牛も驚いたのか走って逃げ出す。
しかし、そもそもなぜこんな何も無い場所に牛がいるのか。
柵の無い牧場、いわゆるオープン・ランチなのだろうが、水や餌はどうしているのか。
それにしても、もし自動車が電動化したら、こんなところに気安く立ち入ることができるのだろうか。
暑いからってエアコン使うと電力消費は激しいし、アップダウンが無いから回生充電もできない。そもそも充電設備はどうするのか?
大して需要が無くて収益が小さい(電気自動車の電気代は安いから)インフラを作れるのか?
点在するロードハウスや宿に充電設備を作れば何とかなりそうな気もするが、そもそも町同士の距離があまりにも遠かったりする場合、航続距離の短い車ではたどり着けないだろう。
恐らく、電動バイクでは今回のようなことはできないだろうな。
でも、パワフルなオーストラリア人なら何とかしてしまいそうな気がするが、大きな課題ではあるだろう。
そんなことを走りながら考えていた。
エロマンガから300kmのところにある小さな町、サーゴミンダ(Thargomindah)で小休止。少々早いが念のため給油。
給油後に子供が
「いいバイクだねー!どこから来たのー!?」
とやって来た。小学校低学年くらいかな。
エロマンガには学校の遠足で行くそうだ。化石を取りに行ったとのこと。
「恐竜の化石は見つかったか?」
「恐竜のは見つからなかったよー!」
町から出るとことで女性警官が一人で飲酒検問をやっていた。
真っ昼間になぜ?そういう土地なのか?
サーゴミンダから130km走ったら次の町、ユーロ(Eulo)。オーストラリアでユーロ。スペルが違うけど。
あまりに暑いのでl小さな雑貨屋で昼休憩。
「どこまで行くの?」
「コバー(Cobar)だよ」
「遠いわね。気をつけて、良い旅を」
「ありがとう。あなたも良い1日を」
そう、ここから今日の目的地までは、まだ500km以上ある。
店の前にあったバルコニーでエロマンガ・ロイヤルホテルで作ってもらったサンドイッチで昼食。
水分は店で買ったジンジャービアで補給。
ここで買った水がスパークリングだったことを後に知る。ダメではないが「ちょっと違う」感じ。
ここまでクイーンズランド州(QL)を走ってきて、ニューサウスウエールズ州(NSW)に入る。
サマータイムを導入している州とそうでない州がある関係で時計の針が1時間進む。
BMWはGPSを搭載していて、時計は州境を越えると勝手に調整される。
カナマラ(Cunnamulla)を過ぎてA71が南に向きを変えたあたりのレストエリアで休憩。
暑すぎる。
どうやら熱中症の気配。このまま走り続けるのは危険な気がしてきた。
水分補給してリンゴを囓りながら考える。
なんとか体を冷やさないと。
この時にネックウォーマーを湿らせて使うことを思いつく。
ビショビショに湿らせて首に巻いておけば気化熱で数十分は血管を冷却してくれる。
首は薄い皮膚のすぐ下に重要な血管が通っているのでよく冷えるのだ。
停まる度にこれを繰り返せば乗り切れそうだ。
NSWは道路脇にヤギがたくさんいる。かつての入植者が持ち込んだものが野生化して繁殖しているそうだ。
そういえば、ラクダも野生化しているらしい。まだ見たことはないけど。
道路横には、雨が降ると冠水する箇所を示す看板や水深表示の柱状のインジケーターがそこら中に立っている。
内陸部は高低差が少ないので、大雨が降ると水の逃げ場がなく、すぐに道が水没しまうのだろう。
時差が無ければ7時だけど、現地時間の8時頃に、この日の目的地であるコバーまで走りきってモーテルにチェックイン。
45度くらいの気温で900kmを10時間。無事に走り切れた。
チェックインの時にガラガラ声になっていて自分でも驚いた。
この日は900kmも走って信号はひとつも無かった。
いや、そもそもブリスベンを出て昼食を摂った町の後は信号を見た記憶が無い。
きっとこの先も無いのだろうな。
そして、バイクが走っているのも1度も見ていない。
恐らく、こんな環境でバイクに乗るバカはいないのだろう。
夕食はモーテル併設のレストランでステーキ。
食事中にオーナーと色々話したが、この辺は3年間雨が降ってないそうだ。
じゃぁ、3歳の子供は雨を知らないのか!
あとはカンガルーの習性とか。
ヤツらは夜行性。
車が来る直前まで道の脇に立っていて、急に飛び込んでくるそうだ。
遠くからピョンピョンやってくるのではないのだな。
「間抜けなヤローなんだよ!」
とオーナー。
きっとカンガルーを轢いたことがあるんだな。
対して、この辺でよく見かける山羊は車の前に飛び出してくることは無いそうだ。
それは安心。
数年前に、オーストラリア大陸を自転車で西から東に横断した日本人がここに泊まったという話もしてくれた。
クレイジーだなという意見はオーナーと一致。
食後に向かいのペトロールステーションで水を購入。
レジでクレジットカードが通らなくて困っていたら、後ろにいた女性が
「私が払うわ」
ありがとう。申し訳ない。
オレも旅人に優しくするよ。
あと、帰国したらオーストラリアの赤十字に寄付をしよう。
ブッシュファイアでみんな困っているからね。
大晦日だったので、弟に電話して姪2人と話をした。
外の通りでは酔っ払い達が大越で合唱してる。Queenだ。
誰が永遠の命を欲するのか
この日は結構な距離を走ったが、これが効いて翌日からの走行距離が稼げなくなった気がする。
代償は払ったが、良い経験はできた。
900km走行 Cobar Cober City Motel泊