技術と心

昨年亡くなられた京セラ創業者の稲盛和夫さんといえば
生前「利他の心」の大切さを説いていました。

もうずいぶん前のことですが
経営の神様のような稲盛さんの著書を読んでいて
「これだ!」
と思いました。

このワードで
仕事に関するモヤモヤがスッキリしたことを思い出します。

利他心って物事がうまくいく原理原則ですから。

会社の経営のみならず
我々皆が心がければ
あらゆることがうまくいくに決まっています。

「自分が食うために」やっている利己的な仕事は
うまくいかないに決まっているでしょう。

そんなことは
その仕事の成果を受け取る側になって考えてみれば
当たり前の話なのです。

そんな当たり前のことを
仕事をする側も
その成果を受け取る側も
気付いていなかったりするのです。

ストレスが溜まる職場は
大抵が利己的な価値観が充満していたりするものです。
自己の利益とか保身とか。

技術を学ぶ大学で言うなら
技術は他を利するためにある
こう考えて良いと思います。

これまた当然のことです。
人の利とならない
つまり人の役に立たない技術なんて
存在価値は無いですから。

こんな先行きの読めない時代になると
不安や恐怖から
ついつい自己の保身を動機とした
考え方や行動を取りがちになるかもしれません。

でも、人は自分で自分を守れません。
自分を守るためのリソースは
自分では作れないのです。

社会で生きるとはそういうことでしょう。

仮に
本気で自分を守るために
独力で原爆を作ったら破滅しますし

自分が最大限に楽で儲かるような仕事をしょうとしたら
うまくいかないことは目に見えているでしょう。

利他心で行動するからこそ
結果として価値が認められたりするわけですよね。

では、教育機関はどうあるべきか。

まずはお勉強をして、後に心を…
というアプローチはたぶん難しいのではないか
と思っています。

本当は
まずは心を…
が理想なのでしょうけど
今やそういうご時世ではないようです。
多くが目に見えるものしか信じませんから。

でも、その「目に見えるもの」は
心が作り出しているのですけどね。

なので夢工房では
チャレンジを通して
心と技術を同時に学ぶようにしたいのです。

それこそがチャレンジかもしれませんが。

最近の車は大変です

年の瀬は何をやっているかというと
頼まれもののハイエースの改修作業だったりします。

具体的には
サイドドアのオートクローザー追加
テールゲートの開閉電動化
車内へのFFヒーター設置
バックカメラ取り付け
という感じなのですが
いかんせん頼まれものなので
外観は綺麗に仕上げたいわけで
一番厄介なのは電線の処理ですね。

どこから電源を取るとか
見えないところを配索するとか。

そうなると内装剥がしまくりなのですが
車が大きいだけに
なかなか大変な作業だったりします。

この作業、車屋さんに頼んだら
やってくれなかったそうなのですが
うん。分かる。
これは大変だ。

でもまぁ、これはこれでかなり勉強になるのです。
ウチは曲がりなりにも自動車工学研究室ですからね。
量産車のお勉強です。

各種部品の取り付けや仕上げとか
(合わせ建て付けといいます)
部品そのものの形状や素材とか
自動車技術は日進月歩ですから。

アフターマーケットの部品のクオリティや
機能なんかも大変参考になりますし。

前職では、自動車の各部位を
一通り色々やらせてもらいましたので
全体的にそれなりに理解はできるのですが
今回の改修作業で一番インパクトがあったのは
電装部品です。

とにかく回路数が凄まじく増大しています。
ワイヤーハーネス(電線)の総量は凄い事になっていますね。

現役で設計をやっているときは
場合によっては試作車1台分のワイヤーハーネスを
全て一人で作ったりした事もありましたが…
これは無理だなぁ。

ちなみに、その時の車は
モーターショーの出品車で
コンセプトカーでした。

ショーカーって、以外とシンプルな電装だったりするんですよ。
量産車みたいに余計なものは付いてませんから。
エアコンとかオーディオとかセキュリティとか要りませんし。

自動車の電装部品のサプライヤーに勤めている卒業生が
「最近じゃ銅のコストがエライことになってます」
と言っていましたが
うん、それは分かる。

世の中何でも電動化するのも結構ですが
電線作るにも資源やエネルギーが要るのですよ。

あと、作業をしていて思ったのは
やたらと制御が増えている関係上
何かすると初期化とか設定とかが必要になったりして
なかなか大変です。

個人的にはシンプルな車が好きなんです。
アシストなし、制御なしで
自分でどこでも手を入れられるような。

イギリスのバックヤードビルダーが組むような
スーパーセブンとかジネッタとか。
知ってますか?

そういう車、もう現れないでしょうね。

人材育成について チャレンジャーになるには

さて、夢工房においては
チャレンジャーになるべし
というところに行き着くわけなのですが

チャレンジのレベルや内容はもちろん
志向も役割も人それぞれなので
皆が同じようなことをやるわけではありません。

ただし、プロジェクトチームとしては
同じ方向を向いている必要があります。

チームとしてのビジョンやゴールは一つ
ということです。

それがちゃんと腹落ちしていないと
チャレンジは難しいでしょうし
これこそが学生にとって難しいことの一つかと思います。

そもそも学生は
皆でゴールを共有して力を合わせる
なんて経験が十分に無かったりするわけで
その辺を考えると
チームビルディングは重要です。

加えて
そもそも個人レベルのメンタリティはどうなんだ?
なんてこともあるわけで

知識だのスキルだのと言う前に
「やる」と「やらされる」の違いを分かってるかい?
とか

考え方が逆」シリーズみたいな
みたいな話にもなってくるわけです。

そういう意味では、チームで仕事をする上で
大事なことを学ぶ機会は山ほどあるし
ヘタすると在学中にはピンとこないまま
卒業しちゃうなんてことも無きにしもあらず。

競争力とかチームワークという観点では
やはり競技スポーツ
特にチームスポーツの経験者は
技術の世界でも力を発揮する例が多いですね。
まぁ、当然ですが。

で、どうしたらチャレンジャーになれるのか
という話なのですが

正直なところ
それが分かったら苦労しません。

ただ、半ば常識として言えることはあります。

チャレンジャーは基本的に
自発性とか自律性とか
「自分がやるんだ!」
という意識を持っている必要があるでしょう。
当たり前ですね。

そう考えると
やはり幼少期からの環境の影響は大きいですね。
親が何でもやってあげるような環境では
チャレンジャーにはなれないでしょう。
だって、そんな環境ではチャレンジする必要無いですから。

あとは
安全・安心志向を求めるとか
「正解」を求めるとか
困難を楽しめないとか

そういう傾向が強くて
価値観のスイッチができなかったりすると
チャレンジは難しいでしょうね。

それが何とかならんのか?
というところなんですが

何とかなることもあれば
何ともならないこともあります。

その辺は外力で何とかする部分ではなく
本人が何を本気で求めているのかという話です。

求めよさらば与えられん

まさにその通り。