今回は走行する上で考慮が必要な環境や、走行そのもの関係する情報を挙げてみましょう。
環境について
場所や季節によっても変わってくるとは思いますが、基本的に一日の温度差は大きく、湿度は低いです。そして日差しは強い。
特に南部の方は、4 seasons in 1 day と言うくらい、天気や気温の変化が激しかったりもします。早朝は気温10度くらいで、日中は40度近くとか。そんな中で、雨が降ったと思ったら風が吹いて急に晴れたり…かつてはそういう経験もしました。
南半球ですので、季節は日本とは反対です。太陽は北方から照らしてきます。
北の赤道に近いエリアでは、夏は雨期、冬は乾期です。
南方のエリアでも、夏のアウトバックでの気温は45度程度にはなります。平地で冬に雪が降ることはあまりないようです。
大陸ですので、移動に伴い気候は相応に、ダイナミックに変化します。
晴れれば日差しは強いです。
かつてはオゾンホールによる紫外線の影響が深刻で、皮膚がんや目への影響も懸念されていました。近年、オゾンホールは縮小したとは聞きますが、今も基本的には変わらないのかもしれません。
湿度が低いので、あまり汗をかかないというか、すぐに蒸発してしまいますので、不快感はあまりなかったりします。ですが体内の水分は確実に失われていきます。季節にかかわらず移動中は常に水を持っていた方が良いですね。水分補給は大事です。
夏場に気温45度の環境を連続走行して身の危険を感じたことがあります。いかにして体温を下げるかというのが課題となるのですが、その時はネックウオーマーを湿らせて首に巻いて、走行風による気化熱で首の血管を冷やすという手段で難を逃れました。
万一、身動きが取れなくなった際に日光を遮るために、サーマルブランケットと呼ばれるアルミ蒸着シートを持っていくのも良いと思います。軽くてコンパクトですので。
万一怪我をした場合、半径100km以内に病院が無いなんてのはザラですので、通常なら助かるものも助からなかったりします。携帯電話は町が近くないと役に立ちません。
毒虫、毒蛇に咬まれた時のために、ポイズンリムーバーと呼ばれる吸引器を持っておくのも良いかもしれません。これも軽くてコンパクトですので。
無用なリスクを取らないこと、何かあった時の準備を最低限しておくことは重要です。
走行について
道はずっとこんな感じです。木が増えたり減ったり、蟻塚が現れたりしますが。
ヴィクトリア州、サウスオーストラリア州は上限110km/hでした。
ノーザンテリトリー州は130km/hです。
日本のように、「速度表示が無いところは60km/hね」と言うことはなく、大抵は表示されています。
別に上限速度で走らなければいけないわけではないので、マイペースで行きましょう。
ノーザンテリトリーでも100km/h程度の速度で巡航しているクルマはいます。
基本的には、この法定速度程度で走り続けることになりますが、町や民家、工事現場などが近づくと、80、60、50…と速度表示が現れて徐々に低速走行となります。それらから離れる場合も同様に徐々に速度が上がります。
減速していく場合は、意外とルーズな速度で走る車が多いです。10km/h弱のオーバースピードとか。日本のように20km/hオーバーのようなことは無いですが。
荒野に忽然と現れるロードハウスの前は80km/h程度であることが多いです。なので、そこからの出発時はいきなり80km/hです。施設から出て急加速をする必要は無いのですが、接近してくるクルマはその速度で走っていますので、目の前に出てしまうと危険です。
時折現れる町や集落にあるスクールゾーンでは、さらに減速を求められる場合があります。時間規制があったりそうで無かったりしますが、多くの国ではスクールゾーンでの減速については厳密だったりすることが多く、オーストラリアも同様です。弱者保護ですね。道路の標示に従いましょう。大抵は40km/h以下です。
基本的に片側一車線で、破線の中央線であれば追い越しが可能ですが、時折、片側が二車線になった追い越しエリアがあります。これは、日本の一般道や高速道路で見かける譲り車線のように、現在走行中の車線の左に追加の車線が現れるのではありません。このようなやり方だと、わざわざ左に進路変更する人はあまりいませんよね。
日本の地方にある片側一車線の高速道路に部分的に設けられている追い越し区間が、オーストラリアの追い越しエリアに似たスタイルです。走行中の車線が左に逸れて、その右側に追い越し車線が現れる。この車線は「追い越し以外での使用は禁止」と標識があり、追い越しが完了すれば左の走行車線に戻る必要がある。皆このルールを守っており、マナーは良いです。
なお、この走行車線は、追い越しエリアの末端では右にウインカーを出して車線変更して一車線に戻る。つまり、追い越しエリアの始まりは走行車線を自然と走ることになるが、終わりでは追い越し車線が走行車線となる感じです。追い越し車線が左の走行車線に合流する必要がある日本とは異なりますね。
なお、スチュアートハイウェイではダーウィンに限られますが、片側に複数車線があるハイウェイで追い越しをする際も過剰なオーバースピードで追い越すケースは稀で、早めに車線変更をして、ゆっくりと追い越し、ゆっくりと元の車線に戻る、といった感じ。
シティの一般道では、比較的制限速度を守っている印象です。
こんなハイウェイでも色んな人がいます。
町から数百キロも離れているのに自転車で走っている人
同じく、ベビーカーのような手押し車に荷物を積んで歩いている人
基本的に見通しは良いのですが、片側一車線で道幅が十分に広いわけでは無いので、気を付けたり思いやったりは必要です。
ハイウェイを走っている時はヒマです。なので、すれ違うクルマもバイクも手を挙げて挨拶をしています。全員では無いですが、多くが。だってヒマだから。
対向車がパッシングをしてきたので、速度取り締まりでもやっているのかな?と思ったら…
事故だったり
オーバーサイズが来たり
路上に牛がいたり
何があるか分かりません。色んな意味で。
広いオーストラリアでは、スチュアートハイウェイに限らず、単調な道が多いので居眠り運転による事故が多いのでしょう。中央分離帯が無く、片側一車線で速度が時速100キロ以上なので、対向車線に出て衝突したら致命的です。道路脇には「眠かったら、ちょっと休んで寝ただけで超元気になるぞ!」とか「生きて到着しよう!」とか、居眠り運転防止のための看板が沢山あります。
疲れたり眠くなったらレストエリアで休みましょう。ただし、日本のパーキングエリアやサービスエリアのような施設を期待してはいけません。
最小限なら、ただの未舗装の退避場所です。
最大限なら、屋根とイスとトイレがあったりします。ただし未舗装だったりしますが。
レストエリアの存在は、下の画像のような青い看板で示されています。
左上の、木の下にテーブルがある図がレストエリアを示しています。右上にあるのは、トラックの絵に斜線が引いてあり「トラックは入っちゃダメよ」の意味。下には、「500m先の左側にありますよ」です。
その手前にある緑の看板は、次の町までの距離を表しています。
この場合の「TT」は、Ti Treeという町。そこまで100km。
さらに手前にある白い棒は、道が冠水した時に路肩を示すインジケータです。このほかにも水深を示す目盛りが切られたインジケータもあります。
気温が高く、日射が強い環境での走行は、休憩するにもなかなか難しいものがあります。
レストエリアに東屋があって日陰があっても、気温が高い場合はあまり快適ではありません。ハエが沢山いたりしますし。走っていた方がマシだったりします。
なので、一体どうやって休んだら良いものやら…となります。
なので正直なところ、バイクで停まったところで大した休憩はできません。せいぜい水分補給とか、そんな程度になることがほとんどです。でも、そんな小さな休憩が良い結果をもたらすことになるのも事実です。
なぜかノーザンテリトリー州のレストエリアは設備が充実しているところが多くて、公園のようになっていたりキャンプができるところがあったりします。サウスオーストラリア州とは大違いです。
下はノーザンテリトリーのレストエリアの例。ここは小規模な部類ですが、サウスオーストラリアに比べればずっと設備が整っています。
奥にトイレがあって手前に東屋、さらに手前に円筒形の大きな水タンク。
水タンクとかゴミ箱が紫色なのはノーザンテリトリー独特なのではないかな。夕焼けがそんな色なのです。ヴィクトリアとサウスオーストラリアのゴミ箱は緑色です。
夕焼けが紫色なんて、そんなはずないだろうって?
いやいや…
ちゃんと休むならロードハウスが良いです。休んだついでに走りたくなくなったら「今夜の部屋ある?」と聞けば良いのです。
スチュアートハイウェイであれば、砂漠地帯のように、水か燃料のいずれかが無くなったら死ぬ…というようなことはありませんが、ガス欠や休憩や故障などで路肩に停止すると、目の前を時速110キロのクルマが行き交っているというスリリングな状況になるということは知っておいた方が良いでしょう。なのでもちろん、むやみに停車して写真を撮るなどはお勧めできません。
どうしても路肩に停まる必要がある場合は速度に注意しましょう。巡航速度が高いため、速度感覚が麻痺している場合があります。
十分な減速無しで路肩に入り込むと、地面がフカフカになっていた場合は、急減速して安定を失ったり滑ったりして危険です。
これはロードハウスなどに入る際も同様で、曲がりきれなかったりします。
あと、むやみに変な場所でキャンプするのはやめた方が良いようです。
レストエリアで会った自転車で旅をしているおじさんは、キャンパーやバイカーの暴漢に何度も襲われたそうです。ナイフで切りつけられたり、ハンマーで殴られたり。その時の傷跡も見せてくれました。それでも旅をやめようとしないのは凄いです。
オーストラリアは世界的に見ても治安が良く、フレンドリーな人も多く、ワイルドで美しく、楽しい国です。ですが、日本ではないことを忘れてはいけません。
基本的には安全運転で。海外での走行そのものが冒険です。無用なリスクを追加しないようにしましょう。
でもね、正直に言うと…
生きて帰ってくるなら、何をやって何が起きようと、それは勉強になる
とも思っています。
その経験を未来に向けてどう使うかが一番の課題です。