こうすればうまくいく

前回の投稿では未来のエンジニア像について
語ろうとしましたが
結局、必要な資質は今と変わらないんじゃないか
という結論になってしまいました。
なので
書き上げたそばからタイトルに
”も”
を書き加えたというのは
ここだけの秘密。

でもまぁ、求められる本質的なことは変わらなくて
そういう人たちが
新しい時代をつくっていくのだろうな
と思っています。

これはあくまで資質の話であって
どんな仕事をしているのか
つまり手段の話ではないですのでお間違えなく。

さて
世の中が変わるという予感は
今までも何度もあった話です。
それがどの程度の変化だったかはさておき。

近いところでは
「これからはAIだからプログラムだ!」
「これからは自動運転だから制御だ!」
とかね。

で、そういうのを学んで
それを必要とする会社に就職して活躍!

って、そんなにうまくいくのでしょうか。
うまくいった話を聞いた試しがない
気がするのですけど
皆さんどうですか?

始めてみて面白さを見いだして
伸びることもあるとは思います。
それは良いと思います。
健全です。
そうやって頑張っている中で
新しい価値を創造していく
ことがあるかもしれません。

でも
流行に乗っかって
もしくは
人に言われてやったことで
多くが成功する
なんてことはそうそうないですよ。

うまくいかんだろうな
と思うにはいくつか理由があります

まず一つめ

そもそも動機が不健全だだから

「これからは○○!」
の後に何が続いていたか。
心の声で。

「これからは○○!」
…が儲かる!
とか
…が楽できる!
とかだったりすると
大抵はうまくいかないことが多いでしょう。

理由は簡単で
儲かろうが楽できようが
それは自分自身にとっての利益を
直接求めているに過ぎないからです。
そんなの誰も喜ばないでしょ。
自分が得することばかり考えていても
仕事としては成立しないですよね。

では次
二つめ

自分が好きなことではないから

仕事としてやっていれば
いや
それを学んでいる最中でも
かならず壁に当たります。

好きなことでもないのに
一所懸命やって
その壁を乗り越えられるんですか?

そして
三つめ

そんな未来が来る保証はない

最近の小学生って
授業でプログラム勉強してるんですか?
知らないけど。

まぁやってたとしましょう。

で、彼らが社会に出るときに
ひょっとしたら
ある言語によるプログラムなんて
専門的なことを知らなくても
プログラムできちゃうツールが
開発されているかもしれないし
そもそも
そんなにたくさんプログラマーが
必要な世の中が来るんでしょうか。

みんな同じようなスキルを身に付けて
ドバドバ量産するような世の中は
もうすでに終わっちゃってると思うのですが。

これからはこんな世の中が来るぞ!
と言った人は責任取ってくれません。
こんなこと言ってる私も取れませんが(笑)

結局何が言いたいかというと
好きなことを一所懸命やりましょうよ!
ってことですよ。

そうすれば
困難に遭遇しても
なかなか諦めがつかなくて
頑張れるでしょう?
で、きっと伸びるし
みんなが喜んでくれる成果を出せますよ。

本当だったら
学生のうちに頑張って
やった成果をアウトプットして
それを見た人が喜んで
やってる方もさらに頑張る
というループができると
色んなことがどんどん良くなっていく
と思うのです。

仮に
「もう自動車の世の中は終わりだ」
なんてことになっちゃっても
自動車で頑張ってたら
もし自動車の世の中が終わっちゃっても
何でもできるのではないかな。

終戦後に飛行機の技術者達が
自動車の世の中の基礎を築いたように。

これから”も”必要とされるエンジニア像

この先、どのようなエンジニアが
世の中から必要とされるのでしょうか。
そのために学生はどのように成長すべきでしょうか。

工科系の大学で教員という仕事をやっている限り
こういうことを考えるのは重要なことです。
世から求められる人材を育成するのが仕事ですから。

端的に言ってしまうと
エンジニアは
新しい価値を作り出してナンボですよね。
そのための資質は基本的に重要です。
これは時代が変わっても普遍でしょう。

私は良いエンジニア
であったかどうかは分かりませんが
幸いにして素晴らしいエンジニア達に
囲まれて成長する運には恵まれました。
これには本当に自分でもビックリです。

自身の実力よりも人間関係に
恵まれていたので今がある
と思っています。

いろんな人がいましたが
皆さん共通していたのは
何かしらの明るさとか
強さを持っていたことだと思います。
あとはスピードですね。

「何かしらの」と表現したのは
「同じような」ではないからです。

皆さん個性的でした。
他と同化したがるようなところは
無かったと思います。
なので今でも「普通は」と
良く口にする人に接すると
違和感を感じてしまうのです。

「そこに答えは無いだろ」
と思ってしまう。

一口に明るさといっても色々ありますよね。
一見して明るい性格の人や
真面目そうなのだけど
どこか面白さを秘めたような人。
共通していたのは前向きな姿勢
だったのかもしれません。

強さは、力強いとか
ひたむきで粘り強いとか。
心の強さは重要です。
だって開発って必ず失敗したり
行き詰まったりしますからね。
そのときにどうするか
そこからどうするか
が勝負です。

スピードに関しては言うまでもありません。
前に進まずに考え込んでしまう人に
仕事ができる人はいませんでした。
これは当然ですね。
即断即決!即行動!

すぐに動けるということは
頭の回転が速い場合もありますが
自分の軸を持っているので
直感的に判断できるケースも
多いのではないかと思います。
そういう人は日頃から
色々考えているのでしょうね。

すぐに動くのは
やはり勇気でしょう。

こういった資質は生まれながらの
ものかどうかは知りません。
でも、後天的に身につけられるはずです。

自分が
そうなりたい
と願えば。

すべてではなくても
何かに特化しても良いと思います。
それは自分の戦略次第。

こういうのって外部から
「こうしろ」
と言ったところで
そうなるものではないですね。
もしそうなるのであれば
授業を受けたり本を読めば良いわけでしょう?

でも、誰でも受けられる授業や
誰でも読める本を読んだところで
皆と同じになるだけであって
そこに固有の価値は無いでしょう。

と、こういうことを言うと
よく揚げ足を取るように誤解されるのですが
なにも勉強する必要なんか無い
なんて言うつもりはありませんからね。

やはり重要なものは
色々やる経験の中から
身に付けるものなのでしょう。
これこそが経験知の一つなのかもしれません。

夢工房の連中は
レーシングカーや惑星探査機をつくる経験の中から
何かしら身に付けてくれるといいなぁ。

他の多くの学生達にも
色々なことに挑戦してほしい。

と、こんなことを昔を思い出しながら書いてみました。

海外遠征のお話

このところ12月は
ほぼ毎年オーストラリアに行ってました。
Formula SAEの大会に参加するためです。
もちろん今年はコロナ禍のために遠征は中止です。

12月のオーストラリアは真夏です。
なので、結構長いこと12月の3分の1は
日本の寒さから逃れられてたんですね。
寒いのが苦手な人間としてはラッキーでした。

オーストラリアで毎年お世話になっている
皆さんに会えないのは寂しいですね。
遠征の拠点にしていたメルボルンは
結構厳しい規制が敷かれているようで
あまり自由に移動できないような話も聞きます。
みんな元気でやってるかな。

2019 Formula SAE Australasia

遠征は旅行ではないので
お気楽で楽しいものではないです。
正直かなりしんどいです。
エキサイティングな日々ではありますが。

私は長いことあちこちの遠征に付き合ってきたので
慣れてるといえば慣れてるので良いですが
恐らく学生達にとっては
いろいろな感情がごちゃ混ぜになった
凄い体験なのだと思います。

遠征に行っているおよそ10日間は
心も体も早朝から深夜までフルパワー
アドレナリン出まくりです。

では、そんな遠征は嫌なのかと言われれば
決してそんなことはありません。
私も学生達も。

大変なことの裏側には
常にやりがいとか充実感とかがありますからね。

大変な思いをすればするだけ得られるのもは大きいです。
彼らの成長ぶりも遠征の前後では見違えるようです。
本人達は気付いていないかもしれませんが(笑)

異なる文化の地で
どうしたら良いか分からないことの連続で
それらが一々避けて通れないことです。
何が何でもやるしかない。

とはいえ
語学が苦手な学生でも
普段は消極的な学生でも
いざとなったらやるもんです。
大抵は何とかしちゃう。
これには感心してしまいます。

例えば
大会中に部品が壊れてスペアが無い。
仕方ないので手書きで図面描いて
近所の工場に飛び込んで作ってもらう
とかね。
しかもタダでやってもらうとか(笑)

現地の学生と一緒に
バイクの解体屋さんを探して
スペアパーツを探して買ってくるとか。

重要な部品を日本から持ってくるのを忘れて
現地で専門業者を探して
ゼロから作ってもらうとか
そもそも忘れんなよ!って話なんですが
それでも、その状況を期限内になんかすることに
意義があるのです。

他にも
「おいおいマジかー!」
っていうような
凄いことをやってのけることもあります。

こんな遠征を経験した学生達は
得体の知れない自信を身につけます。
天狗になるという意味ではないですよ。
やればなんとかなるって実感するんでしょうね。
その感覚を体で習得する感じかな。

遠征が終わるたびに
「もっとみんながこういうことすれば良いのにな」
と思います。
Formula SAEとか惑星探査機CanSatの遠征に限らず。

でも、みんなは無理だな。
大変だもん。

こんな凄い経験をさせてくれている
大学や支援者の皆さんには感謝することしきりです。
学生達は、いつかこの恩を返せるようにと
日々頑張っています。

明日からはオンラインでのオーストラリア大会が
スタートします。
授業やら何やらで
準備が十分できなかったようにも見えるけど
ベストを尽くしてもらいましょう。