時間軸付きの未来の地図

伝え方って難しいです。

今すべきことを頑張ってやるのは重要です。
でも、先が見られていないと
今どのように何をすべきかというのは決められません。

頑張っている学生達に
「こう考えるんだよ」
というのを伝えたりするのですが
そもそもそれがうまく伝わっているのか
ということはなかなか分からないものなのです。

「伝えた」
と思ったことが
形になってきてはじめて
「あぁ、伝わってなかったか…」
なんてことが分かったりします。

でも良いんです。
伝わってないことが分かったことは収穫です。

とか言いつつ
うまく伝えられなかったのは申し訳ない限り
次はもっとうまくやろう!
と思うのです。

コンペティションをやるのなら
それで勝ちたいのなら
どうすれば勝てるか
から逆算して
やるべきことを抽出して準備します。

そういう考え方や、やり方を
自分の経験から伝えるわけです。

レースとか開発の実体験から
「こう考えるんだよ」
を伝えます。

言ってみれば
時間軸が付いた未来の地図
のようなものを考えるということかな。
これがうまく伝えられなかったのですよ。

レースで勝ちたいと思ったら
そのために必要なことを準備します。

当たり前ですが
レースが想像できていないと
現場を想像できていないと
そこで成果を出すのは無理です。

想像もできていないことは
やるだけでも精一杯になる
そんなんじゃ勝つ以前に
まともに走れればラッキー
ということになります。

決勝の前には何をすべきか?
予選では?
フリー走行では?
コースに向かう道中では?

その時にどうなっている必要があるか
そのために必要なこと
すべきことを抽出して準備します。

でも、実際は何が起きるか分からないわけで
それが想定外の事象、トラブルです。
あらゆるトラブルを想定した準備できません。

なので
「これ以上のトラブルが起きたらお終い!」
という一線を決めて
その領域内での準備ということになります。
で、理想から逆算していく。

そんなことを考えていると
頭の中に地図ができます。
もちろん「いつまでに?」がありますので
時間軸が付きます。

この地図の中に
ボンヤリした景色が無ければ完成。

これでトラブルが起きても決してパニックにはならず
淡々とベストを尽くしていける準備が整います。

もちろん
こういうイメージは人それぞれでしょうね。

元世界GPレーサーの上田昇さんは
レース当日に何をどのように準備するかも含めて
勝つために必要なこと全てを決めておくそうです。
それこそ、ブーツはどちらの足から履くか
なんてことも全て決めておいて、その通りにやる
と言ってました。

だからやることに全く迷いが無く
ベストが尽くせるのでしょうね。

想像もしていないことに対して
ベストが尽くせるはずはありません。
「やっつけ」になるのがオチです。

ただ、こういったことを考えるのは当たり前だと思うのです。

…なんてことを思った時点でダメなんですよ!
指導者としては。

当たり前じゃ無いんです。
だって彼らはビギナーなんだから。
そもそもが普通の学生なんだから。

そりゃ最初からそういうのができる学生も中にはいます。
でも、ごく少数です。
それが標準じゃないんです。

なーんてことを
やっと気付いたりする今日この頃。

中にはそういう想像をしたがらない者もいますね。

彼らはなぜ未来を想像しないのか?
これは大変興味深いところで
ひょっとしたら
その原因の探求をする必要があるのかもしれません。

しかし、そんなことをやっている暇があったら
未来のためのことをやるべきです。
そういうのは
やっていればそのうち分かるかもしれないし
専門家に任せておくのが良いのかもしれません。

我々は結局、勝てれば良いのだから。
時間がもったいない。
前に進もう!

ヒーロー達

たまにふと思い出すことがあります。
子供の頃のヒーロー達。

なぜか仮面ライダーとかウルトラマンとかではありませんでした。

イーブル・ニーブル((Evel Knievel)
イーベル・クニーベルって感じの発音が本当なのかな。
テレビでは、イーブル・クニーブルって紹介されていたはず。

伝説的なアメリカのスタントライダーで、たまにテレビでこの人のチャレンジをやってたんですが、何だかよく分からないながらも食い入るように見ていたのはハッキリ覚えています。

何台も車を並べた上をジャンプ台を使って飛び越えるとかのスタントが有名です。
今でも記憶に残っているのはどこかの峡谷を飛び越えるってヤツです。
ずっとそれはグランドキャニオンだと思っていたのですが、ちょっと調べてみたところ、どうやら違ったようです。

その頃の私は小学生。
車やバイクが好きで好きでしょうがない…ということはありませんでした。

恐らく同じ頃
やはりテレビでレースを見てました。
富士スピードウェイのF2だったのかな。

カッコいいなと思ってたのは、星野一義さん。
マシンもカッコよかったけど、レース運びが印象に残ってます。
たまたま見ていたレースがそうだったのかもしれないけど、ドライのレースだと、惜しいところで2位とかが多かった気がします。でも、雨のレースがめっぽう強い。
あれはカッコよかったなぁ。

そんなふうにたまにレースをテレビで見ていても、やっぱり車やバイクが好きだという自覚は無かったですね。全く。
サーキットで本物を見たいとも思わなかった。

あ、でも、レンタルのポケバイは夢中になって乗っていましたね。
スネを路面にこすりつけて血まみれになっても、全く痛みを感じなかったくらい楽しかった。
ただ、自分からポケバイに乗りたかったわけではなく、どうしても乗りたいと言っていた弟の付き合いで乗ったら楽しかったのです。

この辺までが小学生の頃。
中学では大して乗りものには興味が無かった…のかなぁ。
記憶には残っていないので、きっと夢中にはなっていませんね。

高校生になってからは、自分で原付を手に入れて乗ったり、たまに友達にデカいのを借りて乗ったり。
この辺でバイクが好きだという自覚が出てきました。

大学に行ったら、スクーターレースから始まって、当時やっていたTTF1というカテゴリーのバイクのレースのメカニックをやったり、少しずつのめり込んでいきます。
世はバイクブームだったので、バイクに乗るのは当たり前、スピード出すのは当たり前、その流れでレースをやるのも珍しくはないという感じでした。

テレビでも週末にはレース中継を良くやってました。
日曜の深夜には二輪の世界GPを中継してましたね。
GP500はフレディ・スペンサーがカッコよかった…のですが
中継は、500cc、250cc、125ccという順番にやっていて、最も遅い時間帯にやっていたGP125が一番面白かった。
あれ?逆の順番だったかな?
とにかく125は、ストレートから第1コーナーに4,5台が横並びになったまま突っ込んで、その後も頻繁に抜きつ抜かれつ。最高にスリリングでした。
その時のヒーローは上田昇さん。
日本GPの鈴鹿で、ワイルドカードで出場して、1位ですからね。
その後は世界GPにフル参戦して勝ちまくり。

当時は、まさかこんな人と知り合いになって、一緒に仕事ができるとは思ってもみませんでした。
今は上田さんのチームとジョイントして、鈴鹿8時間耐久で学生達がお世話になっています。

その後はF1ブームがやってきます。ターボF1の時代です。
やっぱりアイルトン・セナですよね。
当時の私はホンダの車を設計してたので、勝ってくれると嬉しかったなぁ。
ホンダが優勝すると、職場では紅白饅頭が配られたりしてましたね。
社員食堂には、巨大な横断幕が貼られたりしてね。

で、その頃のホンダF1チームの広報をやられていたのが小倉茂徳さん。
テレビの中継でもおなじみのレースジャーナリストです。
単なるジャーナリストではなく、元が本物のF1の広報マンなので、当時のF1界の大物は友達ですから、単に「知っているだけの人」とは話のレベルが根本的に違う。

実はこの人が日本にFormula SAEを紹介した張本人なのです。
一緒にアメリカやオーストラリアの大会に行って、色々勉強させてもらったり、凄い人を紹介してもらったり。
これも、「まさかこんな人と一緒に…」というケース。
いやぁ、本当に運に恵まれていると思います。

そして大学に来てからのお師匠様が、1960年代ホンダF1の車体設計者、佐野彰一先生です。
さらに、卒表生がホンダF1の設計者になり、その彼のボス、F1の車体設計のチーフが以前仕事でお世話になった方だったりして。

いやー、世の中狭いというか、面白いですね。

誰しも幼少の頃のヒーローがいるのではないかと思います。
それが仮面ライダーとかウルトラマンじゃなければ、こんな風に人生の所々に何かしらの接点のようなものができてくるものなのかな、と思ってます。
途中で諦めなければ。

そう思う反面
もし、もっとのめり込んでいたら果たして何が起きたんだろう?
とも思います。

ま、レースも人生も「~たら」「~れば」無いのですけどね。

レースってこんなことしてます その4 レーシングマシン

レーシングマシンとはどんなものなのでしょう

ぶっちゃけ
レースに使う乗り物は
どんなものであれレーシングマシン
ということになります。

ここでは
サーキットなどで行われているレースでよ
く見かけるものを紹介しましょう。

レーシングマシンの形態としては
以下のようなものがあります。

プロダクション
街乗りの量産車両ほとんどそのまま
もしくは
量産車両ベースで改造したものです。
改造の範囲は、出場するレースの規則に合わせる必要がありますが
参戦コストを抑えるためとか
参加者の差を抑えてレースを面白くするために
一般的には改造の自由度は高くありません。
余計なものを外すとか
安全面での追加を義務づけられる特定の部品
くらいでしょうか。
特定の車種で争われるワンメイクレース
プロダクションクラス(市販車クラス)なんかはこれです。

市販レーサー
メーカーから競技専用車両として販売されているものです。
バイクだと量産メーカーのカタログラインナップに載っているものもありますね。
誰でも買えるレーシングマシンです。
あなたも買えます!
多くの場合は年間の生産台数が決められていて、それが完売すれば終了。

  • そもそも純粋なレース用マシンとして開発されているもの
  • 街乗りの量産車から保安部品など余計なものを取り外した状態で
    競技専用車両として販売しているもの

という2つの形態があります。
前者はバイクならロードレーサーとかモトクロッサー。
トライアル用のマシンもありますね。
後者の場合は
性能的には量産車とほぼイコールなので
バイクの場合はプロダクションレーサーとして扱われることもありますが
どんなレースに出られるかは
主催者の判断によるといったところでしょうか。

四輪の場合
ナンバープレートを付けることができないレース用車両
として販売されているものは
ワンメイクレース用の車両だったりします。
一部の国内メーカーや、ポルシェ、フェラーリなんかは
そういう競技車両をリリースすることがありますね。

ワークスレーサー
ファクトリーレーサーとも呼びますね。
レーシングカーコンストラクターや自動車メーカー(いわゆるワークス)が
レースに出るために作ったマシンです。
こういうマシンが出場するレースは
メーカー同士のガチンコ勝負なので
そこで勝つために作られたマシンは超ハイレベルです。
F1とかMotoGPのマシンなんかはこれです。
有名なバイクのレース
鈴鹿8時間耐久に出ているマシンは
規則上の都合上
量産車をベースにしているものの
改造範囲は広く
メーカーから参戦しているチームのマシンは
セミ・ワークスと言って良いレベルです。

プライベーターが作ったマシン
国内ではあまり見かけませんが
個人レベルで作られたレーシングマシンもあります。
欧米ではそういうマシンで競うカテゴリーもあります。
中には
ワークスレーサーが出るようなレースに
プライベーターが参戦して優秀な成績を上げる
なんてこともまれにあります。
もう亡くなってしまいましたが
ニュージーランドのジョン・ブリッテンなどは
その好例でしょう。
手作りで2気筒1000ccのバイクを作って
アメリカを中心に大暴れしてました。
この件はそのうち取り上げましょう。

バイク好き
クルマ好き
であれば
速いのに乗りたいと思ったりするでしょう?

「レーシングマシンで公道走ったらどうなんだろ?」

なんて思うこともあるかもしれません。

まぁ走れないことは無いですね。
頑張って合法的なレーシングマシンを作ることも可能でしょう。

でも、そんなことすると大変です。
非常にめんどくさい乗り物になります。

まず各部の耐久性が低いので
メンテナンスサイクルが短くなります。
なので、金も手間も掛かります。

レーシングマシンは量産並みの耐久性を持ちながら速い
なんて魔法の乗り物では無く
耐久性を犠牲にして性能を得ているのです。
なので
頻繁な整備を前提に性能を保っているわけです。

なので、エンジンのオーバーホール(分解整備)のサイクルが短いとか
足回りの部品がすぐ劣化するとか
そういうことになります。

モノにもよりますが
レース用のエンジンは
数十時間の使用でオーバーホール
なんてのもざらにあります。

タイヤも同様です。
レース用のタイヤは
ものすごーくグリップします。

でもそれは
タイヤがちゃんと暖まった状態での話です。
逆に冷えている状態だと
恐ろしいほどグリップしません。

さらに消耗が早い。
あっという間に無くなっちゃいます。

ブレーキもそうですね。
レース用の超絶に効くブレーキは
レースでの高い温度域に合わせてあるので
街乗りの低い温度域では驚くほど効かなかったりします。

そんなのやってらんないでしょ。

そういう
何かを失って何かを取る
みたいな関係を
トレードオフと言います。

あなたの人生は何をトレードオフしてますか?