迷ったら負けだぞ

5月に入っても夢工房にはボチボチ見学者が来ます。
1年生はもちろん、3年生まで来ます。

最近では、機械系じゃない学生も結構来ますね。
すでに何人かメンバーになってます。

今年は何人加入するんだろう。
現時点で在籍者は全学年合計で30人くらいなのかな。
すでに部屋のキャパシティは超えてます。
新しいやり方を考えなきゃ。

幸いにもコロナ禍でオンラインのノウハウが手に入ったので
人数が多くても回せそうな気がします。

見学に来る学生は
色んなタイプがいますが
一通り見て聞いて
最後に迷いを見せる学生がいますが
彼らを見てると思います

あぁ、迷ったら負けだ
と。

その学生が良いだの悪いだのという話ではないのです。
迷いを見せるとチャンスは掴めないんだな
というのを実感するんです。
本人は気付いていないでしょうけど。

迷いがなければ背中を押せますが
迷った者の背中は押す気になれませんものね。
つまりチャンスをあげる気にはなれない。

お師匠様の佐野彰一先生が良く言ってました。

幸運の女神は
前髪はあるけど
後頭部はツルッパゲだ

と。

どういうことかというと
チャンスがやってきた時は
前からはガツッと掴めるけど
通り過ぎてしまったら掴めないんだよ

ということです。

なので
佐野先生は頼まれた仕事は基本的に断らないそうです。

私もそうしてます。
とはいえ
たまに、あまりに分不相応な仕事が来た時は断っちゃうこともありますが。

自分自身
あまりガツガツゴリゴリ行くタイプではないと思ってはいますが
基本的にはあまり遠慮しない方だと思います。
人がどう思っているかは分かりませんが(笑)

かつてそれで失敗することも多かったと思います。
でもあまり気にしてないから良く分からないし
それらが無駄な経験だったとも思っていません。
変に遠慮して後悔する生き方はしたくない。

どうせやるなら
失敗しようが何だろうが
あぁ、オレは生きてるぞ!
って感じられるような人生が良いです。

言われたことをやって
与えられたものを黙って受け取って
静かに怒られないように正解を探すような
生きてんだか死んでんだか分からないような人生は耐えられない。

現状では、まだまだ理想にはほど遠いけど
だからこそやり甲斐があるってもんですよ。

でもね
迷う時って
実はすでに自分は答えを持っていることが多いんですよ。

迷った時に
「何のために」迷っているのかを考えると分かります。
大抵の場合は短期的なリスク回避です。

それ、長期的には
誰も何も得しないことが多いです。
自分の価値を高めたり
成長したり
ということに繋がらないことが多くて
誰も喜ばないことだったりします。

ということを考えると
あら不思議
もう答え出ちゃってるでしょ。

我が愛すべき鳩山

職場である
東京電機大学 鳩山キャンパスは
埼玉県の比企郡の山の上にあります。

山の上に大学しかないので
郵便物には番地を書く必要が無いほどです。
便利でしょう?

ここ鳩山町は
かつて夏の最高気温を記録したこともあります。
最近では熊谷に押され気味で悔しい思いをしていますが
きっとそのうち巻き返すでしょう。

山には色んな動物がいます。
タヌキ
ウサギ
キジ
ワシ
フクロウ
様々な野鳥

以前は捨て猫が大繁殖していて
キャンパス中が猫だらけでした。
今は駆除されてほとんどいなくなっちゃって寂しいです。

たまに夢工房にネズミが紛れ込んできます。
都市部にいるドブネズミじゃなくて
山間部にいる野ネズミです。
ヒメネズミってヤツかな。
凄くかわいいヤツで飼っちゃいたいのですが
そういうわけにもいきませんので
お帰りいただくことにしています。

去年は鹿がいることも知りました。
キャンパスを貫く道を走っていたら
目の前を鹿が横切ったのです。
奈良にいるようなデカイ立派なヤツです。
この時は、驚きを通り越して感動してしまいました。

そうそう
数日前は、住んでいる東松山市の防災放送で
シカが出たので注意!
という内容を流していましたね。

何年か前には
大型のイノシシが出たので注意!
というのもありました。
そんなのは頻繁にあるわけではありませんが
エキサイティングですよね。

数年前にはこんなこともありました。
夢工房の外で
「メェ~メェ~」
って聞こえるんですよ。
どうせ学生がふざけてるんだろう。ちっとも面白くないぞ。
と思ったのですが、一向にやめないので
「いい加減にしろ!この野郎!」
と思って外に出たら
本物のヤギがいました。

もっともこれは天然モノではなく
近所の農家から脱走してきたらしいですが。

脱走と言えば
近所の動物園から孔雀が脱走してきたこともあったそうです。

恐らくそのうち
エミューとかカンガルーなんかも来るんじゃないかと楽しみにしてます。

以前はガチョウもいましたね。
「アフラック」と名付けられて皆に可愛がられていましたが
野良猫より凶暴で、奴らに一目置かれる存在でした。
なぜか夢工房の前がお気に入りだったようで
手作りの風洞実験装置から排出される
すさまじい強風を浴びて気持ちよさそうにしていましたっけ。

そうそう
トキの繁殖が順調にいって
この辺の空を飛ぶようになったらいいな~
とか思っています。

そんなわけで
このロケーションを大変気に入っています。
自然が多いので季節の移り変わりが良く分かります
もうすぐ梅雨になりますが
雨が多くなると、山の緑が爆発するように元気になるのです。
なのでここの梅雨は、あまり憂鬱ではありません。

春先には、桜が爆発的に咲いて
得体の知れないおかしな鳴き声の野鳥が集まってきて
本当に良い環境です。
飽きません。

そんな感じで
ここは、いわゆる「田舎」なのですが
恐らくこの文章だけを見て想像するほど辺鄙なところではありません。
期待して来ると肩すかしを食うかもしれません。

近所に必要なものは全て揃っていますので
全く不便を感じません。
学生がフォーミュラカーをつくる時に必要なものは
大抵は不自由なく手に入りますし
むしろこういうロケーションだからこそ
バンバンエンジン回したりしてレーシングカーを作れるのです。
恐らく都市部ではこうはいかないでしょうね。
不必要なものが全くないのも良いのかもしれません。

我が東京電機大学のメインのキャンパスは
東京の北千住ですが
そっちで仕事をしたいかと言われれば…
嫌です。
ここで気に入っていることのほとんどは失うことになりますから。

鳩山キャンパス
次はどんな動物が見られるかな。
ペンギンでも迷い込んでこないかなー。

「あれ?今日は学生が多いな」
と思ったら猿だったりしてね。
…それは嫌だな。

かつて
Formula SAEつながりで
オーストラリアから何人か夢工房に来てくれました。
彼ら驚いたんじゃないかな。
Tokyo Denki…とかいって、こんな所だったから。

我々のチームがメルボルンの都市部の大学でお世話になった時
キャンパス内でカンガルーが走り回っていたけど
あの時の驚きほどじゃないかもね。

知恵を絞るということ

端的に言ってしまうと
学生が学校で学ぶのは
プロになるためですよね。

学校で学ぶのは
論理的に考えること
知識を習得すること
この2つがメインだと思いますが
社会に出ると
もちろん論理的に考えるということは大事ですが
むしろ直感的にものごとを処理する能力が重要になると思います。

だって
いちいち学校で問題を解くように考えている暇はないし
考えて答えが出るようなものであれば
誰が考えても同じだから。
そういうものは価値がありません。

前職で設計やっていた時にお世話になっていた
試作の親方によく言われました。
1960年代ホンダF1の”作り”をやられていた方です。
今も、その時の言い回しも含めて頭にこびりついてます。

「小平さんよぉ、ただやってたってダメなんだぜ。
知恵を絞るんだよ。知恵をよ」

これ、言われていた時は
何となく分かってはいたんですけど
今ひとつピンときませんでした。

今、学生達の面倒を見るようなって
よく分かります。

単なる知識や理論だけで頑張って考えても
新しいものをつくっている時は
それに合った理屈なんて無いわけですよ。
だって新しいんだから。

なので
今まで見たもの、聞いたこと、やったこと
色んな経験をフル動員して工夫しろと。
で、熱意を持って頑張れ、と。

で、そのためには何が必要なのか。

こんなふうに考えて
こんなふうにやると
こうなる
というセットをどれだけ経験するか
あとはパッションだな!

結局、いわゆる形式知だけじゃ
どうにもならない世界に入っていくためには
暗黙知が必要になるのですが
そのための経験が重要なんですね。

本田宗一郎さんに直接鍛えられた人達に
色々教えてもらえたのは大きな財産です。
本当に幸運でした。

「ロクにやりもしないで講釈たれてると
ドライバーの柄とかで殴られんだよ。
頭をガツンとよ。
ホントに怖かったよ」

笑いながらそんな話をしてくれたのが懐かしいです。
もっと色々聞きたいこともあったのですが…。
多少なりとも私が受け継いだものは
何とか次世代に伝えていければと思っています。

むやみにガツンとはできませんけどね。