人生の不思議

凄いタイトルですね。
でも、本当にそう感じているのです。

今夜は銀座でとあるF1チームで車体設計のボスをしていた人と飲んでました。

あ、一応言っておきますが、いわゆるママさんがいるような凄いお店じゃないですよ。

で、ふと振り返ってみると、私ごときがいろんなご縁をいただいて、ありがたい思いをさせて頂いているなぁ、と思ったのです。

お師匠様とのご縁はもちろん、上田昇さん関連のお付き合い、素晴らしい卒業生たち、そしてもちろん現役の夢工房のメンバーたち。
おっと、SNS関連で繋がっている皆さんも忘れてません。

今まで誰よりも頑張ったなんて思っていませんし、ましてや優秀な部類にも入っているとも思っていません。

始まりは、ただのバイク好きでクルマ好きでレース好きの、ただの小僧だったわけで、今も大して変わってないと思っています。

一体何が今の自分を形作っているのだろうかと考えると…
いまだによく分からないままなのですが、少なくとも大まかな方向性は変えずにやってきたつもり、というか、なんとかやってこられたというか、そんなところなんですけどね。

と、そんな事を考えていると、人生って分からんもんだよなぁ、不思議だなぁ、と思うのです。

そして今夜は新たな「こうすりゃうまくいくぞ!」というネタを掴んだので、その辺は追々お伝えしましょう。

大事なものは目に見えない

ハイラックスを車検に出したので代車を借りました。

以前は整備やら車検やらは可能な限り自分でやったものですが、最近は時間や労力の都合もあってすっかりお任せです。
で、信頼できる地元の整備屋さんにお任せしています。

その整備屋さんは、スズキのディーラーでもあるので、当然ながら代車はスズキの場合が多くて、毎回「最近のスズキは良くできてるなぁ」と関心するのです。
質感や居住性はもちろん向上していますが、動力性能や操縦安定性もかなり良くなっています。小型車も軽も。

今回の記事はたまたまマツダを出しましたが、スズキもマツダも味付けこそ違うものの、最近のクルマは総じて良くなっている気がします。
10年くらい前から格段に良くなったような気がします。

で、何が良くなっているか?

感心しちゃうのは、何と言ってもハンドリングです。

まず直進時、中立付近の直進性が良い。
路面の荒れによってフラフラせず、しっかり落ち着いた感じ。
操舵時は、狙ったとおりに頭が入るので、分かりやすい。
旋回時の姿勢もしっかり感があって落ち着いています。

もちろん設計的に良くなっているのは想像が付くのですが、この分かりやすく信頼できる感じは一体どうやって得ているのか。

こういう設計って、むやみに反応を良くすればいいってもんじゃなくて、適度な遅れと反応の大きさがあるのです。
遅れが小さくて反応が良すぎると、ドライバーには過敏で乗りにくい印象を与えますし、もちろんその逆でも乗りにくさを感じます。

その辺の最適化は、設計である程度はやりますが、社内にいる操縦安定性評価のエキスパート(テストドライバーの親分みたいな人)が自ら試作車を運転して官能評価によって行います。

で、この時点でのチューニング(味付け)が最終的なフィーリングを決めるのです。
もちろん、設計的にダメなものはいくらいじってもダメなので、良い設計であることは前提ですが。

それらは正解とされる値があるわけでなく、数字に表しにくいことです。
なので、設計者が良い値がを出せば済むものではありません。

この最終的な評価を担当するテストドライバーは、操縦技術や車体に関する豊富な知識はもちろんですが、凄いセンシング能力も持ち合わせています。

どのくらい凄いかというと、テスト車両に装着したセンサーが読み取れないことも彼らはセンシングしたりします。

品質とか性能とか、目に見えるとことはもちろん重要なのですが、クルマは走るものなので、走ったときにどう感じるの?というのが最重要で価値の根源だったりするのですね。

本当に大事なものは目に見えないのですよ。

自動運転はまだ来ない?

すでに一部では自動運転タクシーが実用化されていますが、普通のオーナーが所有する自家用車はどうでしょう?

国内の自動車メーカーは、今やかなり高いレベルのアシスト機能を実用化していますし、テスラなどはかなり高いレベルにあるようですが、まだ完全な自動運転というレベルには達していないようです。

タクシーは自動運転なのになぜ?と思うでしょう。
タクシーは限定された環境(限られたエリア)だから成立しているのです。

ちなみに、官民ITS構想ってのがありまして、そこでは自動運転のレベルを以下のように定義しています。

官民 ITS 構想・ロードマップより

ここでは、全く自動化されていない状態を「レベル0」、それこそ車内にハンドルが必要無い完全な自動化を「レベル5」としています。

国産の乗用車で実用化されているのは、縦方向(クルマの前後方向)の自動化である車間距離を保つアダプティブクルーズコントロールと、横方向の自動化であるレーンキーピングなので、表の「レベル2」に相当します。

テスラはもうちょっとレベルが高くて、「レベル3」といったところでしょうか。

自動運転タクシーのウェイモは「レベル4」です。
運用エリアは限定されていて、その領域外を無制限に走れるわけではありませんので。

そう、限定された環境での自動化では、完全な自動運転ではないのです。

それは結構ハードル高いのです。
ちょっと羅列してみましょうか。

まず、我々の周囲の環境は、イレギュラーな事象の連続です。
何が起きるかなんて決まってませんし、いつも同じ状態であるという保証はありません。
そういった未知のものに対応するのは結構難しいのです。

AIなどは、過去の情報を学習して判断します。
なので、過去に起こったことが無い事象には対応しにくいでしょう。

AIの判断としては「トロッコ問題」なんかも有名ですね。

で、万一の際の責任も難しい問題です。
事故が起きたら、それは人の責任なのか、メーカーの責任なのか、はたまた政府の責任なのか、とかね。

もちろん技術的な問題もあります。
ハッキングされたらどうするの?とか。
これはすでに自動化されたクルマのシステムにハッキングできるという事例があります。
事件では無く、実験のようなレベルだった気がしますが。

他にもプログラムのバグとか、コンピューターがフリーズしちゃったり暴走しちゃったりしたらどうすんの?とか。

あと、完全な自動運転をやろうとすると、高度な自動化とはちょっとレベルが違う話になります。
コンピューターのスペックとしては、1000兆バイトのデータ、毎秒6ギガバイトの処理が必要になると言われていますが、現時点ではそれが可能なプロセッサーが無いのです。
量子コンピューターが実用化されたら何とかなるのかな?

ところで、完全自動化に至る直前の、高度な自動化レベルでも、自家用車であれば緊急時にはドライバーが運転する必要があります。

でも、自動化が進めば進むほど、緊急時の自動から手動運転への切り換えは難しくなるはずです。
だって、自動化のレベルが高ければ高いほど、ドライバーは寝たくもなるでしょうし、車内で映画みたり飯食ったりしたくなるでしょう?
私はしたくなります。
そんな時ほど急に運転なんてできませんものね。

なので、恐らく我が国で「自動運転車」として販売されるには、使用領域を限定せず、システムが全ての操縦を担って運転者を全く必要としない状態にする必要があるのではないかな、と思っています。それこそハンドルやペダルが無いヤツ。
これは相当高いハードルです。

そういう時代の転換点とも言える技術開発は、日々チャレンジの連続で大変なはずですが、エンジニアとしては一番やり甲斐を感じられる瞬間でもあります。

そういうフィールドでもタフネスを発揮できる下地を学生のうちに作っておくには、やはりチャレンジの日々を送る以外無いでしょう。