心のバネを作り込め

夢工房は活気があって
各々が色々やっていて
うまくいったりいかなかったり。

もちろんうまくいかなければ
悔しい思いをしています。

何で悔しいかって

うまくいかない
思った通りにならない
からなのですが

それはつまり
理想と現実のギャップが望むように埋まらない
ってことです。

いわゆる失敗ですね。

これ、実に素晴らしいことです。

まず理想がある。
それは現状とギャップがあって
それを埋めようと真剣に努力する
いわゆるチャレンジをしてる
ということです。

でも、望むとおりには行かなかった。
その状況に甘んじていないってことです。
だから悔しい。
本気だから悔しいのです。

悔しい思いをしないとか
悔しい思いをしても
それを次のアクションに繋げないとか
そういうのはもったいないですね。

何か心に「バネ」を持っていないような
そんな感じがします。

この心のバネは経験によって
強くしなやかになったり
柔軟性を失って、硬く脆くなったり
はたまた反発力を失ったりもするでしょう。

でも、人の心は自動的に治癒できるので
何度でも色々経験したら良いのです。

で、自分に適したバネの特性を作り込めば良いと思います。

こんなふうに
トライアンドエラーをできるのなら
それは素晴らしいことだと思います。

諦めずに継続すれば
必ず大きく成長できますから。

でももし
悔しい思いをするようなところまで行けないとか
悔しい思いをしないで済むような環境にいるとか
そんなことになっていたら
それは大変残念で不幸なことだと思うのです。

学生に、手取り足取り
ああしろこうしろ言えば
彼らはその通りにやろうとするでしょうけど
心のバネは強化されないままで
脆弱ないわゆる「良い子」になるでしょう。

そんなのは希少性も無いし
全く面白くなくて
いざというときに役に立ちそうもないので
夢工房ではそういうやり方はしません。

せいぜい悔しい思いをしてもらいましょう
ということです。

確かアメリカの軍隊の偉い人が言っていたと思うのですが

兵隊にあれこれ全てを指示してはいけない
ゴールだけを示して自由にやらせろ
彼らは驚くような成果を上げるから

そんなのがあったと思います。
まさにその通りですが

彼らは驚くような成果を上げるだろう

と信じるのは難しいことです。
経験の無い者は、きっと失敗して
きっと何度も期待を裏切られます。

それでも信じ続ける
というのは勇気が要りますよ。

それに、やらせっぱなしじゃ誰も成長しないので
結果の評価が大事です。
それを次のループに繋げるために。

これまたとても面倒くさい(笑)
でも、とても大事。

というわけで
学生共々修行中です。

どれだけ本気か

伝わりにくいことの一つに気付きました。
それは

本気度

どういうことかというと
真剣に一所懸命やる
といっても
その度合いは人によって違うわけで
それは特に数値化できないことで顕著になります。

学生がレーシングカーなんかを作っていると
結構分かりやすいですよ。

ある者は、本気でやる
というと、それこそ
ぶっ倒れるまでやったりすることがあるけど

別の者はそうでもなかったりします。
でも、本人は本気でやってるつもりです。
別に手を抜いているつもりは無い。

意識のレベルなんて目に見えませんし
どれくらい強く思っているかなんて分からないし
どこが限界かなんて経験が無ければ
いや、ある程度経験があってもよく分かりません。

なので
「本気でやろうぜ!」
「おー!」
となっても
結構温度差があったりするのは仕方ないのです。

でもやはり、経験の数は効いてくるでしょうね。

スポーツでも何でも
根詰めて一所懸命やった経験がある者は強いですね。

そうそう。
一所懸命やった経験があると
その末に何が待っているか
感覚的に分かっていたりするので
成功体験がある者ほど勇気を持ってチャレンジします。

そんな風に、うまくいっちゃう者は
その調子でドンドン行ってくれれば良いので
天井を外してあげて
成果を評価してあげればOKです。

複数人が活動している夢工房では
もちろんバラツキはあるし
浮き沈みもあります。

なので、うまくいかない者も当然いるわけですが
外力でやらせちゃうと
やらされ人間になっちゃいます。

頑張った経験があまりなくて
本気度が上げられない者は
結構共通点があって

メンタルやフィジカルに対する
防御壁の構築を優先しているというか
そういうこともあって
リミッターを低く設定していることが多いですね。

もちろん意識的では無いことがほとんどですが。

まぁ、限界が分からないのだから
自動的にそうなっちゃうのも分からなくもない。

とはいうものの
チームパフォーマンスを上げるには
放置というわけにもいきません。

とはいえ、その状態を変えられるのは本人しかいないので
自発的に何とかしたいと思う環境が重要
ということになるかと思います。

そんなの当たり前だろうって?
まぁ、そうなんですけど
それをどうにかするのは難しいことです。

その環境の構築に20年も試行錯誤しているわけですが
結局のところ
いわゆる「人間力」を高めていくしかないのだろうな
というのが現状の結論です。
もちろん、学生も教員もです。

で、この挑戦は数年前から始まっていて
現状はうまくいっていると思います。

こういうのは終着点はないのでしょうけど
どこまで行けるか、やってみてのお楽しみです。

先送りしたら終わりだ

ものづくりものづくり言ってますが
今日は、ちょっとだけ夢工房のものづくりの紹介でもしてみましょう。
ちょっとだけ変わった切り口で。

いきなり金属の塊です。
簡単に言うと鉄の塊なのですが
工科系の人間は純粋な鉄以外を「鉄」と言ってはいけないようなので
鉄系の合金と言っておきましょう。

これは今日、材料屋さんに注文していたのを受け取ってきました。
サイズは表面に書いてあるとおり
50mm x 90mm x 165mmです。
これで1万5000円くらいします。
すっごく高いです。ムチャクチャ高いです。

なんでこんなに高いのかというと
ものすごく硬いからです。
SK材(エスケーざい)とか工具鋼とか呼ばれる特殊な材料です。

普通は、鉄系の材料は熱処理をして硬くします
「焼き入れ」とか聞くでしょう?

コイツは熱処理しない「生(ナマ)」の」ままで
すっごく硬い材料なのです。

今回は、これで金属の板材を曲げる道具を作ります。
金属を加工する道具って、大抵は凄く硬いとかゴッツいとか
そんなのばかりです。

そう、夢工房は
道具から作ります。
買ったら高かったり
特殊なものが欲しかったり
すぐ欲しかったりするので
自分達で道具を作ることも多いですね。

使う材料もいろいろです。

一口に鉄系の合金と言っても多種多様だし
アルミの合金なんかも色々あります。

その他にも、チタンとかマグネシウムとかタングステンとかインコネルとか…
数え上げたらキリがありません。

工科系の学生といえども
普通は一生触ることはおろか
そういう材料を使って、自分達で何かを作るなんて経験はできないと思います。

まして、材料を適材適所で使い分けるなんて
授業で勉強してもできるようになることではない貴重な経験です。

今回は、このSK材ネタで終わりにしちゃおうかと思ったのですが
ついでですので、他のものも紹介してみましょう。

このテーブルは溶接用です。
天板は分厚い鉄板で、この上で小さい部品の溶接作業をします。
こういうものも作ります。
作業環境は大事ですから。
買ったら高いでしょうけど、自分達で作れば大したことはありません。

なんかいろいろ乗っちゃってますが
この穴が空いた巨大な鉄板の台は
車を作る上でとても大事です。
組立定盤とか溶接定盤とか呼んでます。

この平面が出た台を基準として
レーシングカーのフレーム(骨組み)をはじめとした大きなものを溶接します。
そうしないと精度が出ないのです。
空間で適当に溶接しちゃったら、設計上の性能は出ませんから。

これは20年前に初期のメンバーが最初のマシンを作る前に作りました。
こんなもの買っていたら、お金がいくらあっても足りません。
ちなみに、この鉄板だけでも400kg以上の重量があるはずです。

これまたいろいろ乗っちゃってますが、図面をチェックするためのテーブルです。
学生達は「検図テーブル」と呼んでいます。
これはコロナ禍のさなか、4年生達が既存のテーブルを改造して
天板をカーボンファイバーにしました。
ちょっと品質に難ありですが、まぁ、実験的に作った割にはまあまあです。

エンジンの馬力を測る装置も作っちゃいます。
エンジンダイナモとか呼ばれますね。

馬力の測定などを、いちいち外部にお願いしていたら
時間もお金も大変なことになります。
なので、自分達で持っておきたい。
もちろん、買ったら高いので作ります。

今は、今年採用する新エンジンに合わせて
既存の装置を改造しています。
これからいろいろ取り付けていきます。

これはカーボンファイバーの部品を作るための金型ですね。

グラスファイバーとかカーボンファイバーとか
そういう材料もよく使います。

そういう部品を作るときは
金属製の型なんてあまりつかわないものですが
ちょっとこだわりたいことや試したいことがあったりすると変わったことをやりますね。
ゴム型とか樹脂型とか、他にも色々やってます。

いろいろと工作してますが、金属ばかりじゃなくて
木やプラスチックなんかも使います。

コンピューター制御の加工機械なんかも使う反面
手作業でゴリゴリやってたりもします。

もちろん、彼らはエンジニアになるので
ちゃーんと設計して作ってますよ。

卒業生の80%以上は設計者になってますが
ものをつくったことがないのに
良い設計しましょうというのは無理だと思います。

今回紹介したものでお分かりになったかもしれませんが
やりたいことはやりたいわけで
設備が無いとか、お金が無いとか
言い訳したくないのです。

なので
無ければ作ろうよ
となるわけです。

先送りしたら終わりです。