仕事への向き合い方

自分にとって仕事とは何なのか?
そもそも仕事って何なのか?

そういったことを考える機会は、ありそうで無いもの。
周りには、いくらでも社会人がいるので、いくらでも繋がりを持てそうなものですが。
何か不思議です。

自分の学生時分を思い出してみてもそう思うのですが、幸いにして私の場合は良い話相手がいました。
大学生の時は、レースに明け暮れていたので、資金稼ぎのために色々アルバイトをしました。
今思い出してみても、何をやったか全て思い出せないくらい。

その中の一つ、最終的に落ち着いた手作りハム屋さんの店主と話す中で、仕事に対する基本的な価値観を構成した気がしています。

その人、本場ドイツのコンテストで金賞を獲ってしまうような人だったので、スキルのレベルは当然高かったのですが、何より仕事に対してはかなりシビアな考え方をしていました。個人事業主なのでなおさらでしょうね。

店主と奥さん、そして私の3人で、仕込み、作り、販売と、全てやるので大変です。
時として製造機械の修理やメンテナンスも自分達でやったりしました。

地域の人気店だったので、もの凄く忙しかったのですが、店主は楽しそうに仕事をするのですよ。
でも、仕事の合間には、色々と深い話をする機会がありましたし、ことあるごとに色々な人に合わせてもらいました。同業者、アーチスト、孤児院の院長先生、お坊さん、チューニングショップの経営者…。

やりたいことがある、という話をすると
「なんでやらねぇんだよ。すぐやれよ」

愚痴を言うと
「だったら何でやってんだよ。おもしれぇのかよ」

話はいつもそんな調子。
即断即決で、超ストレートです。

ある日
「おい、これ食ってみろよ」
と渡された、できたてのウインナー。
世の中には、涙が出るほど美味い食べ物があるんだ、とその時知りました。
そして、好きなことを手抜きせずに全力でやると何が起きるのかを学ばせてもらいました。

「価値」の大きさとは、「人の心がどれだけ動くか」なんだなぁ、と。

多分このアルバイトの時に
仕事ってこうやるんだ
という価値観の土台ができたのだと思います。

残念ながら、その店主はずいぶん前に亡くなってしまいましたが、社会に出る前にそういう人と出会えたのは、本当に幸運だったと思います。
恐らく普通のアルバイトでは、こういうことは無かったでしょう。

そしてこれが私にとって、最初の人生の師と言える人との出会いで、この後、佐野彰一先生と出会うまで、何人かの師匠的な人との出会いがあるのですが、今になって思うのは、「動かずしてこういう出会いは無い」ということです。

夢工房での活動でも、自分達が作った機体が動いたとき、学生達は感動を味わっています。
そして彼らも
好きなことを手抜きせずに全力でやると何が起きるのか
を知るのです。

それはまさに仕事に対する価値観がシフトする瞬間です。
その学びは、人生全体にわたって影響を及ぼすはず。