好きこそ物の上手なれ

昔から

好きこそ物の上手なれ

と言いますね。
好きなことは上達するもんだ
といったような意味です。

論語にもあります

子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。
これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。

あることを知っていても
それを好きな人にはかなわない。
それを好きな人は楽しんでいる人にはかなわない。

ってことです。
まさに真理!

というか
昔からそんなの当たり前だったのです。
にもかかわらず
最近はそんな感じが薄れているように感じます。

工科系の学生は
もちろんそっちの分野に興味があるから
その道を選んでいるわけで
日頃から
もっとワクワクすることに接していれば
もっともっと伸びると思うのです。

現状は
学ぶ内容が自分の価値観に対して
距離を感じさせるようなものになっていて
自ら進んで「モノにしたい」と思えないのでしょう。

技術の価値の根底にあるものって
「動いた!」
「飛んだ!」
「走った!」
「速いぞ!」
とか
とてもプリミティブな感情だと思うんです。

それを支えるために周辺の技術があるわけで
細かい個別の技術がスタート地点ではないはず。

まぁ、中には細かい要素技術が好きで
そういうのが得意な人もいると思いますが。

ゴールが
「うわー!すげぇ!これやりたい!」
というようなものであれば
周辺の知識や技術は
自ら進んで掴みに行くでしょう。

興味を持てない
何に使うか分からない
そんな知識を
とにかく理解しろ
というようなやり方は
ボチボチ限界なのではないかな。

なので
その辺のやり方に関しては
まだまだ工夫する余地があるはずです。

ガソリン自動車の正体

以前投稿した「電気の時代がやってくる」シリーズで
何か大事なことを忘れてる気がするなぁ
と思っていたんですよ。

思い出しました!

なので
忘れる前に書いときます!

みなさん
ガソリンエンジン(ディーゼルでもいいんですが)の自動車って
ガソリンで走ってると思うでしょう?

まぁ、あながち間違いではないんですが
燃料でエンジンが動くってのはこういうことなんですよ
というお話です。

皆さんご存じの通り
エンジンは内部で爆発的な燃焼が起きて
その爆発のエネルギーを運動エネルギーに変換して走ります。

なので
動力の源は
ガソリンが燃えることによる熱エネルギーなんですね。

ガソリンが燃えなければいかんのです。

さて
ガソリンが燃えるときはどうしているか?

燃えるためには酸素(空気)が必要なので
空気の中に霧状になったガソリンを混ぜて
そこに電気の火花で火をつけるんです。
すると
バーン!
と燃える。

のですが
単にガソリンと空気があれば燃える
ってわけではないのです。

ガソリンが多すぎてもダメ
空気が多すぎてもダメ
理論空燃比ってヤツがあるのです。

ガソリンエンジンの場合は
重さの比率で
空気とガソリンが
14.7:1
です。

理論的には
この割合で混ざったヤツが燃えると調子良いんですね。

もう一度言っておきますが

空気 14.7

ガソリン 1
ですよ。

さて、では実際のクルマでは
どんなことになってるかを数字で見てみましょう。

たとえば
50リットルのガソリンがタンクに入る自動車があるとします。
ガソリンは1リットルあたり0.75kgです。
なので、タンク内のガソリンは37.5kgということになります。

1リットル 0.75kgのガソリンを全部燃やすには
14.7倍の約11kgの空気が必要です。

なので
50リットル 37.5kgのガソリンを全部燃やすには
11kgの50倍の550kgの空気が必要なんですね。

なんと!
凄い重さの空気が必要です!
ガソリンの比ではありません。

ガソリン自動車は
まるで空気で走っているようなもんです。

しかも
この550kgの空気は
車体に搭載する必要はなくて
しかも無料です。

ガソリン自動車の強みはここにあります。
走行に必要なエネルギー源を全て搭載しなくても良いのです。

対してEVは
走行に必要なエネルギー源を全て積む必要があります。
そして
エネルギ-を使っていっても
車体が軽くなるわけではない。

軽くなれば
それだけ走行に必要なエネルギーが減るんですが
残念なことです。

とまぁ
ここまでお話しすると
ガソリンという液体燃料が
いかにミラクルなのかお分かりいただけるでしょうか。

液体燃料は
自動車に限らず
我々人類の生活を
大きく変えるだけのパワーを持っていました。

でもそれでも電動化しなきゃいかんということは
それなりの理由があるということですね。

巨大なメリットには
巨大なデメリットがセットになっていた
ということでしょうか。
何事もそんなものですけどね。

まだ終わったわけじゃないけどね!

Hの話 後編

前回の続きです。

さて
この水素燃料電池
もちろん水素を燃料としているわけですが
今回は
この水素ってヤツが重要なのですよ
というお話です。
いやー、前置きが長かった!

燃料の分子構造式はこんな風になっています。
おお!なんか授業みたい!

色々並べてみました。

一番上の水素分子以外
水素(H)と炭素(C)でできてます。
こういう炭素と水素でできた燃料を炭化水素といいます。
ハイドロカーボンってヤツですね。

燃料を燃やすってことは
大気中の酸素(O)と結合するってことです。
すると燃料は
水(H2O)と二酸化炭素(CO2)になります。
ちなみに燃料電池も水素と酸素が反応して水になります。

Hがいっぱい付いている燃料が調子良いヤツです。
でも
Cがいっぱい付いてるので
燃やすとCO2がいっぱい出てしまいます。
おお、なんてことでしょう!

色々あるうち
水素だけCが無いですよね。
当たり前ですが、これを使えばCO2が出ないわけです。

水素を燃料としてエンジンで燃やすと
結構クリーンだと思いますが
熱効率が問題になってくるでしょう。
恐らく効率は40%以下になっちゃうんじゃないかな。
燃焼によって得たエネルギーの半分以上は
熱として捨ててしまうことになります。
あとは
高温の燃焼によって大気の主成分である窒素(N)と反応して
有害な窒素酸化物(NOX)が出ちゃったりするとも思います。

結局何が言いたいのかというと

結局、Hが欲しいのだ!

ということです。
乗りものも生きものも。

生きものも!?

そうです。
人間の燃料である食べ物に含まれているタンパク質
これはアミノ酸で構成されていて
その構造を見ると多くの水素を含んでいます。
もちろん水素だけではないので
水素だけ摂取してれば良いってわけではありませんが。

こういう話をすると
日本政府が打ち出した
「これからは水素社会だよ」
ってのも合点がいきますね。

そうか!水素か!
じゃ、水素ガンガンゲットしよう!
と思っても
水素は天然資源としては存在しないのです。
あら残念。

じゃ、水素バンバン作ろう!!

それがすんなりできればハッピーなのですが
色々と課題はあります。

製鉄など、工場で何かを作るときの
副産物として得られる場合があるので
それを利用するってのはアリです。
でも、それで多くのクルマを走らせるのは無理でしょう。
そもそも副産物の生産量は主生産物によるわけで
コントロールは難しい。

あとは皆さんご存じの水の電気分解ですね。
太陽光発電や風力発電などが
いわゆる再生可能なヤツで電気を起こすのが理想的です。

でも、再生可能なヤツは
天気が悪かったり風が吹かなかったりすることもあるので
常にゴキゲンなわけではありません。

ところで
発電機で電気を作って
その電気で水を電気分解して水素を作って
その水素を使って燃料電池で電気を作る
なんか変ですね。
こんなふうに変換が多いのは効率悪そうです。
でも再生可能な方法ならいっか!
ってなるかもしれません。

そもそも
電気エネルギーは高密度で貯めておけないので
水素を使うのですから
まぁしょうがない。

現在日本が頼っている
火力発電所の電力を使って電気分解…
なんてのはお勧めできません。
だってそもそも燃料燃やしちゃってるじゃん!

それに加えて火力発電では
燃料燃やす-蒸気起こす-タービン回すー発電機で発電
となるわけですが
熱エネルギー 運動エネルギー 電気エネルギー
というようにエネルギーの変換が複数起きていて
そのたびにロスが出ます。

ちなみに
火力発電所で使う燃料は
天然ガス、石油、石炭
といったところです。

原発の基本原理は火力発電所と同じで
熱源が化石燃料の燃焼ではなく
核分裂の時に出る熱という違いです。
発電時にCO2は出ません。
嫌われていますが
燃費は超良いです。

このように
どうやって水素を作るか
という問題が一つ。

では、水素ができたとします。
でも、単に水素で燃料タンクを満たしても
大したエネルギー量にはなりません。
なのでガンガンに圧縮して
いっぱい詰め込む必要があります。
それでやっとクルマが長距離走れるようになります。
もちろん圧縮するのにエネルギーが必要です。

もちろんタンクの安全面は重要なので
すごく丈夫で、さらに軽い方が良いので
金属や樹脂の容器をカーボンファイバーで覆ったりした構造です。
クルマに搭載した状態で燃やしてみたり
試験の時は銃をぶっ放して(銃弾は徹甲弾)
貫通しても良いけど破裂しちゃダメ
とか、すごい試験をします。

他にも色々とありますよ。

そんなもんで
高圧の水素を安全に貯めておくためのタンクはお高いとか
それを供給するためのインフラ(水素ステーション)もお高いとか
金属は水素を吸収するともろくなってしまうとか
水素は分子が小さいので物質を通り抜けてしまうとか
大気中に逃げた水素は成層圏を突き抜けて宇宙に逃げてしまうとか
まぁ大変。

こんなふうに書いてしまうと

水素ダメじゃん!

って見えますが
何ごともメリットとデメリットがあって
それらのトレードオフが必要なのです。
完璧な方法なんてありません。

ガソリンをはじめとする液体燃料は
「採掘」で入手ができて
エネルギー密度が高く
貯めたり移動したりのハンドリングがしやすい
まさに理想的な燃料ですが
反面
埋蔵量の限界とか
環境負荷とか
やはりデメリットがあるわけです。

これは水素はもちろん
原発や太陽光発電、風力発電でも同様です。
あらゆるものにメリットとデメリットがあります。

その時の状況に応じて
何を取るかが大事になるのでしょうね。

どうしてもデメリットを取りたくなければ
メリットもろとも捨て去るしかないでしょう。

先のことなんて
やってみなければ分からないことばかり。
勇気が必要ですね。

Hの話 前編

いきなり何を言うんだ?
と思ったでしょう(笑)

水素です。
よからぬ想像をしてしまったあなたの心は汚れています。
反省して修行しましょう。

ここに来て燃料電池自動車が盛り上がりを見せてきましたね。
今回はその辺の話をしてみましょう。

現行車で水素で走る車は
トヨタのミライとホンダのクラリティ
この2つはいずれも燃料電池で走るクルマです。

これらに搭載されている燃料電池は
燃料として搭載した水素と大気中の酸素を反応させて電気を取り出す装置です。
水素と酸素を供給すれば電気を取り出せる電池と思って良いです。
なので、燃料電池自動車もいわゆるEV(電気自動車)で
Fuel Cell Electric Vehicle:FCEVと呼びます。

自動車用の燃料電池は「単セル」と呼ばれる小さな単位で発電して
それを直列にたくさん繋いで必要な電圧を得るようになっています。
その集合体を燃料電池スタックと呼びます。
EVは数百ボルトの電圧で走るので
この単セルを、たーくさん繋ぐ必要があります。
燃料電池のセルは、繊細な構造をしています。
これをたくさん繋ぐので
信頼性とかコストが課題となっていました。

現状の一般的なEVは、外部からバッテリーに充電して走りますが
燃料電池の自動車は、燃料電池で発電した電気を
バッテリーに貯めて使うので
外部から充電する必要はありません。

外部からの充電が必要か不要かという違いはありますが
核心はそこではありません。

今回、トヨタが新しいミライのために
性能向上して汎用性のある燃料電池スタックを開発して採用したそうです。
航続距離が伸びてコストも下がっています。
これをトラックなど乗用車以外に流用することによって
色々なものの電力を得ることができるようになる
これが今回の話題の核心ではないでしょうか。

以前
電池はエネルギーがあまり入らない割には重いし大きい
という投稿をしました。
トラックなどの貨物自動車をEVとして走らせる場合
バッテリーを輸送しているのか荷物を輸送しているのか
分からないほど多くの(重い)電池が必要になるのです。
これがトラックのEV化に対する課題でした。

燃料電池ならこれを改善できる可能性があるということです。
もちろんガソリンや軽油などの液体燃料ほどのエネルギー密度は得られませんが
クリーンだし
航続距離が伸ばせるので
トラックのEV化には使えるだろうということです。

日本ではトヨタグループの日野自動車
ヨーロッパではダイムラーやボルボで結成されたトラック連合が
電池のみのEVトラックではなく燃料電池のトラックに目を付けています。

後編につづく

レーシングカーの作り方…の知り方

日本でレーシングカーを作るための実践的な知識を得たければどうしたら良いでしょうか。
学生がやっている手作りレーシングカーのFormula SAEマシンとか。

実はほとんど手がありません。

レーシングカーの作り方について実践的な内容が書かれた本は…
2冊ほど知っていますが、いずれもかなり古い本です。
内容が古くても本質は変わらないので
今でも役に立ちますけどね。
とはいえ絶版ですので
入手は難しいかもしれません。

あとは自動車技術会からも出ていますね。
理論的なことを理解するには良いのではないかな。

F1のメカを解説した本なんかはあります。
技術的な興味を満たすには良いですが
あれでレーシングカーは作れません。

ネットでもある程度情報が得られますが
部分的な知識であることが多いようです。

書籍でレーシングカーを作るための知識を得たければ
やはりアメリカでしょうね。
結構な数があります。
イギリスにもありそうな気がします。

欧米(オーストラリアやニュージーランドを含む)には
手作りで車を作る文化が今でもありますから
そういう知識に対するニーズが一定数あるのでしょう。

プロジェクト・カーとかプロジェクト・バイクなんて呼んで
長期的に家のガレージで週末に
レストアするとか
大幅な改造をするとか
人によっては車体ごと作ってしまうとか
そういうのを趣味にしている人達がいます。

作ること自体が楽しみだったり
乗って楽しんだり
そういう手作りの車で走れるレースもありますので
そういう文化が定着しているのでしょう。

ただ、人数自体はそんなに多くはないと思います。
多い少ないって主観的なものなので表現が難しいですが
カスタムカーがそこらじゅうで走り回っている
という感じではないです。決して。
アメリカでもイギリスでも。
まぁ、たまに見かけますので
一定数は確実にいるのですけどね。

バックヤードビルダーなんて呼ばれる人たちは
そういう人達ですね。
プロ、アマ問わず。
車に限らず
家で家具作ったりする人達もそう呼ばれますが。

日本国内のレーシングカーコンストラクターは
だいぶ減ってしまいましたね。
見学に行くのも良いでしょうけど
設計を教えてくれってわけにはいかないでしょう。

四苦八苦して
レーシングカーの設計や製作の
基本的な部分を理解したところで
それで戦力を持ったマシンを設計できるわけではありません。
実際に試行錯誤して
何度も何度も色々とやってみないとね。
本読んで知識を付ければ済むわけじゃないんですね。
まぁそういうものです。

というわけで
レーシングマシンの設計とか開発って
いわゆる暗黙知の世界なんですね。
やらないと分からないことばかり。
まぁ、ものをつくるって往々にしてそんなものです。

ところで
職人さんって
教科書で学ぶのではなく
見て覚える
見て技を盗む
という世界でしょう。

この
見て盗む
というのは
結構理にかなっていると思います。
目で見て分かる「型」をまねる
「型」が同じであれば同じ結果が出る
ということはないので
その過程では
多くの自分なりの工夫が必要です。

なので
一見同じようなものをつくっているようでも
実は進化している
ということがあるのではないかと思っています。

出雲とか伊勢の遷宮なんかはそういうものらしいですね。
何年かに一度
腕の立つ宮大工が全国から集まってきて
そのときの最新技術で以前と同じお社を作って
(もちろん伝統的な技術も使います)
神様が新居にお引っ越しする
というイベントです。

そんなものづくりの世界ですが
それでもアメリカ人は
そういうのをノウハウ化して残しちゃうから凄いです。
とはいえ!
やはりやってみないと分からない世界であること
には変わりはありませんけどね。

というわけで
実践的なレーシングカー作りの解説書
探すなら洋書が一番ということになります。

英語が苦手だから心配?
大丈夫です。
好きな世界のことなんだから理解しやすいですよ。
それに分からないことがあっても
自力で何とかしようとするでしょう?
それが本当の学びではないでしょうか。

ものがないのでものづくりの何を伝えるか

学生の設計内容を
特に1年生のものを確認していると
色々と気付くことがあります。

具体的には
客観的にどう見えるか
使用者を考えているか
使用環境を考えているか
あたりが見えていないなぁといったところです。

もちろん彼らはノウハウを知らないわけですし
機構や材料、要素部品についての知識など
基本的な知識が不十分だったりもします。

そもそも人が使うものなのに
ユーザーの視点に立って考えていなかったり
起こりえるイレギュラーな事象を
想像できていなかったりもします。

でも
学生なのだから
最初はそんなものです。
自分が作ってみたい物をなんとか形にしたい
というレベルからスタートです。

現状では
こうなるはずだ
という自己中心的な考え方になってしまっています。
こうなるかもしれない
という外部の不確定要素を視野を広げて
色々と発見できるようになると良いのですが
そういうのは
実際にものをつくらないと腹に落ちません。

そもそも人が使うものなのだから
ユーザーの視点に立って
どう見えるかとか
起こりえることなどを
作ったり試したりしながら体感できると
話が早いのです。

そのチャンスがあるのが
ものをつくる活動の良いところですね。

その辺に気づきを得られれば
クリエイティビティが刺激されて
急成長できます。

しかし
今はすべてをオンライン環境で進めているので
「じゃぁ作って試してみようか」
と簡単にいかないのが歯がゆいところ。

物体に関することを
言葉や文字や絵で伝えるしかないのですが
限界があります。

はやく大学に来て
物に触れるようになれば
色んなことが一気に解決するのですけどね。

そのときのために
どこまで準備しておけるか。
それが今すべきことの一つなのです。

結果として昨年は
マインドとメンタルの面を
集中的に伸ばせたと思います。

思えば
1年生と、こんなに色々話したことは
かつてありませんでした。
自分の経験や過去の事例、一般論など
口頭で可能な限り
伝えたつもりです。

このへんはオンライン環境のメリットですね。

ひょっとすると
彼らは今後
凄い伸び方をするかもしれない
とも思っています。

実際に手を動かして
ものをつくり始めると何が起きるか
今から楽しみです。

バイクでリチウムイオンバッテリー

最近は量産のバイクでも
リチウムイオンバッテリーの採用が出てきましたね。
さすがにお高いので
それなりの車種にしか採用されていませんが。

ホンダの街乗りだと最新のCBR1000RR-Rあたり。
他にはモトクロッサーのCRF450なんかが採用してます。

メリットは
軽いことです。
とにかく軽い。
鉛バッテリーに比べると冗談みたいに軽い。

自分のバイクではLiFePO4の
SHORAIバッテリーをずいぶん前から使っています。
SHORAIなんて言ってますが、アメリカの会社です。
これ、ラジコンなんかに使われている
リフェバッテリーってヤツですね。
使い始めたのは2011年モデルの
BMW R1200GSに乗ったとき。

純正のバッテリーはとにかく重かった。
1200ccを始動するのだから
ってのもありますが
水平対向2気筒なもんで
1気筒あたり600ccなのです。

エンジンが始動するとき
クランクシャフトの回転に伴って
ピストンが上下運動します。
そのときに一番大変なのが圧縮行程で
これを乗り越えられなければエンジンは始動しません。
このときにクランクシャフトを回すために必要なトルクを
乗り越しトルク
と言います。

もちろんピストンが小さい方が乗り越しトルクは小さいです。
なので
例えば1200ccとはいっても
4気筒と2気筒では乗り越しトルクはかなり違います。

多気筒エンジンの方がピストンがいっぱいあるから大変なんじゃないかって?
確かにメカニカルロスは大きいのですが
多気筒なら、どれか1気筒に火が入ってしまえば
それが回転を助けてくれてスターターモーターの負担が減りますし
1気筒あたりの乗り越しトルク自体は小さいのです。
なので始動性ということでは大したことないのです。

実は単気筒が最も大変です。

単気筒は多気筒エンジンのように
どれかの気筒が始動を助けてくれるなんてことは
絶対にありません。

一つしかない燃焼室で爆発が起きるまで
大きな乗り越しトルクのクランクシャフトを
回し続けなければならないのです。
大排気量の単気筒エンジンなんてものすごく大変なはずです。
冒頭に挙げたCRF450、これも大変。
レーサーなので圧縮比高いし。
本学Formula SAEチームのマシンは
CRF450のエンジンを使っていますが
始動には苦労してます。
まぁ、始動の困難を補ってあまりある
メリットがあるので採用しているようですが。

というわけで
単気筒ほどではないにしても
1気筒600ccの2気筒エンジンは
かなりクランキングのトルクが要るのです。
なのでバッテリーはデカイ。

R1200GS
車載状態では
シート下にバッテリーがあって
外すときはバッテリーの上部を掴んで
引き上げる必要があるのですが
これが大変でした。
純正の鉛バッテリーは5kg以上あると思います。
ひょっとしたら6kgくらいあるかも。

これをSHORAIバッテリーにすると
1.4kgくらいになっちゃいます。
実に4分の1です。
冒頭に冗談みたいに軽いと書きましたが
手元に届いたときは
「これ、本当にバッテリー入ってるのか?」
と思いました。

このくらい軽くなると
乗っていても分かります。
運動性能が向上しますから。
左右への切り返しが軽快になります。

でも、ちょっと気になる点があります。
それは低温時の特性。
気温が高ければSHORAIバッテリーは
すさまじいパワーを持っているので
何ら問題は起きません。

ですが
経験上、R1200GSの場合は気温が
18度を切ると冷間時の始動性が悪化しました。
寒いときはバッテリーの放電特性が悪化するのです。
多気筒ならこの程度の気温でも問題ないのかもしれませんが
R1200GSはダメでした。
出先でクランキングしなかったときは焦りましたよ。
その状態で焦ってスターターモーターを回し続けると
間違いなく過放電でバッテリーはお亡くなりになります。

でも解決方法はあります。
バッテリーの温度を上げれば良いのです。

巷では「儀式」と呼ばれているようですが
低温時はいきなりクランキングせずに
まずはヘッドライトとかグリップヒーターとか
そこそこ電気を必要とするものをONにします。
で、ちょっと電気を使って数分待つ。
するとバッテリーが活性化して発熱します。
そうなったら始動OK。
大抵はなんとかなります。

あぁ、バッテリーってケミカルなんだなぁ
と思い知らされます。
寒いと化学反応が起きにくいんですね。

そうそう!
で、量産車のリチウムイオンバッテリーの
低温特性はどうなんだ!?
と気になって仕方なかったのです。

なんと!
メーカーサイトでは低温特性に自信があるようです。
いいなぁ。

R1200GSの時に買ったSHORAIバッテリーは
2019年に乗り換えたR1200RSでも継続使用しています。
恐らく通算7~8年くらいは使ってるのかな?
鉛バッテリーの寿命は3~5年くらいなので
結構長寿命ですね。
もっとも冬場は純正の鉛バッテリーに換えてしまっていますが。

本学Formula SAEチームもSHORAIバッテリーを使っているのですが
過放電でダメになったものがあったので殻割りしました。

中身はこんな感じ。

こんな感じのバッテリーパックが8個入っていました ガムープは取り出し後に絶縁のために貼ったものです
各バッテリーパックはこの基盤に半田付けされています バッテリーパックの端子が基板に残っちゃってますね
この基盤はバランス充電用 右に見える電線が各バッテリーパックに接続されています
ただし、バランス充電の回路自体は専用の充電器に内蔵されていて、外部からこの基板上の白いコネクタに接続して使います
これがケースです
これはケースの蓋に相当する部分
端子間にあるグレーのキャップを開けて専用のバランス受電期に接続します
ちなみに充電時間は数十分ほど あっという間に完了します

道具の進化 鉄器編

その後に登場するのは
鉄器
なのですが
これまた不思議です。

まず
そもそも自然に存在する鉄は酸化鉄です。
言ってみればサビです。
この状態では、単に熱を加えてもどうにもならない.。
鉄製品を作るための材料とするには
この状態から酸素を奪う還元作用によって
素材として使える鉄にしなければなりません。

そもそも
そんなこと誰がどうやって思い付いたのでしょうね。

さらに
鉄の融点は1,538°Cです。
薪を燃やした焚き火なんかじゃ溶けてくれません。
最低でも
木炭や石炭などのエネルギー密度の高い燃料と
鞴(ふいご)を使って風を送り
高温を得る必要があります。
それでも
そんなに簡単に溶けたりしませんけどね。

鉄の起源はこのように
地球上にそもそも存在する資源で
作ったとされる説に加えて
もう一つあります。

5000年ほど前に隕鉄(いんてつ)を利用した
とされる説です。
隕鉄とは隕石ではなく
宇宙から降ってくる鉄の塊です。
それを素材として鉄製品を作ったということですね。

もちろん多くは小さいものだったのでしょうけど
ニューヨークの自然史博物館に行くと
直径1mを超えるような巨大な隕鉄を見られます。
写真を撮ったはずなのですが行方不明です。
すみません。

宇宙から降ってきた
鉄を見つけるといっても
そう簡単には見つからないでしょう。
見つかったとしても
それを材料にして製品を作る!?
たまたま真っ赤に焼けた状態の隕鉄を見つけて
叩いて整形して
冷めたらいけそうだった?
そんなことあるのかなぁ?

隕鉄で作られた製品は
ヒッタイト帝国の遺跡や
エジプトの遺跡で見つかっています。

何にせよ鉄製の道具は
それまでの青銅のものに比べて遙かに強力なのですね。
特に刃物などは切れ味も強度も。
なので、鉄を得た民族は強大な力を得た
ということです。

恐らく
当時の鉄製の武器は
現在の核兵器に相当するくらいの
インパクトを持っていたのではないでしょうか。

ちなみに
日本の古来の製鉄は独特で
たたら製鉄といって
木炭を燃料として砂鉄から作るのですが
石炭を蒸し焼きにした燃料であるコークスと
鉄鉱石を使った西洋風の製鉄方法に比べて
極めて純度の高い鉄が得られるそうです。

その理由は
鉄鉱石やコークスには
そもそもリンや硫黄が含まれていて
これが不純物として鉄に混ざってしまうから。

たたら製鉄の場合は
そもそも木炭と砂鉄なので
不純物が入りようがないそうなのです。

その鉄は
玉鋼(たまはがね)といって
日本刀の材料になります。

日本刀に限らず
ノミやカンナなどの大工道具や
和包丁などをはじめとする
日本古来の刃物の多くは
炭素分が多くて固い「刃金」(はがね)と
炭素分が少なく柔らかい「地金」(じがね)を
接合(鍛接)して作られるという
これまた大変な
世界的にも希な製法で作られています。

簡単に「鍛接」なんていっても
これがなかなか難しいのです。
真っ赤に熱した鉄に
硼砂(ほうしゃ)をまぶして
同じく熱したもう一方を載せて…
叩く!
でもなかなかくっつきません。

苦労してくっついた後は
熱して叩いて成型です。
とはいえこれも難しい。

常温なら硬いはずの
炭素分が多い刃金
熱するとなぜかこれが地金より柔らかくなっちゃう。
なので叩くと刃金ばかり瘦せてしまう。

あらかた形になったら
焼きなましてみたり
削ってみたり
焼き入れしたり
研いだり…
いやー、もう大変。
楽しいけど。

なんでそんなこと知ってるかって?

そりゃ、自分でやってみたからですよ(笑)
カッコいい刃物なんて
なかなか作れませんよ。

こんな愛すべき難しい材料を
自在に操る本物の鍛冶屋さんは
日本には数えるほどしか残っていません。

みなさん、この素晴らしい文化を残すために
本物の日本の刃物を使いましょう。
オーダーすれば、希望に応じていろいろ作ってくれます。
私は毎年お願いしてます。
出来上がってきたのを見ると
ほれぼれしちゃいますよ。
もちろん使えばその良さはすぐわかります。

日本の鉄に興味のある方は
日刀保たたら
というキーワード検索してみてください。
刃物については
後日改めて記事にしましょう。

刃物に限らず鉄砲も鉄製です。
鉄砲は種子島に伝来しましたが
実は種子島には良質な砂鉄が採れる場所があったので
鉄砲の量産が可能になったそうです。

実は火縄銃の時代には
日本は世界で最も多くの鉄砲を
保有する国だったそうですよ。
驚きですね。

種子島には
鉄砲館
という大量の鉄砲を含む
種子島全般についての展示がある博物館があります。
お好きな方は機会があったらぜひ行ってみてください。

鉄製品の話をしていくときりがないので
この辺で終わりにしておきましょう。

道具の進化 青銅器編

土器の後は金属器ですね。

まず最初に出てくるのは
青銅器
ブロンズとも呼ばれる
銅と錫(スズ)の合金です。

日本で出土するのは
弥生時代から古墳時代にかけての
銅鐸や銅鏡、銅剣、銅矛
がよく知られるところですね。

出雲大社の隣にある島根県立古代出雲歴史博物館にて すさまじい数の銅矛が展示されてます

日本の場合
当初は青銅器が大陸から入ってきたのですが
そのタイミングが遅かったので
実用的な道具は
その後に入ってきた
鉄器に早々に置き換わってしまったようです。
なので
青銅製の実用品は結構少ないんですね。

そもそもの青銅器の始まりは
故意に銅と錫を混ぜ合わせたわけではなく
銅と錫の鉱床が近いことが多いなどの理由で
たまたま青銅だったりするそうです。

道具の材料としては
固い銅の方が錫よりも
優れているわけなのですが
問題は製造にあります。

銅の融点は 1,085°C
錫の融点は 231.9°C
これらの合金である青銅の融点は
この2種類の間の温度になるわけで
純粋な銅よりも低い温度で溶ける方が
作りやすいわけです。

しかしですよ
何でまたこんな材料を使い始めたのか
ってのが不思議なところです。

日本の場合は
まず製品として
形になったものが入ってきたのですが
最初に青銅を
実用的な金属材料として
使い始めた人は何者なんでしょうね。

だって、鉱石の状態を見たって
とてもこれから金属の道具が
作れるなんて思いませんよね。

さらに
鉱石から金属を取り出す方法は
一体どうしたら思いつくんでしょうか。

焚き火の中に鉱石を投げ込んだところで
金属はそう簡単に抽出できませんよ。

当時の人は
鉱石を砕いて粉状にした顔料で
化粧やボディペインティングをしていたので
その顔料がたまたま焚き火に入ったときに金属を発見した
なんて説もありますが…
そんなことあるのでしょうか。

まぁそんな疑問は残るにせよ
金属器の登場はこれまた凄い変化を及ぼします。

まずなんと言っても
木や石の道具に比べて扱いやすく修理しやすい。
例えば
刃物はいずれ刃先が鈍って切れなくなりますが
金属製なら研げばすぐに切れるようになります。
石器ではこうはいかない。

用途としては
農具、武器としての利用が多かったのでしょう。
あとは神事などに使う祭器ですかね。
どんな時代でも神事には
道具にせよ、建物にせよ
レベルの高い技術が使われることが多いですから。
日本の場合は
前述のような理由で
圧倒的に祭器が多いようです。

製造上の最も大きな変化としては
鋳物として製造(鋳造)できるので
型を作って思い通りの形で大量生産ができる
ということではないでしょうか。

これは凄いことですよ。
高性能な道具が大量に作れるのですから。

土器も型を作って同じ形をしたものを量産できますが
果たして縄文や弥生時代にやってたんでしょうか。
あまり聞き覚えがありません。

銅鐸にしたって
けっこう薄肉で大きいものを作ってますからね。
しかも大量に。

武器の場合は
強力なものを大量に作れる
ということで
恐らく争いごとの頻度と規模が
大きくなったんじゃないでしょうか。

テクノロジーが
争いに使われるというのは
最近に始まったことではないわけではなく
世の常なんですね。

道具の進化 土器編

石器の後は土器でしょう。

日本で土器の時代と言えば
なんと言っても縄文ですね。

みなさん
縄文は好きですか?
私は大好きです。

学校の歴史の授業で
縄文時代とか土器とかはサラッと触れますが
土器がどのように人類の生活を一変させたか
は習った記憶がありません。
いや、習ったけど覚えてないのかもしれない。
皆さんはどうですか?

土器で鍋などの調理器具をつくると
生活はどう変わるのでしょう?
今まで食べられなかったものを
煮たり焼いたりして食べることができるんですね。
米や麦なんかの穀物はそういった類いですね。

そういうものって往々にして保存が利くので
通常時はもちろん
獲物を捕ったり植物から採取することが難しい
冬とか干ばつの時期のために
食糧を蓄えておくことができる。

これは凄いことです。
土器ができるまで
そういったものは
食料にカウントされていなかったはずです。

なので
土器ができた途端に
食料が一気に増えたようなものです。

もう一つ重要なことがあります。
食料が不十分なときは
みんなが食糧確保のために動く必要があります。
自分で食料確保して
自分で家を建てて
自分で衣類を作るとか。

でも食糧事情が良くなって余裕ができると
土器を作る人
家を作る人
服を作る人
食料を調達する人など
特定の事に専念できることになります。
他人のために特定の仕事をする専門家の登場です。

専門家たちが生きるために必要な生活必需品は
他人である
他の分野の専門家
がなんとかしてくれる。

「食料は調達してきてやるから
お前は土器をバンバン作ってくれよ」
とか
「家作ってやるから食料くれよ」
みたいな感じですかね。

すると
生産者は一つのことに専念できるので
スキルが向上して
製品のクオリティが向上して
生産性も向上する。
結果、人口も増えて
ますます生産性が向上する。

これがそもそもの
仕事らしい仕事の始まりではないでしょうか。

石器時代にも
手間の掛かる石器を作るのが
得意な人はいたでしょうけど
土器によって大幅に
食料の余裕ができることと関連して
専門家が生まれることによって
ますます生活の質が向上して
人口が増えたのでしょうね。

それにしても縄文土器。
凄い形してますよね。
代表的なのは火焔型土器でしょう。
社会科の教科書にも出てますよね。
実物を見たときは驚きました。
想像以上に大きくて
凄い迫力です。

一見肉厚に見えるところは
割れ防ぐためか
ちゃんと肉抜きされていたりするんです。
加えて実用性を全く感じさせないところも驚きです(笑)
煮炊きじゃないんかい!
一体何のために作ったのでしょうか。

あとは
印象的なところで行くと遮光器土偶ですかね。
これまた凄い。
一体何をモチーフにして
どう考えたらこんなものができるのか。
こういうのって
よく神事に使われたと考えられる
とか説明されていることがありますが
単に人を喜ばせるための
エンターテイメント的なもの
かもしれないなとも思ったりします。
宇宙人モチーフ説もありますね。

いずれにせよ
誰もが作れたわけではなく
専門家の仕業でしょう。

八戸市埋蔵文化財センター 是川縄文館にて ここには遮光器土偶がいっぱいあります

土器にしても土偶にしても
青森県は素晴らしい縄文の遺跡のメッカです。
三内丸山遺跡なんて素晴らしいですよ。

大型掘立柱建物跡と呼ばれる
巨大な櫓
直径1メートルで、長さ10数メートルの
柱を立てた構造なんですが
金属器が無い
つまりノコギリが無くて
せいぜい石斧程度で
どうやってあの木を切って
どうやって運んで
どうやって建てたのでしょうね。

体育館のような(というのは大げさかも)巨大な竪穴式住居の右にあるのが「大型掘立柱建物」 もちろん両方復元です 柱の根元部分は出土した現物を見ることができます

あと翡翠のネックレスとかも凄いです。
翡翠はダイヤモンドの8割くらいの硬さがあります。
それを丸く小さく整形して
直径1ミリちょっとの穴が空いてたりします。
ドリルなんて無いのに
一体どうやったらそんなことができるのでしょう。

そんなことを考えていると
あぁ、我々は縄文人に比べて
あらゆることが進化している
なんてとても言えないなぁ
とか思ってしまうのです。