どれだけ本気か

伝わりにくいことの一つに気付きました。
それは

本気度

どういうことかというと
真剣に一所懸命やる
といっても
その度合いは人によって違うわけで
それは特に数値化できないことで顕著になります。

学生がレーシングカーなんかを作っていると
結構分かりやすいですよ。

ある者は、本気でやる
というと、それこそ
ぶっ倒れるまでやったりすることがあるけど

別の者はそうでもなかったりします。
でも、本人は本気でやってるつもりです。
別に手を抜いているつもりは無い。

意識のレベルなんて目に見えませんし
どれくらい強く思っているかなんて分からないし
どこが限界かなんて経験が無ければ
いや、ある程度経験があってもよく分かりません。

なので
「本気でやろうぜ!」
「おー!」
となっても
結構温度差があったりするのは仕方ないのです。

でもやはり、経験の数は効いてくるでしょうね。

スポーツでも何でも
根詰めて一所懸命やった経験がある者は強いですね。

そうそう。
一所懸命やった経験があると
その末に何が待っているか
感覚的に分かっていたりするので
成功体験がある者ほど勇気を持ってチャレンジします。

そんな風に、うまくいっちゃう者は
その調子でドンドン行ってくれれば良いので
天井を外してあげて
成果を評価してあげればOKです。

複数人が活動している夢工房では
もちろんバラツキはあるし
浮き沈みもあります。

なので、うまくいかない者も当然いるわけですが
外力でやらせちゃうと
やらされ人間になっちゃいます。

頑張った経験があまりなくて
本気度が上げられない者は
結構共通点があって

メンタルやフィジカルに対する
防御壁の構築を優先しているというか
そういうこともあって
リミッターを低く設定していることが多いですね。

もちろん意識的では無いことがほとんどですが。

まぁ、限界が分からないのだから
自動的にそうなっちゃうのも分からなくもない。

とはいうものの
チームパフォーマンスを上げるには
放置というわけにもいきません。

とはいえ、その状態を変えられるのは本人しかいないので
自発的に何とかしたいと思う環境が重要
ということになるかと思います。

そんなの当たり前だろうって?
まぁ、そうなんですけど
それをどうにかするのは難しいことです。

その環境の構築に20年も試行錯誤しているわけですが
結局のところ
いわゆる「人間力」を高めていくしかないのだろうな
というのが現状の結論です。
もちろん、学生も教員もです。

で、この挑戦は数年前から始まっていて
現状はうまくいっていると思います。

こういうのは終着点はないのでしょうけど
どこまで行けるか、やってみてのお楽しみです。

人生は糾える縄のごとし

人生は
良いこともあれば悪いこともある
楽しいこともあれば困難もあるわけで
そんなの当たり前なのですが

多くの若いコは
そうは思いません。

理想の人生みたいのがあって
それを目指す。

そこでは
困難は無く
収入には困らず
豊かで楽しい暮らしがある。
きっとそんな世界がある。

一所懸命勉強して良い会社に入ると
そんな世界に行ける。

行けなかったら負け組だ。

そうじゃありませんか?

だから
何かやってみて困難に直面すると
自分には向いてないとか
自分はダメだとか判断しちゃったりするし

ものごとの多面性を理解していないから
ブラック企業とか簡単に定義づけちゃうし

相手のことなんて考えられないから
文句ばっかり言ったりするし

頭が良いとか悪いとか簡単に言うし。

でも、若い頃なんて皆そんなもんですよね。
私なんか、相当アホでしたよ。

だって、若いってことは
そもそも経験が無いわけで
想像力で未来を構成しちゃうのですから
ほとんど偏見の思い込みですよ。
何も無いよりずっと良いのかもしれませんけどね。

面白いのは
そういう経験の無い若者に
経験豊富な人間が頑張って語ったところで
大して理解できないってことです。

ま、考えてみれば当たり前で
経験が無いことについて聞いたところで
これまた想像の世界なわけですもの。

年長者が若いコに切々と語って
「なんで分かんねぇんだよ~」
なんて言ったりしますが

自分だってその年頃には分かんなかったんじゃないの?
と思いますよ。

ま、私も似たようなことしてるかもしれませんけどね(笑)

で、今日は何が言いたかったかというと

ものをつくると
特にチームでものをつくると

そういう思い込みで勘違いの壁にぶつかることになるわけで
ホントのところが見えやすいのではないかな

ということです。

例えば
業績の良い企業は
簡単な楽な仕事ばっかりして
業績を上げているわけでは無いわけで
相当頑張って人がいるわけで

レーシングチームは
楽ちんでカッコ付けてれば済む話ではなく
カッコいいことするために
どれだけ頑張ってるか知ってるかい?
ってなことで

そんな世界でいいカッコしたければ
それなりのことをする必要があるのは当然です。

やり甲斐を感じて夢中でやっていれば
充実感があるでしょうけど

同じことを受け身の人間にやらせる
それはブラックな仕事に感じるでしょう。

何かをやって失敗したり怒られたり
そういう経験は必ず役に立ったりするし

労せずに良い思いをしたり
楽ちんな環境に安住したりすると
必ずそれ相応のことが起きるのは当然です。

明暗とか
浮いたり沈んだりとか
その両方があるのは当然で
それらが無いとつまらないのですよね。

抑揚の無い人生なんて
一体何が面白いんだ?
と思います。

まさに
人生は糾える縄のごとし
というわけですよ。

ものをつくって
コンペティションとかやってると
そういうことを次々に経験することになるわけで
結構色々分かると思います。

その辺だけでも分かっていれば
ネガティブな事象に遭遇しても
そこに心が捕らわれずに

「ま、そんなもんだろ」
(「でも、この経験は
いつかきっと役に立つぞ」と思えれば最高)

ってやり過ごして

「次は頑張ろう」

って思うこともできますよね。

夢工房の連中、その辺は
かなり見えてきているのではないかと思っています。

うん
技術は人なり
だな。

先送りしたら終わりだ

ものづくりものづくり言ってますが
今日は、ちょっとだけ夢工房のものづくりの紹介でもしてみましょう。
ちょっとだけ変わった切り口で。

いきなり金属の塊です。
簡単に言うと鉄の塊なのですが
工科系の人間は純粋な鉄以外を「鉄」と言ってはいけないようなので
鉄系の合金と言っておきましょう。

これは今日、材料屋さんに注文していたのを受け取ってきました。
サイズは表面に書いてあるとおり
50mm x 90mm x 165mmです。
これで1万5000円くらいします。
すっごく高いです。ムチャクチャ高いです。

なんでこんなに高いのかというと
ものすごく硬いからです。
SK材(エスケーざい)とか工具鋼とか呼ばれる特殊な材料です。

普通は、鉄系の材料は熱処理をして硬くします
「焼き入れ」とか聞くでしょう?

コイツは熱処理しない「生(ナマ)」の」ままで
すっごく硬い材料なのです。

今回は、これで金属の板材を曲げる道具を作ります。
金属を加工する道具って、大抵は凄く硬いとかゴッツいとか
そんなのばかりです。

そう、夢工房は
道具から作ります。
買ったら高かったり
特殊なものが欲しかったり
すぐ欲しかったりするので
自分達で道具を作ることも多いですね。

使う材料もいろいろです。

一口に鉄系の合金と言っても多種多様だし
アルミの合金なんかも色々あります。

その他にも、チタンとかマグネシウムとかタングステンとかインコネルとか…
数え上げたらキリがありません。

工科系の学生といえども
普通は一生触ることはおろか
そういう材料を使って、自分達で何かを作るなんて経験はできないと思います。

まして、材料を適材適所で使い分けるなんて
授業で勉強してもできるようになることではない貴重な経験です。

今回は、このSK材ネタで終わりにしちゃおうかと思ったのですが
ついでですので、他のものも紹介してみましょう。

このテーブルは溶接用です。
天板は分厚い鉄板で、この上で小さい部品の溶接作業をします。
こういうものも作ります。
作業環境は大事ですから。
買ったら高いでしょうけど、自分達で作れば大したことはありません。

なんかいろいろ乗っちゃってますが
この穴が空いた巨大な鉄板の台は
車を作る上でとても大事です。
組立定盤とか溶接定盤とか呼んでます。

この平面が出た台を基準として
レーシングカーのフレーム(骨組み)をはじめとした大きなものを溶接します。
そうしないと精度が出ないのです。
空間で適当に溶接しちゃったら、設計上の性能は出ませんから。

これは20年前に初期のメンバーが最初のマシンを作る前に作りました。
こんなもの買っていたら、お金がいくらあっても足りません。
ちなみに、この鉄板だけでも400kg以上の重量があるはずです。

これまたいろいろ乗っちゃってますが、図面をチェックするためのテーブルです。
学生達は「検図テーブル」と呼んでいます。
これはコロナ禍のさなか、4年生達が既存のテーブルを改造して
天板をカーボンファイバーにしました。
ちょっと品質に難ありですが、まぁ、実験的に作った割にはまあまあです。

エンジンの馬力を測る装置も作っちゃいます。
エンジンダイナモとか呼ばれますね。

馬力の測定などを、いちいち外部にお願いしていたら
時間もお金も大変なことになります。
なので、自分達で持っておきたい。
もちろん、買ったら高いので作ります。

今は、今年採用する新エンジンに合わせて
既存の装置を改造しています。
これからいろいろ取り付けていきます。

これはカーボンファイバーの部品を作るための金型ですね。

グラスファイバーとかカーボンファイバーとか
そういう材料もよく使います。

そういう部品を作るときは
金属製の型なんてあまりつかわないものですが
ちょっとこだわりたいことや試したいことがあったりすると変わったことをやりますね。
ゴム型とか樹脂型とか、他にも色々やってます。

いろいろと工作してますが、金属ばかりじゃなくて
木やプラスチックなんかも使います。

コンピューター制御の加工機械なんかも使う反面
手作業でゴリゴリやってたりもします。

もちろん、彼らはエンジニアになるので
ちゃーんと設計して作ってますよ。

卒業生の80%以上は設計者になってますが
ものをつくったことがないのに
良い設計しましょうというのは無理だと思います。

今回紹介したものでお分かりになったかもしれませんが
やりたいことはやりたいわけで
設備が無いとか、お金が無いとか
言い訳したくないのです。

なので
無ければ作ろうよ
となるわけです。

先送りしたら終わりです。