三現主義って知ってるかい?

三現主義って知ってますか?
開発の現場では
ものすごく昔から言われている言葉です。

あ、「現場」って言うと
肉体労働が行われている職場だって思う人がいますけど
実際に仕事が行われてる場所を総じてそう言います。
なので、かなり広い意味合いを持っています。

そうそう、三現主義は

現場・現物・現実

を大事にして、それに則して仕事しましょう!
ということです。

理屈は大事だけど
それだけじゃダメってことね。

「やってみもせんで何が分かる」
ですから。

ITテクノロジーの発達で
やってみもせんで色々分かるようになってはきましたが
それでも最後は
やらないと見えないものはあります。

なんたって使うのは人間ですから
計算通りにいかないことも多いし
リアルのみが持つ説得力や価値があります。

設計してる時に煮詰まっちゃうことがあるのですが
そんな時は、ためらうことなく現物を見ることにしていました。
なので試作の現場にも良く行ってましたね。

PCとにらめっこして煮詰まってる暇があったら
現場で現物見た方が大抵は早いです。

シミュレーション技術は
基本的な方向性などを見る時などは大変便利ですが
自然環境やイレギュラーな事象を全て入れ込むわけにはいきませんし
そもそも、そんなことやってる暇あんのか?
ってのもあります。

良いもの作るのには時間が掛かるものだ
という先入観があるかもしれませんが
それは素人考えなのです。

時間を掛けたものは人件費が掛かるわけで
当然コストアップするでしょう。

なので、良いものを時間を掛けずに作る必要があるのですね。
なので、余計な手間を掛けちゃダメで
シミュレーションに時間を掛けて
開発期間が伸びるなんてのは本末転倒なのです。

もっとも、それをやっておくことで
その後の開発が総じて短期間で済む
という話であれば、それはそれだったりしますが。

で、開発に関わる諸々の部署が近接しているって
とても大事なことなんです。

ほとんどの自動車メーカーは
設計、試作、テストのそれぞれの部署が
近接して置かれていることがほとんどだと思います。

これ、やはり三現主義に基づいてるのですね。

というわけで、夢工房は
一つの部屋の中で、企画して設計して作って…
とできるようにワンパックになっています。
今や物があふれちゃって、少々狭いですが(笑)

こういう環境って、ありそうで無いのですよ。

結局「心」が作るのだ

当方は工科系大学なので
「良いもの」を作れる学生を育成したい。
もちろん、我が夢工房もしかり。

学生達は、クルマとか惑星探査機とかを作っているわけですが
よく頑張ってますよ。

クルマにせよ惑星探査機にせよ
何のためかというと
人のためなのですよね。
人のための良いものです。

レーシングカーであれば
ドライバーにとって扱いやすく性能を発揮できるように。
惑星探査機であれば
…なんだろう(笑)
惑星探査機の場合は、目的が非常に広範囲に及ぶので
表現するのが難しいのですが
望む機能を発揮するように、ってところでしょう。
もちろん「人が」望む機能です。

そういったことのために
学生は色々学んでいます。
工学をはじめ、それはもう色々。

卒業すれば
彼らは、お客さんのために力を発揮するのです。
良いものを作ってお客さんを喜ばせるために。

もちろん、そこには個人としての欲求もあるでしょうね。
「こんなものを作ってみたい!」
そういうパッションは大事です。
が!
それが組織とお客さんの利益に繋がらないと意味がありません。
エンジニアのパッションは
組織のパッションと合致しないと意味はありません。

個人的な欲求を果たしたいだけなら
趣味でやるべきです。
おっと、話が脱線しそうだ。

良いものを作るには
高い技術が必要なのは当然ですが
それだけで良いものになるかというと話は別です。

ものは理論とか数式でできているわけではないからです。

誰にどんな風に使ってもらうの?
どう感じて欲しいの?

そういうのって凄く大事です。
近年に言われ始めた
ユーザ・エクスペリエンス(ユーザー体験)
ってヤツですね。
これが価値の本質でしょう。

でも、こういうのは学校では教わる機会が無いのではないかな。
仮に教わったなら、それを実践して磨きたいとことです。
そこが学びとして一番面白いところだと思うのです。

作り手側が、使い手側の視点を持って考えるという
最も重要なところでもあります。

で、この辺を考え始めると
作り手側の人となりが大事になってきます。

理論とチェックリストがあれば
良いものが作れるってわけじゃないよ
ということですね。

東京オリンピックのキャッチフレーズでしたっけ?
「おもてなし」
とか、しきりに言われるようになって
なんか言葉が上滑りしてるんじゃないか?
とか思っていたのですが
やはりその辺は重要なのだと
今更ながら感じでおります。

日本の製品に対する評価って
その辺が効いてきてるのでしょうね。

やはり、作り手側の心が大事だってことです。

そんなことを言うと
「なに言ってんだ!心だけで作れたら苦労しないぞ!」
とか言われそうですが
パッション(心)があれば
欲しい技術を手に入れようとしますから大丈夫。

逆に、知能が高くても心が無ければ
良いものは作れませんよ。

うん。「技術は人なり」だな。

夢工房も一歩前へ

「先生、会社入ったら、まんま夢工房でしたよ!」

今日は今年の春に卒業して
完成車メーカーに就職した卒業生の一人から
たまたま話を聞く機会を得ました。
どうやら楽しく仕事ができているようです。

どうやら卒業生の多くは
会社に入ってから、あまり大きなギャップを感じずに
業務遂行できているように感じます。

今回、冒頭のような感想を聞けたのは何よりなのだけど
全ての卒業生が同じような感想を持っているかというと
決してそんなことはないはず
というお断りはしておきます。

もちろん、入った会社によって
学生時代に何をどのようにやっていたか
色々なバックグラウンドによって
感想は違ってくると思います。

ここ、夢工房は
学生の主体性によって回っているのですが
そこに管理監督者の考えが介入するのは
安全面や開発の基本をはじめとした
諸管理から当然のことです。

この部屋の運用のモデルは
前職でやっていた特殊部隊のやり方なのですが
それもかれこれ20年前のことで
いまだにこのやり方が通用しているのは
嬉しくもあり、疑問を持つところでもあるのです。

なので、卒業生から広く話を聞いて
時代に即した要素を入れて
先を見越した改変をしていきたいですね。

ただ、基本の部分は時代によらず不変なのかな
という気もしているのですけどね。
この核心になる部分も
より明確化と強化をする必要があるでしょう。

夢工房のやり方は
あまり一つのことに固執しているつもりはないのだけど
この核心部分の明確化によって
一歩前進させる時が来ている気がします。

今日は2年生メンバーが本格的なテスト走行に帯同した初日となりました。
彼らがチームに所属してからおおよそ1年半
やっとコースに出られました。
このご時世ですので、感染防止の対策とか
色々工夫が必要だったようですが
彼らはなかなか良い動きをしていたようですので
今後に期待ができそうです。