異分野から学ぶ ビギナーへ向けた「ものづくりの5箇条」

夢工房で頑張っている学生達の環境作りのために
何かヒントは無いかな
と日夜捜索しています。

夢工房のような日夜動き続けている環境でも
成長に差が出ます。

ここには色んな経験者がいたり
小さいながら色んな機材が揃っていたり
材料だって色々あって
過去の参考になる部品や
ジャンル違いの参考になる部品だって沢山あります。

でも、単にそこにいただけでは
十分な成長はできません。

今の自分に希望があって
この部屋にあるものが
その希望に関連付いていて
「自分にとって必要なもの」になっているなら
それらは意味のあるものとして「見える」でしょう。

でも、そうでなければ
「あまり関係ないもの」で
単なる空気みたいなものです。

前提としては
自分の目指すもの
ゴールを明確にした上で
自分にとって重要だと思うものに
興味を持って集中すること
です。

で、一つヒントを見つけましたよ。

今回のネタは
語学学習をものづくりの環境に活かそう
です。

何かを身に付けるプロセスって
同じプロセスが適用できたりするものです。

ネタの元となっているのは
TEDのプレゼンテーションだったり
英語学習のサイトだったりですが
まんまパクリではなくて
かなりカスタムしちゃっているので
引用元を開示する必要は無いでしょう。

ではいきますよ。

その1
最初から、いきなり難しい高度なことをやる必要は無い。
けれど、自分の担当領域について
考えたり行動したりすることを日常にすること。

考えて、設計して、作って、試して
これを日常にすること。

その2
レベルが低いからといって
躊躇しないこと。
失敗を恐れないこと。

何度もやった経験や
色々やって得た「引き出し」こそが
成長にとってもっとも重要だから。

その3
結局どうしたいのか
というゴールを明確にすること。

「何のために」が無ければ
「どうすべきか」は決まらない。

その4
頭だけでやろうとしないこと。
開発は肉体的なトレーニングと同じだと思って
とにかくできるようになるまでやること。

ある程度やっていくと
関連する情報やノウハウが理解できてくる。
(プロフェッショナルの世界は
何のために何をやっているのか など)

その5
開発に取り組むときの精神状態を整える工夫をすること。
ネガティブな感情ではうまく行かないので
楽しく頑張れる状態を作る工夫をすること。

これは自分が環境作りに関わる
ということでもある。

頑張るのは重要だし
性能や完成度の高さは重要だが
「完璧」に拘らないこと。
ものごとは、そう簡単に完璧にはならない。

ここに拘りすぎると
自信を喪失したり
できないことに対して苛立つことにもなる。

そして、もっとも危険なことは
完璧を追求することによって
最も重要なリソースである
「時間」を失ってしまうこと。

さあ、いかがですか?
なかなか良いところを押さえている気がするのですが。

AIが来るその先は

ちらほらAIをネタにしてますけど
今回もAIネタにしてみます。

ChatGPT使ってみましたか?
どのように使いましたか?

最初は検索エンジンのような使い方とかですかね。

そもそも検索エンジンをなぜ使うかというと
知りたいことがあって
その答えを知る糸口として
検索してみて
その結果に表示されたサイトを開いてみて
そこから答えを見つける
とういったことがしたいわけですよね。

で、ChatGPTを使ったりすると
知りたいことを聞けば
直球で教えてくれるので
表示される関連サイトを開いて
探すような手間が省けますよね。

そうなってくると
「聞き方」が重要になります。
ちゃんと聞かないと
ちゃんと答えてくれませんから。

まぁ、さすがにAIなので
ある程度は質問の意図を汲み取ってくれる
ようなところはあるようです。

さてさて
ここですでに問題の核心に迫っています。

「ちゃんと聞かないと」
です。

つまり、ゴールの設定をちゃんと指示してあげないと
そのために必要なことは構成できないってことです。

「なんでもいいから適当にやっておいてよ」
みたいのには対応できませんよ
ってことです。
結果は指示次第です。

残念だったな、のび太君!

なので、AIが面倒なことや難しいことをやってくれて
楽ちんなのかもしれませんが
ヤツらに高度なことをやらせるためには
指示者がそれなりに分かっていないとダメだよね
ということです。

そういうのは設計の環境なんかでもあるのです。

AIではありませんが
3Dの設計ソフトで
強度解析やら機構解析やら
色々凄いことができるソフトウェアは
ずいぶん前からあるのですが
凄いことをやらせようとするなら
基本的にその条件設定とか
考え方がちゃんとしていないと
ちゃんと動かないのです。

マニュアル読んで
使い方を理解しておけばいい
って話ではないですよ。

(どうしたらいいかを
何かを見たり人から聞いたりして
それをやればいい
ということではないということ)

まぁ、原理原則は分かっていないと
話にならないよね
ということです。

それさえ分かっていれば
今まで手描き計算でゴリゴリやって
頭痛くなっちゃうようなプロセスはPCにお任せして
より高度な設計ができたり
その先に行けるってことです。

これも勘違いしちゃいけないのは
やりたいことがはっきりしていないのに
PCが勝手にやってくれる
なんてことは無いってことです。

今回ネタにしたかったことはそういうことです。

ちゃんとゴールを設定できることが重要になるよ
ということです。
もちろんそれは、自発的に、内発的にです。
「夢を見られる」と言っても良いかもしれません。

自由であることが重要という言い方もできるかな。
自由って「自らに由る」で
「自分で決める」ということですからね。

それができれば
あとはAIなどのツールや環境を使って
より具体的な手段にスピーディーに落とし込めます。
そうしたら、あとはやるだけ
形にするだけです。

そんな将来は近いうちにやってくるのでしょうけど
そういう環境に合わせて労働環境は
再構築されていくかもしれませんね。

AIに向かって指示を出す人

AIの出した答えを実行する人

そんなふうに。
これはすでに皆さん想像が付いているかと思います。

もちろん、どちらも必要で重要なのですが
どちらをやるかはその人次第です。

あと興味深いところでは
専門領域を飛び越えて
より広い範囲に関われる可能性もあるのかな
とも思っています。

最初は専門領域の壁というか
既得権益の壁みたいのが立ちはだかるかもしれませんが
そのうちそいつは破壊されてしまうかもしれません。

だって
弁護士が要らなくなるかもしれない
とかいう話ですから
エンジニアリングの世界も相当変わりますよ。

この件も引き続き検討が必要ですね。

実際それは失敗ではない

今回のH3ロケットの打ち上げが中止になりました。

このロケットの開発には
当研究室の卒業生も関わっていたりするので
気になって仕方がないのです。

彼は今頃、種子島の宇宙センターでヒーヒー言ってるはずです。
頑張れ!頑張れ!!

で、この打ち上げの中止に対して
会見で失敗だと認めさせたかった記者がいて
その捨て台詞がどうとかで盛り上がっていますね。

その記者さん、何かトラウマでも持っているのでしょうか。
確かに意地悪で失礼な印象はあったのですが
実際のところはどうなんだ?
とお思いの方もいるかと思います。

打上げの際に想定外の事象が発生して
シーケンスが止まっちゃっても
設計通りにエンジンが停止したのであれば
それは失敗ではない

その辺が分かりにくいところだったのではないかな
と思います。

で、打ち上げたかったのに打ち上げられなかったのだから
それは失敗なのではないか、と。

そもそも、ロケットみたいに巨大で複雑なシステムは
そうそう簡単に完璧な状態になんてならないでしょうね。

忘れてはならないのは
H3は新型機だということです。

もちろん、各部単体でのテストは散々やって
システム単位での性能や信頼性の確認はするのですが
「試しにそいつらを組み上げて本番前に打ってみよう!」
なんてことができないのがロケットです。

要は、打上げできる状態にして
やってみないことには
どうなるか分からない部分がある
そういうことでしょう。

いくら入念に検討して設計して
可能な限り正確に製作して
隅々まで確認しても
自然の環境において、いざ打ち上げるとなると
何かしらイレギュラーな
想像も付かないことが起きても何らおかしくありません。

自然も人工の環境も含めて
前もって100%予測するなんて不可能です。

それに、やっているのは人間で
凄まじい人数が関わっているわけだから
そういう面でも想定外のことが起きたり
見逃しやミスを完全に排除するのは困難でしょう。

もちろんそれらは
限られた時間やコストなど
制限の中でやっているわけですからなおさらです。

そんな中で100%思った通りにできたら神様ですよ。

必ず最後には
やってみないと分からないこと
が残るのです。

クルマの開発なんかであれば試作車を作って
量産を立ち上げる前に完成度を高めます。

それでもイレギュラーなトラブルが起きない保証はなくて
量産されてから設計変更するなんてこともあります。
深刻なヤツはリコールとか呼ばれますよね。

鉄道車両はクルマみたいに
量産前にテストコースをバンバン走って
トラブルの潰し込みをやる
なんてことはできないので
完成したら工場から出荷して
お客さんを乗せた運行をしながら
必要に応じて手直しするそうです。

たぶん、巨大な客船とかも同じような感じではないかな。

そうやって、製造現場からリリースしてから対応できるものは
「この日に出しますよ!」
ってローンチの日を決めて、バーン!といけます。

ロケットの打ち上げにおいては
そうはいかないので
「打上げ期間」が設定されていて
その期間内で打上げができたら成功で
できなかったら失敗
そういうものでしょう。

やってみないと分からないことはあるのだから
その時に重大事故が起きないように
仕切り直しが効くように計画しておいて
何かあったら期間内に対応できるようにしておく
そういうふうにプロジェクトを組んでいるのだと思います。

なので、今回起きたのは想定外の事象だったかもしれませんが
解析の結果
「あぁ、こういうことが起きる可能性があるのか!」
と知見を得られるわけで
事故でもなければ失敗でもない。

むしろセーフティのシステム設計においては
成功と言っても良いかもしれない。

たぶんあの記者さん
まさかネットでこんなに叩かれるなんて思っていなくて
ビックリしたりガッカリしたりして
「むしろ失敗したのは俺だ」
なんて思っているかもしれません。
でも、これでクサらずに良い仕事をしてほしいものです。

ちなみに
多くの開発の仕事はチームでしたりするものですが
正直なところ
失敗の経験のない者とは組みたくないです。

だって、新しいことをやれば
何かしらの失敗をするのは当然です。

その度に落ち込んで思考停止していたら
仕事になりませんから。

最後に

知っている人もいると思いますが
このH3ロケットは我が国の宇宙開発の今後にとって
大変重要なのです。

というのも
これまで使っていたH2ロケットが
初めて打上げされたのは1994年なので
H3は実に30年ぶりの新型機です。

当然、当時の開発者は一線を退く年齢で
技術の継承を考えるとギリギリのタイミング。

なのでH3の開発者達の多くは
これがデビュー作で
日本の宇宙開発の将来を決める
重責を担っているわけです。

そんな重荷を背負いながら
彼らはこんなに大きな
やってみなければ分からないこと
にチャレンジしているのですね。

トラブルから学びながら。

実に凄いことだと思います。

ぜひ期間内に打上げを成功させて欲しいものです。