先送りしたら終わりだ

ものづくりものづくり言ってますが
今日は、ちょっとだけ夢工房のものづくりの紹介でもしてみましょう。
ちょっとだけ変わった切り口で。

いきなり金属の塊です。
簡単に言うと鉄の塊なのですが
工科系の人間は純粋な鉄以外を「鉄」と言ってはいけないようなので
鉄系の合金と言っておきましょう。

これは今日、材料屋さんに注文していたのを受け取ってきました。
サイズは表面に書いてあるとおり
50mm x 90mm x 165mmです。
これで1万5000円くらいします。
すっごく高いです。ムチャクチャ高いです。

なんでこんなに高いのかというと
ものすごく硬いからです。
SK材(エスケーざい)とか工具鋼とか呼ばれる特殊な材料です。

普通は、鉄系の材料は熱処理をして硬くします
「焼き入れ」とか聞くでしょう?

コイツは熱処理しない「生(ナマ)」の」ままで
すっごく硬い材料なのです。

今回は、これで金属の板材を曲げる道具を作ります。
金属を加工する道具って、大抵は凄く硬いとかゴッツいとか
そんなのばかりです。

そう、夢工房は
道具から作ります。
買ったら高かったり
特殊なものが欲しかったり
すぐ欲しかったりするので
自分達で道具を作ることも多いですね。

使う材料もいろいろです。

一口に鉄系の合金と言っても多種多様だし
アルミの合金なんかも色々あります。

その他にも、チタンとかマグネシウムとかタングステンとかインコネルとか…
数え上げたらキリがありません。

工科系の学生といえども
普通は一生触ることはおろか
そういう材料を使って、自分達で何かを作るなんて経験はできないと思います。

まして、材料を適材適所で使い分けるなんて
授業で勉強してもできるようになることではない貴重な経験です。

今回は、このSK材ネタで終わりにしちゃおうかと思ったのですが
ついでですので、他のものも紹介してみましょう。

このテーブルは溶接用です。
天板は分厚い鉄板で、この上で小さい部品の溶接作業をします。
こういうものも作ります。
作業環境は大事ですから。
買ったら高いでしょうけど、自分達で作れば大したことはありません。

なんかいろいろ乗っちゃってますが
この穴が空いた巨大な鉄板の台は
車を作る上でとても大事です。
組立定盤とか溶接定盤とか呼んでます。

この平面が出た台を基準として
レーシングカーのフレーム(骨組み)をはじめとした大きなものを溶接します。
そうしないと精度が出ないのです。
空間で適当に溶接しちゃったら、設計上の性能は出ませんから。

これは20年前に初期のメンバーが最初のマシンを作る前に作りました。
こんなもの買っていたら、お金がいくらあっても足りません。
ちなみに、この鉄板だけでも400kg以上の重量があるはずです。

これまたいろいろ乗っちゃってますが、図面をチェックするためのテーブルです。
学生達は「検図テーブル」と呼んでいます。
これはコロナ禍のさなか、4年生達が既存のテーブルを改造して
天板をカーボンファイバーにしました。
ちょっと品質に難ありですが、まぁ、実験的に作った割にはまあまあです。

エンジンの馬力を測る装置も作っちゃいます。
エンジンダイナモとか呼ばれますね。

馬力の測定などを、いちいち外部にお願いしていたら
時間もお金も大変なことになります。
なので、自分達で持っておきたい。
もちろん、買ったら高いので作ります。

今は、今年採用する新エンジンに合わせて
既存の装置を改造しています。
これからいろいろ取り付けていきます。

これはカーボンファイバーの部品を作るための金型ですね。

グラスファイバーとかカーボンファイバーとか
そういう材料もよく使います。

そういう部品を作るときは
金属製の型なんてあまりつかわないものですが
ちょっとこだわりたいことや試したいことがあったりすると変わったことをやりますね。
ゴム型とか樹脂型とか、他にも色々やってます。

いろいろと工作してますが、金属ばかりじゃなくて
木やプラスチックなんかも使います。

コンピューター制御の加工機械なんかも使う反面
手作業でゴリゴリやってたりもします。

もちろん、彼らはエンジニアになるので
ちゃーんと設計して作ってますよ。

卒業生の80%以上は設計者になってますが
ものをつくったことがないのに
良い設計しましょうというのは無理だと思います。

今回紹介したものでお分かりになったかもしれませんが
やりたいことはやりたいわけで
設備が無いとか、お金が無いとか
言い訳したくないのです。

なので
無ければ作ろうよ
となるわけです。

先送りしたら終わりです。

「思い」が切れないように

どうしてもどうしても
やりたいことがあるなら
うまくいく方法はあります。

とてもシンプルです。

どうしたいのか
を思い続けることです。

そのためのことを
できるだけすぐにやる
できるだけたくさんやる

そして諦めずに続ける

それだけです。

これは、自身で色々やった結果でも分かったし
仕事で色んな人と接しても分かったし
学生を見ていても分かりました。

分かっていたらできるのか?
というと
分かっているのとできるのは別ですから
それはあなた次第です
というところでしょうね。

どうですか?
シンプルでしょう?

どうしたいのか
という思いが切れるとお終いです。

なので
大好きなことをやることは重要だし
やることを好きになるための工夫も重要でしょう。

もっとも、うまくいってる人は
そういうのを意識しなくても
自然とできてたりするのですけどね。

学生達の中には
こういうことに気付いて
急激に方向転換して突っ込んでいく者がいて
そういうのは見ていて面白いですね。
「開眼する」というのでしょうか。

みるみる成長していくし
あぁ、夢って叶うんだなぁ
と思います。

こんなことを言っていますが
では、自分が納得いくところまで行けたのか
というと
うまくいったものも、あるにはありますが
どうせ終着点は無いわけで
まだ納得はできていません。
継続中です。

そうそう
大事なことがあります。

好きなことを頑張っていても
必ず困難にぶつかったり
低調な時期がやってきます。

困難なら努力で打破できるでしょう。
なので頑張り続けて壁をぶち破りましょう。

でも、低調な時期は手強いです。
何をどうやってもダメ
そもそも、やるべきことに対して
モチベーションも上がらなくなって
メンタルにも不調を来すことがあります。

そんな時期が1年から3年くらい続くかもしれません。

それでも諦めたくない

そう思ったときにどうするか
これも大事なことです。

そして、そんな困難な状態を乗り越えて継続することができたら
必ず大きく成長できます。
なので、そこまで行けたらチャンスは目前なのかもしれません。

ただ
自力ではどうにもならない状態になることもあるかもしれません。
そういう場合はエキスパートの力を借りるのが良い場合もありますね。

夢が大きくてパワーも大きい場合
低調な時期に落ち込んだときのインパクトは大きいですから。

私の場合は、最高のエキスパートに助けてもらえて乗り切れた
という経験があります。
そういう人と縁があったというのは大変ラッキーでしたね。

色々経験してみて

思ったことは叶う
とか
会うべき人とは必ず会える
とか言いますが

そういうことには一定の説得力があるよなぁ
と思った次第です。

やはり勇気か

教員をやっていると
それはもうたくさんの学生を見るわけですけど
色々いて面白いな
と思うこともあれば
もったいないことしてるな
と思うこともあります。

「もったいないこと」
の多くは
みすみすチャンスを逃しているケースがほとんどです。

その反面
それは仕方がないことだとも思います。

というのも
チャンスに手を伸ばすのは
何かとリスクを伴うからです。

ここで言うリスクは
身体的、精神的にクリティカルな影響を及ぼすレベルのことではなく
ちょっと失敗するとか
ちょっと怒られるとか否定されるとか
そういう可能性を言っているので
かなり低レベルのリスクです。

経験が十分でなければ
本人が未知のものに対してリスクを感じることも多いでしょうし
今の世の中
若者に関わる多くが
リスクに接近したり
リスクを取ったりすることを妨げることが多いでしょう。

当然、リスクと得られるもののトレードオフなんて
経験する機会が無いまま成長してしまうでしょう。

成長の早い学生を見たりすると思うのは
その辺のトレードオフがうまくできてるな
ということです。

自分が取るべきものを定めて
それ以外を捨てられるストイックさが無いと
そういうのは難しいでしょうね。

そうそう!
何を取るか
というのは同時に
何を捨てるか
でもあるのですね。

なので、ストイックになれないタイプの欲張り君は
成長しにくいかもしれません。

成長が遅いタイプに共通するのは
受け身でアウトプットが少ない者のような気がします。

そんなタイプも社会に出れば
何かをきっかけに変わることもあるかもしれませんし
そういうやり方に適した何かを見つけるかもしれません。
(何が適しているか、私には分かりませんが)

でも
もったいないな
と思うのは
20歳前後にやったことは
その後の人生にかなり大きな影響を及ぼすはずなので
一番おいしい時期を逃しているからです。

歳を取ってからやり方を変えたり
キャラクターを変えたりするのは難しいので
仮に
「そのうちなんとか…」
なんて思っていることは
どんどん難しいことになっていって
大抵はできなくなります。

若いうちに感じるリスクの大きさは
案外大したことじゃなかったりするのです。
同じことをいい年してやると
結構な大きさのリスクになったりします。

ちょっと勇気を持てば
大抵のことはなんとかなったりしますし
なんとかならなくても
貴重な経験が手に入りますしね。

若いうちの苦労は買ってでもせよ
というのはよく言ったものです。
それが一番安上がりなのですから。
人生への先行投資で、リターンは大きいですよ。