いよいよ新学期

今週末
つまり明日あたりから新1年生が大学にやって来ます。
今年は何人くらい活動に参加するかな。

すでにメンバーは20人を超えているので
正直なところ部屋の規模に対してキャパシティオーバーだとは思うのだけど、志があってやってくる新人は断りにくいですよね。
ウチのチームに所属するためにこの大学に来たという学生もいるし。
ここ数日でも、まだ大学には来ていない加入希望の新1年生がチームにコンタクトを取っているようです。
現役メンバーは、可能な限り新人を受け入れたいという方向のようですね。

仮にキャパシティオーバーになっちゃったら、この1年で確立したオンラインでの活動をうまく組み合わせれば何とか回して行けそうな気がします。
その辺のノウハウは、コロナ禍で得られたメリットの一つかな。

さて、今回はどんな新入生が入ってくるのかな。
楽しみです。

このところ開発のために部分的に分解していたマシンを展示のために整備中

Real Deadline 本当の締め切り

どんなクルマにするか考える

狙ったとおりになるように考えて設計する

狙ったとおりになるように作る

狙った性能が出るように実走行でセッティングする

こんなプロセスで学生達はレーシングカーを作っていますが
完成したクルマはもちろん
それぞれのプロセスにおいても
何が起きるか分かりません。

だって十分な経験がないのだから
それは当然です。

解析や強度計算がうまくできると
部品単品としては思った通りになるかもしれません。

しかし
それらを組み合わせて
実際に使う(走る)と何が起きるか分からない。

それは
作っている人間の
想像の領域の外のこと
イレギュラーなことが起きるからです。

いくら勉強しても
いくら慎重に設計しても
そういうことは起きます。

現実の世界では
イレギュラーなことは
常に起きる可能性がある。
要因は無数にあります。

授業ではそういうことは起こりません。
時間内に予定されたことを
学べるように考えられているからです。

たとえば
実験の授業では
どんな結果が得られるかは
最初に決まっています。
イレギュラーな結果が出てしまったら
授業が終わらないからです。

本来は
何が起きるか分からないから
「実験」するのであって
最初に何が起きるか分かっていることを
やるのは本来の「実験」ではありません。

でも、授業では「実験」と称して
本当の実験をやるときに
必要なことを学ぶのです。
決して無駄ではありません。

さて
設計の際に
狙ったとおりのことが起きるようなマシンにするために
よーく勉強して
すっごく慎重に設計して
あらゆるイレギュラーな事象を想像して
設計すると何が起きるか。

間に合わなくなります。
レースに。

勝つためのクルマを作っているはずなのに
そもそもレースに間に合わなくなります。

特に学生の活動の場合
時間的にカツカツですから。

なので
今の自分たちには
どんなやり方が効果的なのかを考えて
チームの方針を定める必要があって
その重要性を全メンバーに落とし込む必要があります。
こういうのは授業では学べません。

最近はあまり聞かなくなりましたが
Formula SAEの重要なことの一つに

Real Deadline

があります。

直訳すると
「本当の締め切り」
です。

レースには色々な締め切りがあります。

大会へのエントリー
自分たちの開発スケジュール
レースのスタート時刻
などなど

これらの「本当の締め切り」を守っていかないと
自分たちのミッションは果たせません。

なので
最も効果的なやり方で
開発を進める必要があるのです。

設計段階で
色々考えすぎて時間を使ってしまうと
実走行による最適化のための時間を失っていきます。

いくらよーく考えてマシンを作ったところで
完成したときに得られる性能は
当初の想定よりずっと低いはずです。
大抵はガッカリします。

そして
そこから性能を上げていくのです。
それこそが学びです。

そうやって学んだことは
決して忘れません。

プロでもそんなもんです。
なので「試作車」が必要なのです。
走らせてみないと
実際にやってみないと
分からないからです。

チャレンジしている学生達には
やると
分かる
その面白さを味わって欲しいものです。

色々経験していくと
「やらなくても分かる」領域が拡大していきます。
そうなると
やることのレベルをどんどん上げていけます。

そのループに乗せられれば
ますます面白くなってくるでしょうね。

分かっていることを積み上げていけば安心だし
そういうやり方が必要な世界もあるでしょう。

別にどちらが偉くて
どちらが劣っている
なんてことはないですが

もしチャレンジできる環境にいるのであれば
とにかく色々やってみて
起きる事象に対応する度に試されて
その度に学んで成長していく
そんな毎日も良いのではないでしょうか。

学生生活なんて
迷ってるうちに終わっちゃいますよ。

レースってこんなことしてます その1 レースの種類

ビギナー向けに
レースってどんなことをしてるんでしょう
というお話をしてみましょう。

まずは代表的なものを挙げてみましょう。

レース
サーキットなどのコースで複数台のマシンで
抜いたり抜かれたりして競争するのはこちら。
舗装されたサーキットを走るのは
ロードレースと呼ばれたりもします。

タイムトライアル
決められたコースを
どれだけ速く走れるかを競うのはこちら。
レースのように周回したり
同時に複数台が走って抜いたり抜かれたりはしません。
サーキットのようなコースを使うこともありますが
日本では駐車場のような広場に
パイロンでコースを作ることが多いです。
で、スタートからゴールまでのタイムを競います。
日本ではジムカーナ(未舗装路の場合はダートトライアル)
欧米ではオートクロス
と呼んだりしますね。
ヒルクライムと呼ばれる
山道を閉鎖して行うイベントもタイムトライアルです。

ラリー
多くの場合は公道で
あらかじめ決められたルートを走行します。
これも抜いたり抜かれたりはしません。
日本のラリーでは
決められたルートの距離を計測して正確性を競ったりします。
(昔はそうでした。今はどうなんだろう)
皆さんが想像する山道を疾走するシーンは
スペシャルステージ(SS)と呼ばれる特別な区間の
通過タイムを競ったりすしているところです。
詳しくないのでこんなもんで勘弁してください。

ドラッグレース
いわゆるゼロヨンってヤツです。
多くの場合は
停止状態から400mまで加速してタイムを競います。
何で400mかというと
4分の1マイルだからです。
それはなぜだと言われたら困りますが。

ランド・スピード・レーシング
長い直線路で1台ずつが最高速を競う競技です。
日本ではあまりなじみが無いですが
最も古いレースの形態です。
ここでは詳細を省きますが
なかなか奥深い世界ですので
機会があったら記事にしましょう。

他にもまだまだたくさんありますが
このへんにしておきましょう。

「競う」という意味では
これらをひっくるめて
レースという呼び方をしたりすることもありますが
カテゴリーとしての分け方はざっくり上記の通りです。

さて
サーキットを走るレースには種類があります。
いずれも「どれだけ速いか」を競ってるんですが
サーキットなどのコースを走るレースだと
大きく分けて2つ。

スプリントレース
あらかじめ決められた周回を
どれだけ速く走れるかを競う
レースの最も一般的な形態です。
一斉にスタートして
一番最初にゴールラインを通過した者が勝者です。
F1とかMotoGPなんかはこれ。
オフロードを走るのはモトクロスと呼ばれます。

耐久レース
決められた時間にどれだけの周回数を走れるかを競います。
複数台でそれなりに長時間走るので
見ていると誰がトップか分からなくなります。
なので各車の周回数がカウントされています。
ドライバー/ライダーは複数名で走る場合がほとんど。
途中で給油やタイヤ交換をしたりすることもあります。
規定時間が経過したらチェッカーフラッグが振られて各車ゴール。
一番周回数が多かった者が勝者です。
複数名で走ればチーム全員の勝利ですね。
ル・マン24時間とか鈴鹿8時間なんかはこれ。
オフロードを走るのはエンデューロと呼ばれます。

いずれも速い人が勝者なんですが
タイムトライアルと違って
抜く技術とか駆け引き
レース全体を通しての戦略
なども重要になります。

学生がやっているFormula SAEでは
75mの直線加速を競うアクセラレーション
8の字をグルグル回って旋回性能を競うスキッドパッド
コース1周のタイムを競うオートクロス
2名のドライバーで20kmを走るタイムと燃費を競うエンデュランス
の4つのイベントでマシンの性能を評価します。

エンデュランスでは、1台ずつスタートして
コース上には3台程度が同時に走行します。
もちろん速い車が遅い車に追いついたりするのですが
その場合はコース上に数カ所設けられた
パッシングエリアとかパッシングゾーンと呼ばれるところで
遅い車が道を譲ることになっています。
耐久レースとタイムトライアルを混ぜたようなイベントですね。
正直これは燃えます!
乗っている方も見ている方も。

ちなみに私が過去に経験したのは
二輪はロードレースでスプリントと耐久、オフロードではエンデューロ
四輪はダートトライアル
そんなもんですね。
18歳頃から20年以上色々やりましたが
自分ではそれほどキャリアが豊富な方だとは思っていません。