2023種子島遠征 第1日

突然ですが
今日はコータローと種子島に来ています。

昨年の夏に、ネバダ州で実施された惑星探査機のイベントの日本版のようなものに参加するためです。

大会は「種子島ロケットコンテスト」というだけあって小型のロケットを打ち上げる大会なのですが、我々が参加するのは惑星探査機の「CanSat(カンサット)部門」です。

この大会では、ネバダのときのようにロケットで機体を打ち上げるわけではなく、クレーンからの投下ですが、同様に自律走行でゴールを目指します。

会場はなんと!

世界一美しいロケット発射場と言われる
JAXA種子島宇宙センターです!

そう、あのH3ロケットを打ち上げるのは、まさにココ。
その敷地の一角が今回の大会会場なのです。

競技を含むイベントの開催期間は3月2日から6日までで、我々の遠征としては3月8日の朝までは種子島にいるので、運が良ければH3ロケットの打上げが見られるかもしれませんね。
何せ予備期間は3月10日までらしいので。

まずは羽田空港から鹿児島空港まで

手前のヤツに乗ります
ボーイングの787だっけな?
富士山が見えました

鹿児島空港からはターボプロップ機で種子島空港に到着

ATR72というターボプロップ機です
ATRというメーカーなんて知らなかった
この手の機体は意外と加速が良くて気持ちいいのです

種子島空港からはレンタカーで
遠征の拠点となる種子島南端の南種子町まで移動しました。
JAXA種子島宇宙センターも同町内にあります。

今回お世話になる、わかさ荘

いつも通りレンタカーは軽のバンです
宿の前は広大な景色

2019年までお世話になっていた宿は、ロケット開発の関係者で満室だそうで、今回は別の宿になりました。

南種子町には結構な数の宿があるのですが、面白いのは、ロケット関係の各社それぞれに御用達の宿があることです。

それぞれの宿の食堂とか廊下には、各社それぞれのポスターとか、社名が入った打ち上げ時の写真が飾ってあったりして、どの会社の人の常宿になっているかが想像つきます。

食堂の壁
ここは…三菱重工ですね

宿に入ったら早速機体の整備です。
今回の機体、基本構造はネバダと同じですが、レーザーの測距センサーを搭載して、ゴールのパイロンに0mタッチするそうです。
見ものですね。

早速やってます

今夜は機体の整備とチェックを済ませて、明日はテスト走行です!
とコータローが申しております。

実はレーザーの測距センサーは、まだ実走でテストしていないのです。
CanSatでの採用例は聞いたことがないので、うまくいけば注目度は高いのではないかな。
明日と明後日でうまくセッティングできるといいのですが。

AIが来るその先は

ちらほらAIをネタにしてますけど
今回もAIネタにしてみます。

ChatGPT使ってみましたか?
どのように使いましたか?

最初は検索エンジンのような使い方とかですかね。

そもそも検索エンジンをなぜ使うかというと
知りたいことがあって
その答えを知る糸口として
検索してみて
その結果に表示されたサイトを開いてみて
そこから答えを見つける
とういったことがしたいわけですよね。

で、ChatGPTを使ったりすると
知りたいことを聞けば
直球で教えてくれるので
表示される関連サイトを開いて
探すような手間が省けますよね。

そうなってくると
「聞き方」が重要になります。
ちゃんと聞かないと
ちゃんと答えてくれませんから。

まぁ、さすがにAIなので
ある程度は質問の意図を汲み取ってくれる
ようなところはあるようです。

さてさて
ここですでに問題の核心に迫っています。

「ちゃんと聞かないと」
です。

つまり、ゴールの設定をちゃんと指示してあげないと
そのために必要なことは構成できないってことです。

「なんでもいいから適当にやっておいてよ」
みたいのには対応できませんよ
ってことです。
結果は指示次第です。

残念だったな、のび太君!

なので、AIが面倒なことや難しいことをやってくれて
楽ちんなのかもしれませんが
ヤツらに高度なことをやらせるためには
指示者がそれなりに分かっていないとダメだよね
ということです。

そういうのは設計の環境なんかでもあるのです。

AIではありませんが
3Dの設計ソフトで
強度解析やら機構解析やら
色々凄いことができるソフトウェアは
ずいぶん前からあるのですが
凄いことをやらせようとするなら
基本的にその条件設定とか
考え方がちゃんとしていないと
ちゃんと動かないのです。

マニュアル読んで
使い方を理解しておけばいい
って話ではないですよ。

(どうしたらいいかを
何かを見たり人から聞いたりして
それをやればいい
ということではないということ)

まぁ、原理原則は分かっていないと
話にならないよね
ということです。

それさえ分かっていれば
今まで手描き計算でゴリゴリやって
頭痛くなっちゃうようなプロセスはPCにお任せして
より高度な設計ができたり
その先に行けるってことです。

これも勘違いしちゃいけないのは
やりたいことがはっきりしていないのに
PCが勝手にやってくれる
なんてことは無いってことです。

今回ネタにしたかったことはそういうことです。

ちゃんとゴールを設定できることが重要になるよ
ということです。
もちろんそれは、自発的に、内発的にです。
「夢を見られる」と言っても良いかもしれません。

自由であることが重要という言い方もできるかな。
自由って「自らに由る」で
「自分で決める」ということですからね。

それができれば
あとはAIなどのツールや環境を使って
より具体的な手段にスピーディーに落とし込めます。
そうしたら、あとはやるだけ
形にするだけです。

そんな将来は近いうちにやってくるのでしょうけど
そういう環境に合わせて労働環境は
再構築されていくかもしれませんね。

AIに向かって指示を出す人

AIの出した答えを実行する人

そんなふうに。
これはすでに皆さん想像が付いているかと思います。

もちろん、どちらも必要で重要なのですが
どちらをやるかはその人次第です。

あと興味深いところでは
専門領域を飛び越えて
より広い範囲に関われる可能性もあるのかな
とも思っています。

最初は専門領域の壁というか
既得権益の壁みたいのが立ちはだかるかもしれませんが
そのうちそいつは破壊されてしまうかもしれません。

だって
弁護士が要らなくなるかもしれない
とかいう話ですから
エンジニアリングの世界も相当変わりますよ。

この件も引き続き検討が必要ですね。

実際それは失敗ではない

今回のH3ロケットの打ち上げが中止になりました。

このロケットの開発には
当研究室の卒業生も関わっていたりするので
気になって仕方がないのです。

彼は今頃、種子島の宇宙センターでヒーヒー言ってるはずです。
頑張れ!頑張れ!!

で、この打ち上げの中止に対して
会見で失敗だと認めさせたかった記者がいて
その捨て台詞がどうとかで盛り上がっていますね。

その記者さん、何かトラウマでも持っているのでしょうか。
確かに意地悪で失礼な印象はあったのですが
実際のところはどうなんだ?
とお思いの方もいるかと思います。

打上げの際に想定外の事象が発生して
シーケンスが止まっちゃっても
設計通りにエンジンが停止したのであれば
それは失敗ではない

その辺が分かりにくいところだったのではないかな
と思います。

で、打ち上げたかったのに打ち上げられなかったのだから
それは失敗なのではないか、と。

そもそも、ロケットみたいに巨大で複雑なシステムは
そうそう簡単に完璧な状態になんてならないでしょうね。

忘れてはならないのは
H3は新型機だということです。

もちろん、各部単体でのテストは散々やって
システム単位での性能や信頼性の確認はするのですが
「試しにそいつらを組み上げて本番前に打ってみよう!」
なんてことができないのがロケットです。

要は、打上げできる状態にして
やってみないことには
どうなるか分からない部分がある
そういうことでしょう。

いくら入念に検討して設計して
可能な限り正確に製作して
隅々まで確認しても
自然の環境において、いざ打ち上げるとなると
何かしらイレギュラーな
想像も付かないことが起きても何らおかしくありません。

自然も人工の環境も含めて
前もって100%予測するなんて不可能です。

それに、やっているのは人間で
凄まじい人数が関わっているわけだから
そういう面でも想定外のことが起きたり
見逃しやミスを完全に排除するのは困難でしょう。

もちろんそれらは
限られた時間やコストなど
制限の中でやっているわけですからなおさらです。

そんな中で100%思った通りにできたら神様ですよ。

必ず最後には
やってみないと分からないこと
が残るのです。

クルマの開発なんかであれば試作車を作って
量産を立ち上げる前に完成度を高めます。

それでもイレギュラーなトラブルが起きない保証はなくて
量産されてから設計変更するなんてこともあります。
深刻なヤツはリコールとか呼ばれますよね。

鉄道車両はクルマみたいに
量産前にテストコースをバンバン走って
トラブルの潰し込みをやる
なんてことはできないので
完成したら工場から出荷して
お客さんを乗せた運行をしながら
必要に応じて手直しするそうです。

たぶん、巨大な客船とかも同じような感じではないかな。

そうやって、製造現場からリリースしてから対応できるものは
「この日に出しますよ!」
ってローンチの日を決めて、バーン!といけます。

ロケットの打ち上げにおいては
そうはいかないので
「打上げ期間」が設定されていて
その期間内で打上げができたら成功で
できなかったら失敗
そういうものでしょう。

やってみないと分からないことはあるのだから
その時に重大事故が起きないように
仕切り直しが効くように計画しておいて
何かあったら期間内に対応できるようにしておく
そういうふうにプロジェクトを組んでいるのだと思います。

なので、今回起きたのは想定外の事象だったかもしれませんが
解析の結果
「あぁ、こういうことが起きる可能性があるのか!」
と知見を得られるわけで
事故でもなければ失敗でもない。

むしろセーフティのシステム設計においては
成功と言っても良いかもしれない。

たぶんあの記者さん
まさかネットでこんなに叩かれるなんて思っていなくて
ビックリしたりガッカリしたりして
「むしろ失敗したのは俺だ」
なんて思っているかもしれません。
でも、これでクサらずに良い仕事をしてほしいものです。

ちなみに
多くの開発の仕事はチームでしたりするものですが
正直なところ
失敗の経験のない者とは組みたくないです。

だって、新しいことをやれば
何かしらの失敗をするのは当然です。

その度に落ち込んで思考停止していたら
仕事になりませんから。

最後に

知っている人もいると思いますが
このH3ロケットは我が国の宇宙開発の今後にとって
大変重要なのです。

というのも
これまで使っていたH2ロケットが
初めて打上げされたのは1994年なので
H3は実に30年ぶりの新型機です。

当然、当時の開発者は一線を退く年齢で
技術の継承を考えるとギリギリのタイミング。

なのでH3の開発者達の多くは
これがデビュー作で
日本の宇宙開発の将来を決める
重責を担っているわけです。

そんな重荷を背負いながら
彼らはこんなに大きな
やってみなければ分からないこと
にチャレンジしているのですね。

トラブルから学びながら。

実に凄いことだと思います。

ぜひ期間内に打上げを成功させて欲しいものです。