アドバイザーの仕事

新入生が入ってくると毎回思うのは
彼らがクリエイティブになってくれるといいな
ということです。

クリエイティブになってくれれば
どんどん楽しくなって
どんどん成長します。

彼らの多くは、開発者を目指しているわけだから
潜在的にはクリエイティブになりたい
と思っているのですが

いかんせん
やらされる経験ばかりなので
自分からチャレンジしたり創造したり
というのがどういうことなのか
良く分かっていなかったりするのでしょうね。

でも、外力では無理ですね。
命令したってなるもんじゃない。

なので、そういう状態に
そういう領域に
自らなりたい・行きたい
と思わないことには無理なのです。

前提として
現状はそうなっていないわけですから
そこから変わる必要がある
でも、どうしたらいいか分からない。

何かしらの情報を得て
パチッ
と変われば良いのでしょうけど
そんな都合の良い話は無いわけで

ジタバタ試行錯誤しながら
チャレンジして模索するしかないのです。

まず最初にすべきことは
「やるしかない」
と腹を決めることでしょう。

そこに必要なのは、まず
魅力あるゴール
ですね。

そして環境です。
程よい高さのハードルと
迫り来る締め切り
これらが重要。

他にも細かいことは沢山あるでしょうけど
最も重要なのは、こんなところでしょう。

それらが揃って
「やるしかない」
と腹が決まれば
あとはやるだけ。

なのですが
そこで現れる強敵は
リスク回避システムの起動です。

「失敗したくない」
これです。

コイツが発動すると
トライする前に考え始めて
失敗しない答えを探し始めます。

でも、経験が無いから
そんなものは思い付かなくて
延々考え続けます。
締め切りの前日まで。

そんなことをすると
どんなことになるか?

そうなったら
やる前から終わってます。

やはりね
やらないとわからないことは
やるしかないのです。

やってみれば何かが分かる。

なので、まずは
ちょっと考えたらやってみる
これです。

でも、深層心理の本能的なところに根ざしてしまっている
リスク回避システムをやっつけるのは難しい。
何せ意識せずにそうなっちゃうのですから。

本当であれば
そういうのも放置して
「悪い失敗」をさせるのも良いのかもしれません。
それで気付くのなら。

でも、それをやると4年なんて
あっという間に経っちゃうし
ヘタすると気付くのには
10年単位の時間が必要になるかもしれないし
最悪は気付かないままになって
「これは自分に向いてない」
なんて結論付けたりするかも。

というわけで
その辺はアドバイザーである私の出番なのでしょうね。

「こんな風にするといいよ」
と大枠を示す。

時と場合と内容にもよりますが
そこで細かい具体的なことなんて指示する必要は無い。
そういうのは彼らが考えるべきことですから。

知ってるけど言わないことの方が多いかも。
もちろん、聞かれれば答えますが。
あ、でも
自分の考え無しに聞いてきたら教えませんね。

正直、分かってるけど言わない・やらせない
というのは辛いというか、難しい。

でも、トライ・アンド・エラーを重ねて彼らが成長すれば
驚くような成果を上げてくれるはずですから
むしろそのサイクルを早く回す
そのお手伝いをすることが重要なのです。

ただ、トライした結果は知っておかないと
その後のアドバイスが難しくなるので
アンテナは張っておく必要がありますね。

こんなのがアドバイザーとしての
私の役割だと思っています。

でもって
これ、何とかもうちょっと発展できないかな
というのが日々の課題だったりします。

夢工房での学び

夢工房に来た1年生が沢山いるわけですが
このエキサイティングな活動に足を踏み入れた彼らは
当然ながら一所懸命やっちゃうわけです。

すると、親は入学早々帰りが遅くなった子供を心配するわけです。
もちろんそういうケースは少数ではありますが
毎年一定数はそういうことになります。

気持ちは分かります。

今まで親の目の届くところで
何をやるか想像が付く範疇で生活していたのに
途端に訳の分からないことに一所懸命になるのですから。
急にコントロールの範囲外に飛び出したらビックリするでしょう。

でももし
普通のことをやって
普通以上のゲインを得て欲しい
何でそんな余計なことをするの?
と思っているとしたら…

そういうのはバブル時代の遺産というか
幻想だろうという気がしなくも無いのだけど
そんな考え方は、いまだに幅を利かせているわけで…

その価値観、もうかれこれ半世紀も前のものですよね
と思う今日この頃。

「学校で、言われたことをやっていればうまくいくはず」

もうそんな世の中では無いことは
多くの人が分かっているはず。

にもかかわらず
いまだにこんな感じの話を耳にすることもあります。

「一生懸命勉強して、良い会社に入るのだ。
そして安定した楽な生活をするのだ」

勉強ができれば良い会社に入れるから
そうしたら大して働かずに良い給料をもらえるという訳ですな。
今や単に勉学の成績が良くたって企業は採用しませんし
いわゆる「良い会社」の仕事が楽なわけはないでしょう。

「大学でクルマなんて作って遊んでないで
しっかり勉強しなさい」

お勉強ができたって、仕事ができるわけではありません。
遊び感覚の中途半端な気持ちと能力でクルマは作れませんし
ましてそんなのはレースになりません。

クルマを作るために必要な知識と経験は
その多くが工学に基づくものです。
しかし、それらは学校の授業でカバーできるものではなく
実践を通してしか得られません。

そして、その経験を通して得たものは
あらゆる業務に役立てることができるはずです。

夢工房の活動内容が具体的にどんなものなのかは
容易に想像が付かないかもしれませんが
こういう活動をチームでやるというのは
社会に出て、価値ある仕事をする上で
最も重要な経験となるのは疑う余地はありません。

自分が魅力を感じる取り組み内容で
夢中になって、のめり込んでしまう。
そんな活動内容だからこそ
格段にレベルアップすることが可能なのです。

もちろん、セルフコントロールが利かなければ
留年などのリスクになるでしょう。

なので、心配する気持ちは分かります。

でも、そういうリスクのコントロールをできるようになる
ということも含めて、この活動の意義があるのです。

教員だって、学生が言われた通りのことをするなら
余計なことをせずに、失敗もせずにやってくれたら
そりゃぁ楽です。
でも、そんな楽な仕事に、どんな価値があるのでしょう。
自分が楽をするために仕事をして、一体何が楽しいのでしょう?

こういう活動を「学生の遊びだ」と思うなら、こう問いたい。

何の強みも持たず勉強だけできる新卒を、あなたの会社は採用しますか?

チームで仕事ができず、仲間を助けることもできない新卒を、あなたの会社は採用しますか?

自律性が無く、セルフコントロールが利かない新卒を、あなたの会社は採用しますか?

リスクを取ったチャレンジができず、失敗したことも、失敗を乗り越えた経験も無い、言われたことしかできない新卒を、あなたの会社は採用しますか?

自分の喜びのみならず、多くの支援者を作り、応援してくれる人達の喜びのためにも努力する、そんな価値観を理解できない新卒を、あなたの会社は採用しますか?

これらは授業では学べないことですが
仕事をする上では、クリティカルに重要なことです。
しかし、「やらせる」手法で身に付けることはできません。

加えて、「単位」とか「成績」とかが評価指針になった途端に
学生は「自分が」クリアするためのことを
場合によっては最低限を狙い始めるので
高いレベルに到達するのは難しくなります。

先進各国の技術系大学は、単にペーパーテストができるようになるためだけの教育からはシフトし始めています。
しかし我が国は、いまだに机にかじりつく教育を推奨しています。
レベルを上げるには、科目数を増やせば良いとか、学ぶレベルを上げれば良いとか、そんな方針なのだと思いますが、問題は知識の質とか量とかではありません。

心の問題です。

自発性無しに、受動的に突っ込まれた知識なんて、脳内に留まる期間も、量的にも限界があります。
動機無しに、目的無しに記憶したものなんて、将来どれだけ役に立つのでしょう。

その先に行くには、自分が本当に求めることを一所懸命やって、失敗して乗り越えて、その中から自ら学ぶしかないと思います。

普通のことをしたら普通のことが起きる

なんと当たり前のことを!

そう思うでしょう?

それ以前に
「普通」って何だろう?
というところが重要だったりするのですが。

辞書には

”いつでもどこにでもあって、めずらしくないこと。
他と比べて特に変わらないこと。”

なんてありましたよ。

多くの人は普通が大好きでしょう。
でしょう?

もちろん学生もです。

まぁありがちなのは
入学してから就職活動までは
楽しく遊んで
いわゆる普通の生活を望むのだけど

いざ就活となると
どうしたらいいか分からなくなる。

でも本当は、どうすべきか分かってる。
というか、どうあるべきかは分かっている。

「普通」じゃ選ばれない

ずーっと、ずーっと
「普通」を望んできたのだけど
この局面になると
「普通」は「何も無い」と同義だと気付くのですね。

別にここでは
そういうのを批判したいわけではなくて

「普通」を望むと「普通」になるけど
それを分かっておこうね。

と言いたいのです。

なんか当たり前のことを言って恐縮なんですけど
意外と多くが意識していないと思うのです。

誰だって、多くの人の役に立って
多くの人から必要とされたい
そう思うものでしょう?

なに偽善的なことを言ってんだ!って?

いやいや、そうじゃありませんよ。

子供の頃、スーパーヒーローになりたかったでしょう?
警察官とかプロ野球選手になりたかったのでは?
お花屋さんでもケーキ屋さんでも良いのですが
多くの人を喜ばせる人になりたかったのではないですか?

じゃぁ一緒ですよ。

夢工房の連中は
いまだに「世界一だ!」
とか言って頑張っていますが
これも一緒です。

で、今回言いたいのは
そういうのを目指すのであれば
実はそんなに難しいことではなくて

「普通」じゃなければ良いじゃん。
ってことなのです。

スーパーヒーローは
「その他大勢」ではありません。

特別な変わった人です。

そうなるためには
特別な変わったことをする必要があります。

普通のことをしていて
スーパーヒーローになっちゃうのなら
そこらじゅうスーパーヒーローだらけのはずですが
そうはなっていませんから。
たぶん普通じゃダメなんです。

特殊なビームを浴びて一瞬にして…
みたいな展開は
現実世界ではあり得ませんので
自分で頑張るしかありません。

夢工房の活動なら
普通じゃないこと
普通じゃない考え方
普通じゃないやり方
そんなことにこだわらないと
普通になっちゃうので
コンペティションでは勝てません。

でも、今までの癖で
ついつい普通の考え方をしてしまったりするんです。
これが結構手強い。

大抵の1年生は
この辺の考え方というか
価値観の入れ替えに1年くらい掛かります。

でも、考え方によっては
十数年間継続してきた習慣や価値観を
1年でひっくり返すのだから大したもんだ
ということもできますね。

でもまぁ、そもそも
こういう活動をやって身を立てていこう
なんて考え方自体が普通じゃないわけで
その時点で第1段階クリア
なのですけどね。

普通が嫌なら普通じゃないことに拘る必要がある
けど
あまりにも普通とかけ離れすぎると
変人になっちゃうのでは?

なんて、そんなことを心配する必要は無いですよ。
一度振り切れてしまうくらいの方が良いんじゃないかと思います。
やり過ぎたら、ちょっぴり抑えれば良いのです。
そして継続しましょう。

そういうのに目くじらを立てる人がいたら
間違っても悲しそうな顔をしてうつむいてはいけません。

ニヤッと笑って黙っていれば
そのうち干渉してこなくなりますから大丈夫。

それは冗談ですが
その辺の対応も含めて色々試してみましょう。

往々にして
研究開発を仕事にすると
変な人がいっぱいいるものです。
変な人じゃないと変わったものなんて作れないですから当然。
それがまた楽しいんですけどね。

それは言い過ぎ?
そんなことはないと思うんだけどなぁ。