チャレンジの持つ意味

机の上のお勉強によって得た知識は、実際にやらずして正解が分かる便利なもの。
ですが、それは万能ではない。

そして、極端なことを言うなら価値は無い。
それは言い過ぎかもしれないけど、知識自体に価値があって、それが全てなのであれば、人間でなくても良いわけです。
AIの方が高性能で高価値ということになります。
しかもコストも安い。

既存の知識の多くは、誰でも手に入る時代が目の前に来ています。
というか、すでにそこにいる。

我々日本人は、幼少の頃から教育の中にある「成果」と「不正解」だけを見て育ってきています。
学習は、正解を導き出すためのスキルを身に付けます。

でも、世の中は正解と不正解に割り切れるものばかりではない。
あるものごとを異なる方向から見たら、正解と不正解が入れ替わることもあります。

そもそも、これから訪れる先の見えない不確定な世の中に対して、正解やら不正解やらという既存の価値観は通用しないことが増えるでしょう。

ではどうするか?

リスクを払ってチャレンジするしかない。
もちろん、リスクに応じたリターンがあるのは当然。
それがいつになるのか、リスクに見合ったリターンなのかは当人次第といったところだとは思いますが。

でも、いずれにせよ価値はチャレンジの先にしか無い。

二階に上げてハシゴを外し一階に火をつける

そんな感じの追い詰められた状態にして知恵を絞って成果を出す
そんな環境で成長させる
といったような意味です。

これ、昔のホンダでよく言われていたことです。
今も言われているのかな?
今じゃハラスメントとか言われちゃうのだろうか。

でも、開発の仕事に関わったら、多かれ少なかれそういった状況になるのではないかと思います。

ただこれは、「やらされる」という側だけで見るとハラスメント的かもしれませんが、その環境を作る人、つまり管理職側から見るとちょっと違ってきます。

二階に上げるのも、ハシゴを外すのも、火をつけるのも
すべて勇気が必要です。
相手を信じて任せる勇気です。
管理側には責任がありますからね。
任せるのは良いけど、できなかったらどうすんだ?って話です。

実はその辺を理解するまで随分時間がかかりました。
追い詰められると成長するのは分かっていましたが。

そうそう、昨日の投稿にあった
「部下に任せておけば驚くような成果を出すから」のようなことをいった人が…
ですが、出典が分かりました。
アメリカ陸軍のパットン将軍です。

正しくはこうでした。

“Never tell people how to do things. Tell them what to do and they will surprise you with their ingenuity.”
「人にやり方を教えるな。何をすべきかだけを伝えれば、彼らは驚くほどの創意工夫でやり遂げる。」

これはなかなか素敵な名言なのですが、「ホントか?」とも言いたくなります。
理想論だろ、と。

しかし
魅力的なゴールと期待に応える高いモチベーション、そして任せる者の勇気と覚悟、そして相互の信頼を前提としているなら分からなくもない。

夢工房のやり方は、そんなのが理想なのだけど、学校教育の現状から照らすと、どうも距離感がありますね。
そのギャップを埋めるのが一苦労なのですよ。
でも、そこが最も大事で最も面白いところなのかも。

仕事に必要なもの その1

仕事とは、言われたことをやるもの
と思っているなら、この先は読む必要は無いと思います。

ここでは、技術系、特に開発の仕事において、良い仕事をするには何が必要か、という話をしましょう。

とは言うものの、これさえできれば完璧!という正解があるわけではありませんし、私ごときが言えることはたかがしれているのだけど、私でも言えることで、半ば社会の常識かもしれないけど、意外と学生は知らない話をしましょう。

そもそも、開発業務を経験した人と学生が話をする機会ってあまり無いのですよね。
なので、そういったことを仕事にするのであれば知っておいた方が良いことでも、なかなか知る機会が無いのが実情でしょう。

必要なことは色々ありますが、基本的には「ものづくり」ですので、ものはどうやって作られるかという基本的な知識は必要でしょう。

と言うのは簡単です。
ですが、ここに含まれることは広範にわたるものです。

まず筆頭に来そうなのが、技術的な知識でしょう。
これはいわゆる学問的なものも含みますが、完璧である必要は無いと思います。
基本的なところはソコソコ知っていれば良いかな。

重要なのは、実践知だと思います。
やらないと分からない事です。

というか、実践してみたら必要なことが分かるという言い方のほうが良いかもしれません。
ここで言う「必要なこと」には、授業で教わるような形式的な知識も含んではいますが、授業では教えられないことも含まれていて、それが実践知です。
「それは何だ?」と言われると困ります。
だって、やらないと分からない事だから。

でも、分かりやすいところを一つ挙げるなら、五感で感じるようなことかな。

例えば、設計をするのであれば、最終的なアウトプットは、図面などの設計情報や仕様なのですが、それらは一体何のためにあるかというと、製品にして使用して、要求される働きを発揮させるためにあります。

そのためには、まず製作する必要があります。

であれば、どのように製作するのかが分からなければ、それらの情報を作ることはできません。
作れもしない図面を描いたところで意味はありませんし、作り手を考慮せずに作りにくいものを設計するとロクな事になりません。
精度が出ないとかコストが上がるとか。

なので、いくら設計をするといっても、ものを作った経験が無いと良い仕事はできないと思います。
とはいえ、あらゆる製作経験を…なんていうのは非現実的なので、可能な範囲で経験を積んだら、あとはせめて現場を見て、作業者とコミュケーションを取って、実際の製作をイメージできるレベルにはなりたいものです。

そのイメージに含まれるのは、単なる形式的な知識ではなく、作り手が五感で感じるであろうものまで含まれれば、それを元により良い設計情報をつくることができるでしょう。

つづく