日程のお話し

開発を進めるに当たって
情報を含めて色々なものを作るんですが
その中でもかなり重要度の高い情報
日程表の作り方をご紹介しましょう。

何かの参考になるのではないかな?
…なるかな?

今回はざっくり説明してしまいますが
これは超重要です。
レースの日程が決まっているのであれば
「やってみないと、いつになるか分からない」
のようなことはできないのです。
学生は良くやりがちですが(笑)
なので、彼らにとっては難しいことの一つです。

ここでは、夢工房の連中が
レーシングカーを作る際を例にとってみますね。

まず日程表を作ります。
日程は

  • 大日程
  • 中日程
  • 小日程

の3種類を作ります。

いずれも「箇条書き」みたいな
文字情報ではダメです。
横軸に時間軸(日にち)を取って
そこに各仕事の所要日数に応じた
棒グラフの棒のような各仕事を配置していきます。
(分かりますか?)
つまり大事なのは
時間軸に対して
どのくらいのボリュームを持った仕事が
どういうタイミングで発生するのか
相互の関係はどうなっているか
それをビジュアル的に分かるようにすることです。
エクセルなんかを使うと良いでしょうね。

最初に作るのは大日程
これはイベントベースの日程です。
レーシングカーであれば、ターゲットにするレースが
この日程のゴールになります。

そしてゴールから逆算して
輸送とか(海外大会参戦では重要)
テスト走行とか
最終組立とか
チーム全体としての設計期間とか製作期間
そしてマシンの企画の期間
そんなことを決めていきます。

こんなふうに
チームの全員共通のイベントが記されます。

学生であれば作業する時間が大幅に変わる
テスト期間
夏休みなどの長期休暇
そんな情報も入れると良いと思います。

次に中日程
これは各パート単位の日程です。

例えば
サスペンションのパートであれば
設計期間とか
製作期間とか
それらを遂行するために何か必要なことなど
そんなレベルが記されます。

最後に小日程
ここまで来ると
必要な全ての部品について網羅している必要があります。

部品単位の設計とか製作
ボルトや材料など購入品の手配とか
最小単位のレベルもここで決めておきます。

この小日程を検討する段階では
全ての部品を網羅する必要があるのですが
この時点では設計は開始されていません。

なので、最小単位の部品の詳細なんて決まっていないのです。
でも、その日程を作っておかないと計画ができません。

こりゃ矛盾ですね。
さて、ではどうするか?

この小日程を作る際には
必要な全ての部品を含む
パーツリストを作るのです。
量産バイクのパーツリストってあるでしょう。
分解図とその部品番号・名称が入ったリスト
あんなヤツです。

え?
詳細を決めていないのに
細かい部品全てを含んだリストを作るの?

作るんです。

なので、小日程とパーツリストを作る時には
パートの構成についての概略を決めておきます。

イラストを描いたりしながら
「こんな部品で構成しよう」
というプランを暫定で決めちゃいます。

そのパーツリストには
図も必要です。
それも暫定で描いちゃいましょう。

設計の途中で
部品の構成や形状が変わったら
その度に描き直すのです。

面倒かもしれませんが
そうしないと全ての部品を
漏れなく管理することはできません。

例えば
「ボルトなんて、マシンを組む時に
そこらから見付ければいいや」

なんて考えていたら
事前にマシンの重量もコストも分かりませんし
大抵うまくいかなくてカッコ悪いことになります。

なんか統一感のない部品が使われていたり
ナットを締めた端末から
ボルトのおねじが、びよーんと飛び出ていたり
そもそも部品の手配が間に合わなかったり
そんなことが起きます。

3次元CADで設計しているなら
設計が完了した際に
最終的なモデルデータから図を起こして
パーツリストをメンテナンスしておけば
完成後の管理や
後の開発にも役に立ちます。

と、こんな感じでざっくり説明してしまいましたが
一番難しいのは
各作業に要する時間の見積もりだと思います。

日程を立てる段階で
各作業のボリュームを元に組み立てていくわけですが
日程を組んでみたら
とてもこんな期間じゃ終わらない
ということが発覚したりします。

その際は
仕事のボリュームが小さくなるような変更をしたり
その期間で終わるような工夫をしたりします。

また、日程にある
それぞれの作業には
経験の無い作業も含まれているわけです。
それらに要する時間を見積もらないといけない。
これ、プロでも結構難しかったりしますので
学生ならなおさらです。
この辺は経験とか想像力がものを言いますね。

学生にとって
日程を守るのが難しいもう一つの理由が
やりながら彼らは成長している
ということです。

やっていると
どんどん分かってきて欲が出てきます。
それを盛り込んでいくと作業時間は延びていきます。
もちろん日程を守れなくなる。

その辺にどうやって折り合いを付けるか
それも成長の一つなんですね。

技術は人なり

どうやって学びましょうね?

人間、若い時が脳細胞の数が多くて
年齢を重ねるとその数が減っていくとか

実はそうではなくて
年齢に関係なく脳神経細胞は増えていくのだとか

その辺は詳しくないのであまりよく分かりませんが
今は色々説があるようですね。

何にせよ
一般的には若者は「持ち時間」が多いわけです。
残された寿命が長い。

ということは
多少失敗しようがなんだろうが
大抵のことは取り返しが効くってことだよなぁ
と思いきや
若い方が色々なことに敏感で
リスクを避ける傾向にあったりして。

もちろんそうでもないこともありますけどね。
「若さに任せて」
なんてこともありますものね。

でも最近では
チャレンジするとかしないとか
そういうのって年齢関係ないな
とか思ったりしてます。

とにかくチャレンジする者
かたや
守りの姿勢でリスクを避ける者

デッカいものを目指して突っ走る者
かたや
小さいものを積み重ねていく者

色々います。

最近の世代云々とかもありそうですが
学年が一つ違うと
傾向がかなり違っていることもあったりして。

なので最近は
あまり細かいことにこだわるのをやめました。

世代とか何とか
そんなの関係ねぇや
と。

やるヤツはやるし
やらないヤツはやらない

私の手元にいるチャレンジャー達と
付き合っていられるのは4年間。
その時間をいかに有効に使うか
そこにもっとフォーカスしないとな
と思うのです。

難しいのは
彼らに「正解」を教えるのが良いことではない
ということです。

彼らに
「ほれ、これが正解じゃ!やれ!」
「ほーら、うまくいったろう?良かったね!」
簡単だけど、これは最悪。

こんなことができたところで
不確定な未来には役に立たない。
全くクリエイティブではないですもの。

単に言われたことをやって
バンザーイ!
なんてのは
ヤツらの仕事ではないのです。

じゃぁどうすんの!?

そこですよ。

以前、稲盛和夫氏の人生成功の方程式を紹介しました。

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

  • 考え方
  • 熱意
  • 能力

で構成されていますね。
学校ではそれらの一部とか
きっかけとか
その程度しか教えてあげられません。

それで良いのだと思います。

仮にそれらを構成する全てを教えられたとしたら
みんな同じになっちゃって
面白くないですから。
まぁ、ありえないことですが。

なので
それぞれの要素を
間違っていようが
不十分だろうが
色々試してみて
「あー!こうやるとこうなるのね!」
という経験を
たくさん積んで欲しいのですよ。

でも、そのためには時間と機会が必要です。

時間はもう決まってますが
それをどのように使うか
そこがポイント。

皆同じように4年間を持っていますが
皆が同じように使うわけではありません。

機会は、何とか知恵を絞って
得るなり作るなり
頑張ってもらいましょう。

でも、そのためには
勇気とか熱意が欠かせないですね。

とまぁ、その辺をひっくるめて
本当の学びなのだ
と思うのです。

では、そのためにどうすんの?

どうしましょうね?

どうせ正解なんて無いんだし
明日も学生とドタバタ、ジタバタやってみることにします。

こういうのを楽しめないとね。

技術は人なり

戦い方をどこから学ぶか

私は、いわゆるミリタリーオタクではありませんし
軍事的なものを特別よく知っているわけでもありませんが
軍事的なものの考え方は大変参考になると思っています。

戦訓とか地政学とか
戦略的なものの考え方を学ぶ機会があったらなぁ
と思うこともしばしば。

というのも
戦争に関わることって
大勢の命が掛かっていることなので
当然ながらレベルが高いのです。
色んな意味で。

もちろん戦争は起きて欲しくありませんが
先人達が命がけで取り組んだ結果、残されたものは
大事に使うべきだとも思います。

それに
技術の面で言えば
軍事技術と民生技術の明確な境目なんてありません。
乱暴な表現になっているかもしれませんが
そういうものだと思っています。

戦略の考え方などは
あらゆる分野に適用できます。
あと兵站についての知識とか。

正直なところ
自分はこういう戦略的な考え方とかは
得意な方では無いと思っています。
むしろ苦手かもしれません。
にしても、重要なのです。

レースなんかやっていると
結局はこういうことを必要とせざるを得ないのです。
競争=戦い
ですから。
恐らく他のスポーツも似たようなものでしょう。

もちろんこういうことは
仕事や日常生活にも役に立つと思います。

何もランボーみたいに暴れろとか
他人の隙を虎視眈々と…
とかってことではないですよ。

競争の前には準備があって
その前にはトレーニングが必要なわけで。
良い成果を出そうと思ったら
ちゃんとした準備は重要です。

勝ちたいと思ったら
役に立ちそうなことには色々手を出して
学ぶ必要があります。

そういうのを超本気で
高いレベルでやっている事例から学ぼうと思ったら
戦争の歴史とか
国防関係の知識に行き着きます。。

開発の手法だって
軍事的なところからきているものは結構あります。

というわけで
クルマ好き、バイク好き、レース好きな人って
なぜかミリタリーオタク多い気がします。
飛行機にやたら詳しい人とか結構いますもの。

さて
ここまで引っ張ってきましたが
今回は
非対称戦
というワードについて触れておきたかったのです。

戦争と言えば…
いえ、この場合は正確には「戦闘」ですが
どういうものを想像しますか?

双方が似たような兵器を繰り出してぶつかる

ですよね。

非対称戦は
その字のごとく
双方が似たような形態でガチンコ勝負するのではなく
大部隊に対するゲリラ戦
のような戦い方です。

多くの学生達を見ていると
どうも正攻法で真っ向から
ぶつからないといけないと思っているようなんですよね。

そんなことありませんか?

勉強にしたって
皆が同じようなことをできなきゃいけないような
そんな感じ。

ヘタすると
基本をしっかり押さえるのは大事だけど
それ以外は要らない
みたいな。

レースでどうしても勝ちたいときに
それをやったらお終いです。

もちろん技術とか実力は大事です。
それは基本です。

でも、強い相手に対して
敵の得意な方法でぶつかっていくのはバカです。
美しいかもしれませんが。

どうしても勝ちたかったら
王道とか、形式とか言っている場合ではないのです。

歴史を持つ強いチームは
大抵は層の厚い大所帯で
しっかり戦略を練ってきます。

それに対して
歴史の浅い小規模なチームが
同じやり方でいくなら
やる前から敗北確定です。

大きなチームは
物量にものを言わせて
立派な計画を立てて
いわゆる「消耗戦」で来ます。
正攻法ってヤツです。

それに対しては
迅速な意思決定や行動
相手の弱点を突くなど
いわゆる「機動戦」を仕掛ける必要があります。
言ってみればゲリラ戦ですね。

なので
すでに強い大規模チームと
チャレンジャーである小規模チームは
自ずと求められる能力が異なってきます。

消耗戦では
物量はもちろん
しっかりした基礎知識とか
明確なノウハウとか
情報の伝達などが効いてくるでしょう。

機動戦では
不明確なものに対処する即興性とか
経験に基づく豊富な暗黙知とか
言わずとも分かる「あうんの呼吸」とか
その辺がものを言うでしょうね。

夢工房の学生達がどちらを取るかは明確ですが
彼らに必要なことは
非常に教えにくいのです。

でもやります。