失った文化の話 その3

このへんから本題に少しずつ入っていきます。
前振りが長かったですね。
いや、まだ前振りかも。

ファブレスをやると
製造を他国に出してしまう。

厳密にい言うと
ファブレスだからと言って
海外に出す必要はありません。
国内で他の企業に委託というのもアリです。

でも、それを突き詰めると
人件費の低い他国へ
となる。

その結果、国内の製造拠点は減る

それだけなら良いのですが
国内に残った工場での人件費は
他国に出した製造に要するコストと
競争することになります。

同じ品質なら
安い海外製の方が良い
ってことになると
コスト的には国内での製造拠点の
存在理由が無くなります。

結果として
国内の製造拠点が減り
サプライチェーン、バリューチェーンが
国境をまたいで伸びていく。

私は学生の遠征の支援で
20年以上前から継続的に海外に行っていました。
主にアメリカやオーストラリアをはじめとした先進国です。

現地では、もちろん
短期とはいえ生活をして
消費をするわけです。

そこで感じたのは
商品の多くが
特に日用品の多くが中国製だったこと。

20年前はどうだったかな?
10数年前にはすでに
「これはマズイのでは?」
と思っていました。

その時は
現地の製造業をはじめとしたビジネスが
弱くなることを心配していました。
産業の空洞化というヤツです。

その時見た光景が
今は我が国でも起きています。

加えて
他国から供給される商品だけでなく
様々なものが
便利で効率が良くて楽チンな方向へ向かいました。

影響を受けたのは
職人仕事
個人商店などなど
そこには学校も含まれていて
挙げていったらキリがない。

便利で効率が良くて楽チンな
モノやシステム
それらは
国内外の大手など
いわゆる上流に依存しているので
自分でコントロールできない。

というか
自分でコントロールしないで済む
楽チン状態。

自ら価値を生み出すのは面倒なものです。
高性能なツールなどを使って
品質や性能を向上し
生産時間を短縮したりするのは良いとしても

リスクを承知でトライする
何度もなんどもチャレンジする
どうすべきなのかを考える

そんな面倒なことをせずとも
提供されたものを掴めば
無駄なことをしなくても済む
リスクを冒す必要が無い。

といったように
目先の効率向上のために
価値を生み出す能力を
手放していないだろうか。

話を戻してサプライチェーン。

近年のように
地政学的リスクが上昇してくると
国境を跨いだサプライチェーンがリスクになります。

何かあったらモノが入ってこない。
国内でも作れない。

これは政治上の武器になります。
生活に必要な物品の供給源を
他国に握られてしまうというのは
いわゆる安全保障上の問題にもなりえます。

国内に製造を戻したいと思っても
工場も
技術者も
熟練した技能者も
戻ってはきません。

トランプ大統領が輸入品に高い関税を課すのは
一見ハチャメチャなようですが
国内に製造を戻す
という観点では
ある程度理に叶っているのです。
かなり荒療治で
うまくいくかどうかは分かりませんが。

どうやら今回も前振りに終始してしまいました。
まだ続きます。

失った文化の話 その2

良い物が安く作れるようになる
これは結構なことです。

技能を要する製造工程を
コストの低い他国へ移管してしまう

沢山、安く作りたいから

基本的に
物は沢山作れば単価を下げられます。
「量産効果」ってヤツです。

原材料は、沢山仕入れれば安くなるし
製造に要する型や工具の費用も
それによって作られる製品の数が増えれば
製品1個あたりに乗せるコストは下がる。

しかもそれを
人件費の安い国でやれば
かなりコストは抑えられます。

なんたって
物を作る上でもっとも効いてくるのは
人件費ですから。

ただ、品質を確保しなければならないので
どこの国でも良い
というわけにはいきませんが。

日本もかつて人件費が低かった時代に
世界の工場
と呼ばれた時期がありました。

今、世界の工場は
中国ですね。

賃金上昇や地政学リスクを理由に
ベトナム、インド、タイ、インドネシア、メキシコ
などへ分散しているようですが
いまだに圧倒的に中国が強くて
これはしばらく続きそうです。

さて、一体どこが「失った文化」の話なのでしょう。
まだ続きます。

失った文化の話 その1

アメリカのアップル社で
一躍有名になったビジネス手法に
ファブレス
というものがあります。

これは
ファブリケーション・レス
つまり社内で製品そのものを
製造しないということです。

企画と設計、販売はします。
でも、製造は外部に委託する。
なので製品には
Designed by Apple in California
と表示されています。

で、どこで作られたかは
Assembled in China
Assembled in Vietnam
Assembled in India
とあります。

「Assembled」は最終組立地です。
製品を構成する細かい部品単位で見ると
それはもう様々な国で作られているわけです。

ファブレスのビジネスでは
企画・研究開発 → 設計 → 部品製造 → 組立 → 流通・販売 → マーケティング・サービス
と、いわゆるバリューチェーンの上流から
下流に行くに従って付加価値や
利益率の大きさをが変化します。
このようにグラフで表すとU字型になっていて
「スマイルカーブ」と呼ばれます。
ニッコリした口のようだからですね。

ファブレス企業は、このバリューチェーンのうち
利益が大きい上流の企画、設計
下流の販売以降を握っています。

で、中流部分は
人件費の低い国に任せる。

すると、良いものが
お安くできて
利益率も向上します。

従来は、一つの国の社内で
全ての工程を持っているのが普通でした。

それを初めて変えたのがアップル
というわけではありませんが
有名にして、その流れを主導したのが
アップルと言って良いのかもしれません。

人件費の安い他国に依存して効率を向上させるのは
ビジネス的には正解なのでしょう。
今や多くの会社が
そういうスタイルで仕事をしています。

しかし…です。

続く