すでに一部では自動運転タクシーが実用化されていますが、普通のオーナーが所有する自家用車はどうでしょう?
国内の自動車メーカーは、今やかなり高いレベルのアシスト機能を実用化していますし、テスラなどはかなり高いレベルにあるようですが、まだ完全な自動運転というレベルには達していないようです。
タクシーは自動運転なのになぜ?と思うでしょう。
タクシーは限定された環境(限られたエリア)だから成立しているのです。
ちなみに、官民ITS構想ってのがありまして、そこでは自動運転のレベルを以下のように定義しています。
ここでは、全く自動化されていない状態を「レベル0」、それこそ車内にハンドルが必要無い完全な自動化を「レベル5」としています。
国産の乗用車で実用化されているのは、縦方向(クルマの前後方向)の自動化である車間距離を保つアダプティブクルーズコントロールと、横方向の自動化であるレーンキーピングなので、表の「レベル2」に相当します。
テスラはもうちょっとレベルが高くて、「レベル3」といったところでしょうか。
自動運転タクシーのウェイモは「レベル4」です。
運用エリアは限定されていて、その領域外を無制限に走れるわけではありませんので。
そう、限定された環境での自動化では、完全な自動運転ではないのです。
それは結構ハードル高いのです。
ちょっと羅列してみましょうか。
まず、我々の周囲の環境は、イレギュラーな事象の連続です。
何が起きるかなんて決まってませんし、いつも同じ状態であるという保証はありません。
そういった未知のものに対応するのは結構難しいのです。
AIなどは、過去の情報を学習して判断します。
なので、過去に起こったことが無い事象には対応しにくいでしょう。
AIの判断としては「トロッコ問題」なんかも有名ですね。
で、万一の際の責任も難しい問題です。
事故が起きたら、それは人の責任なのか、メーカーの責任なのか、はたまた責任なのか、とかね。
もちろん技術的な問題もあります。
ハッキングされたらどうするの?とかね。
これはすでに自動化されたクルマのシステムにハッキングできるという事例があります。
事件では無く、実験のようなレベルだった気がしますが。
他にもプログラムのバグとか、コンピューターがフリーズしちゃったり暴走しちゃったりしたらどうすんの?とか。
あと、完全な自動運転をやろうとすると、高度な自動化とはちょっとレベルが違う話になります。
コンピューターのスペックとしては、1000兆バイトのデータ、毎秒6ギガバイトの処理が必要になると言われていますが、現時点ではそれが可能なプロセッサーが無いのです。
量子コンピューターが実用化されたら何とかなるのかな?
ところで、完全自動化に至る直前の、高度な自動化レベルでも、自家用車であれば緊急時にはドライバーが運転する必要があります。
でも、自動化が進めば進むほど、緊急時の自動から手動運転への切り換えは難しくなるはずです。
だって、自動化のレベルが高ければ高いほど、ドライバーは寝たくもなるでしょうし、車内で映画みたり飯食ったりしたくなるでしょう?
私はしたくなります。
そんな時ほど急に運転なんてできませんものね。
なので、恐らく我が国で「自動運転車」として販売されるには、使用領域を限定せず、システムが全ての操縦を担って運転者を全く必要としない状態にする必要があるのではないかな、と思っています。それこそハンドルやペダルが無いヤツ。
これは相当高いハードルです。
そういう時代の転換点とも言える技術開発は、日々チャレンジの連続で大変なはずですが、エンジニアとしては一番やり甲斐を感じられる瞬間でもあります。
そういうフィールドでもタフネスを発揮できる下地を学生のうちに作っておくには、やはりチャレンジの日々を送る以外無いでしょう。