レースってこんなことしてます その3 速いってどういうこと?

今回も簡単なお話でいきますよ。

フィジカル面の投稿
スタート前に心拍数が上がる
という話をしましたが
自分のレースのスタート時のことを思い出しちゃいました。

スターティンググリッドに着いて
スタートを待っているとき
「今、帰るって言ったらみんな怒るかな~」
とか訳わかんないこと考えちゃうんですよ。

何を考えるかは
その時によるし
レースにもよるんですけどね。
でも、「帰る」なんて訳わかんないでしょ。
それくらい緊張することがあったってことですね。
逆に凄く冷静なこともあるんですけどね。

やっぱりスタートの時って普通の状態じゃないんだな。

レースのスタートは嫌いです。
シグナルが変わる瞬間までは嫌い(笑)
最初の1周は大好きだけど。

さて
レースの難しさって
すなわち楽しさでもあるんですが
どの辺が難しいのでしょうね。

個人的には
限界が目に見えないないこと
だと思ってます。

例えば
コーナリングしていて
どのぐらいのスピードで曲がれるかとかは
目に見えるわけじゃないのですよ。

「あー、このへんが限界かなぁ」
「ボチボチ限界が来そうだなぁ」
と感じることはあります。

でも
物差しの目盛りを見るようには限界は見えない。
その「分からない」が
難しさで
それを何とかするのが
面白さかなぁ
と思ったりします。

もちろん
プロのレーサーは凄いですよ。
凄い精度でマシンをコントロールします。
五感のセンサーが凄い性能なんですね。

ちなみに
レーシングマシンにはスピードメーターは付いてません。
「このコーナーは何キロで入って~」
なんてやりません。

そうそう
昔、筑波サーキット(聞いたことあるでしょう?)
ってところをバイクで走ったのです。
確かタイヤメーカーの走行会だったかな。
当時レースもやってたんですが
たまたま街乗りバイクを買った直後だったので
「サーキットでも走ってみようかな-」
と軽い気持ちで行ってみたんですよ。
結構速いバイクだったもんで。

走行中に
バックストレート(メインの直線以外の長い直線です)で
何キロ出るか気になったんですね。
一番スピードが出るのは、その直線の終わりの部分です。
その直後はもちろんコーナーなんですが
そこでメーター見たんですよ。
「おぉ、すげぇ!こんなに出るんか!」
とか喜んでるうちに
その後はすぐに最終コーナーが来るわけですよ。
ブレーキングが遅れて飛び出しそうになりました。
死ぬかと思った。
それ以来
街乗りバイクでサーキット走っても
スピードメーターを見なくなりましたとさ。

速く走るためには
技術とか経験とか
もちろん勇気とかも必要なんですが
どうなっちゃうか分からないような
無茶はしません。

死にたくないし。

レースやってると
「危なくないの?」
と聞かれることがありますが
答えに困りますよね。

だって
確かに凄いスピードでクラッシュしたら危ないですけど
レースって、クラッシュするために走ってるわけじゃないですから。

クラッシュするってことは
すなわち負けるってことです。
なので
クラッシュはしたくないです。絶対。
でも
限界からほど遠い走りをしていたら勝てない。
その狭間で走ってるんですよね。

正直なところ
レースはリスクあるけど
ラグビーほど危険じゃないと思うな(笑)
いや、どうなんだろ。

でも、サーキットにはメディカルはあるし
準備は整った状態でレースしてるからなぁ。
サーキットでの死者数って
驚くほど少ないはずです。

それにあんまり危険にはフォーカスしてないかな。
そんなとこばかり見てたら
レースなんてできないと思う。
リスクのネガティブ面を見てたらきりがないです。
日常生活も一緒でしょ。

さて
ここからが今日の本題です。

レースは競争なので
勝ちたいわけですが
勝つためには速く走らなきゃいけません。

前を走る人がいたら
抜かないといけません。

抜くためには
前走者よりスピードが速いことが前提です。

レースは
コンマ数秒を争う
なんて言われますが
どういうことか

例えば
1周2kmのサーキットを10周走るレースがあったとしましょう。
そのサーキットでのトップスピードは200km/h
ざっくり1周の平均スピードは100km/hくらいと考えましょうか。

1周のラップタイムが0.1秒違うとどうなるか
たかだかコンマ1秒です。

スピードが100km/hなら
0.1秒に進む距離は2.8m

10周のゴール時には1秒の差が付きます。
距離にすると28mの差が付くということです。
これは圧倒的な差です。
そう簡単には埋まりません。

そのサーキットに5つのコーナーがあったとしましょう。
1周で0.1秒稼ぎたければ
コーナー1つあたり
0.02秒速く走れば良いのです。

まぁ、それが簡単ではないのですけどね。
でも、そういうお話なのです。

その0.02秒のためにどうするか

トレーニングしたり
マシンのメンテナンスだったり
できそうなことは色々あります。
山ほどあります。
メンタルだって効いてきますよ。
だって0.02秒だもの。

頑張ってレースやってる人なら
ある程度経験を積むと
サーキットのラップタイムのバラツキは
コースや人によりますが
大抵は1秒以内になると思います。
1周1~2kmの短いコースなら0.3秒以内とか。

1周走る間に
アクセル開けたり閉じたり
ブレーキ掛けたり曲がったり
なおかつ走行ラインも考えて決める
凄い数の操作をして
そのバラツキですよ。
凄いですよね。

チマチマスピードを稼ぐ重要性がお分かりいただけましたか?

もう一つ重要なことがあります。
これも超重要。

それは
前走者と違う走行ラインを取る必要がある
ということです。

当たり前ですね。
同じラインで走って抜こうとしたら
絶対抜けません。
追突しますから。

これね
日常生活や仕事に置き換えて考えてみてください。

前走者と同じことをしていたら抜けない

そう
周りと違うことをしないといけないんですよ。

意識してますか?
勇気いるでしょう。
変態の馬鹿野郎になる必要があるってことですよ。
…って、そうじゃない?

他にも色々あるんですが
今回はこのへんにしておきましょう。

何のために

レースシリーズはちょっとお休み。
今日は気付いたことを書いておきます。

何かをやるに当たって
「何のために」
が無ければ
多くの場合は
自分の「安心」という感情を満たすためのことを
自動的に実行する。

もし
「何のために」
が「自分のため」だと
実行した結果には価値がない。

ただし
時として
一見、自分のための行動でも
自分の枠を突き抜けて
誰かが喜ぶようなレベルに到達して
価値を生み出すこともある
…のかな?
でも確率は低い。

自分以外のためにやると
そこには価値が生まれる
それが自分の好きなことであれば
より価値を大きくすることができるはず。

レースってこんなことしてます その2 モータースポーツのフィジカル面

前回はレースの種類をざっと説明してみました。
今回は、どんなことをしてるかを
ちょっとだけ掘り下げてみましょう。
今回はフィジカル面です。

まず最初にご理解いただきたいのは
モータースポーツはスポーツであるということです。
最初、「れっきとしたスポーツである」
って書きたかったのですが
「れっきとした」をやめました。
後ろめたいことはないのですが
モータースポーツは特殊なんだな
と思ったからです。

なぜ特殊かというと
人間のパフォーマンスに対して
使う道具のパフォーマンスが非常に大きいからです。

ここがモータースポーツがスポーツとして
日本で認知されない理由の一つなのかな
とも思っています。

動力源が付いた乗り物に乗るわけだから
楽だと思う人が多いのではないかな。

とんでもない!

もう一回言いましょう

とんでもない!

今でも忘れられないことがあります。
昔、1997年に中野信治選手が
日本人として5人目のF1ドライバーになったとき
あるニュースにゲストとして呼ばれて
アナウンサーから聞かれました
「F1って疲れるんですか?」

言葉を失ってしまいました。
中野選手は苦笑いしてましたが。

20年以上経った今でも
一般的な認識は
そんなに変わっていないのではないでしょうか。

四輪の究極のレーシングマシンであるF1マシンは
曲がったり止まったりするのに4G以上のGが掛かります。
つまり体重の4倍以上の力が掛かるわけで
仮に体重を70kgとすると
なんと280kg以上の力が止まったり曲がったりするときに作用するわけです。

ドライバーはこの力にただ身を任せているわけではなく
これに抗って色々考えながら正確にマシンを操作しています。
普通の人なら1分も耐えられないかもしれません。
ちょっと異常なレベルです。
レースでは、これを2時間、距離では300kmくらいやってるわけです。
なので
F1ドライバーは例外なく超マッチョです。
無駄な筋肉はありませんが。

では
もっと小さいマシン
もっと短い時間のレースではどうか?

もちろん程度の差はありますが
どんなカテゴリーでも
本気で走るなら
やはり体力は必要になります。

どんな例えなら分かりやすいかな。

例えば
モトクロスなどのオフロードコースをバイクで走ったとしましょうか。
凹凸とカーブがあるオフロードコースです。
1周の長さは1km程度。
大きいジャンプや上り下りなんかは
話がややこしくなるので無しにしましょう。

仮に
そんなコースを50ccのバイクで
頑張って走ったとしましょうか。
レースではなしに。

バイクに乗れる人なら、かなり楽しいと思います。
でも、頑張って走ると2周は走れないかもしれません。
それくらい体力を使います。
もちろん、初心者だと無駄に体力を使ってしまう
というのもありますが
参考にはなるでしょう。

レンタルのゴーカートなどでも
そこそこ速いのに乗って本気で走ると
かなりの体力を使うことが分かると思います。
「2時間連続で本気で走ってみろ!」
って言われても
「無理です」
ってことになるでしょう。

スポーツ生理学では
サッカーの運動量がトップレベルだと思います。
で、モトクロスはその次くらいに位置します。

一般的には
強力なエンジンが搭載されたマシンの方が
より体力を要する傾向になると思います。

大きな力で
凄いスピードで動くマシンほど
操縦する側はマシンの動きに先行して
体が準備できていなければならないし
コントロールもシビアになるからです。

じゃぁ
小さい排気量のミニバイクのレースや
周回数の少ないレースは楽なのか
簡単なのかというと
決してそんなことは無かったりします。

排気量が小さかろうと
走行時間が短かろうと
勝とうと思ったら全力ですので
やはりそれなりに大変な世界なのです。

私がかつてやっていた中で
フィジカル面で一番大変だったのはエンデューロです。
オフロードの耐久レース。

2人組で4時間とか8時間とか走ってました。
バイクは250ccとか600cc
600ccはきつかったなぁ。
パワーありすぎて。

8時間のレースが終わると
なんと体重が5kgも減っちゃうんですよ。
お尻の皮が剥けちゃうし。

脱水症状にもなっちゃうので
走行中はハイドレーション
水が入ったバッグですね
これを背負って水分補給しながら走ります。

ちなみに
エンデューロをやっていた頃はサラリーマンだったのですが
夜9時まで残業して帰宅したら
筋トレして
ロードワークして
それから寝るのが日課でした。
雨が降っても毎日。

走りきって良い成績取るには
そうするしかなかったんですね。

後にロードレースに転向しましたが
その時は小排気量のレースだったので
体重を減らすために食事制限をして筋トレしてました。

そうそう
レースに体力は必要ですが
忘れがちな重要なことがあります。

それは呼吸。
集中して体力を使うシーンでは
ついつい呼吸が止まります。
特にコーナリングの時ですね。

それが継続すると酸欠状態になって
正常な判断ができなくなります。
なので
レース中は意識的に呼吸をするようにしてましたね。

みなさんも普段
忙しいとき
緊張したときに
呼吸が止まっているかもしれませんよ。
意識してみてください。
ハイドレーションも忘れずに(笑)

あと意外と知られていないこと。
レースのスタート前
シグナルが変わる直前は
まだ体が動いていないにもかかわらず
心拍数が100を楽々突破します。
こんなスポーツはなかなか無いのでは?