はじめての海外ツーリング 第3話 出国

2019年12月27日、いよいよ出発の日。

駅まで卒業生の車で送ってもらい(朝5時に!ありがたいことです)、埼玉の坂戸駅から朝05:25発の高速バスで成田へ。
08:00 成田空港第2ターミナル着、中国東方航空チェックイン。
今回は全てのフライトはこれまで貯めたデルタ航空のマイレージで。
行きは何とビジネスクラス!初のビジネス!
ジェットスターのなんちゃってビジネスはアップグレードして乗ったことあるけど、ちゃんとしたのは初めて。
帰りはエコノミーだけど。

ツーリングギア一式を収めた荷物は結構重くて、持って歩くとヨロヨロする。キャスター付きのスーツケースって凄いんだなぁと改めて思う。
成田空港の出発フロアの混雑はそこそこだったが、年末のため、出国ゲートが非常に混んでいた。2列で数十メートル。100m近くあったかも。
しかし、ビジネスクラスだったので、プライオリティの列でセキュリティを通過。待ち無しだった。素晴らしい!
朝食はラウンジで摂った。

10:55 成田発 中国東方航空MU272便
上海浦東空港までの所要時間は3時間55分。
成田から上海までの間は、なぜかあまり記憶に残っていない。なぜだろう。
上海の空港は浦東と虹橋の2カ所あって、トランジットで双方を移動する必要がある場合もある。今回はその必要は無し。

13:45 上海浦東空港着 Terminal 1
乗り継ぎ地の上海-浦東で6時間待ち。なんと6時間だ!

曇って見えるのはPM2.5の影響だろうか

中国東方航空を利用したトランジットなら入国審査は自動化ゲートだった。
ただし、自動化の意味あるの?ってくらいパスポートの読み取り感度が悪くて、結局係員が次々に手動で機械を操作していた。
長い待ち時間は、中国東方航空ラウンジで本を読んで時間を潰した。
6時間もあれば上海の街中をブラブラできたかもしれないけど、今回は余計なことはしないと決めたのだ。
なので、ずっとラウンジに留まっていた。6時間も。
夕食は機内で出るので、ラウンジでは軽く。
なんてったってビジネスだからね!

この空港で驚いたことがある。
トイレに行って用を足し、手を洗うために洗面台に近付いたら清掃員が壁にもたれかかってスマホをいじっていたのだが、こちらの姿を見るなり「ハッ」とした感じでペーパータオルを取って手渡そうとした。
「大丈夫だよ」って感じでそれを制したんだけど、これには正直衝撃を受けた。
サボってスマホいじってたのを見られてバツが悪かったのだろうか。
にしても、利用者にペーパータオルを差し出そうとする清掃員なんて見たことない。
日本はもちろん、たぶん世界中どこに行ってもそんな人はいないだろう。
ちなみに、ラウンジ内のトイレではなく、普通の出発フロアでの出来事です。

19:45 上海浦東空港発 中国東方航空MU737便
メルボルンまでの所要時間は11時間15分。
ビジネスは信じがたいほど快適。
果たして残りの人生で自腹で乗ることがあるだろうか。

つづく

はじめての海外ツーリング 第2話 準備編

バイクの予約をした数日後、レンタル会社から今回の予約は受けられないとの連絡が来た。

今回のツーリングは年越しなので、日本は冬だが、南半球のオーストラリアでは夏。
北部(赤道寄り)は雨期で、道路が冠水して寸断されることがある。
それは南北を結ぶ大動脈であるスチュアート・ハイウェイでも同様で、その時期のそのルートでは貸せないとのこと。
というわけで、縦断ルートは断念せざるを得なくなった。

仕方ないのでルートを変更することにした。
レンタル会社は、オーストラリア大陸東端のブリスベンかシドニーから出発して、メルボルンに行くルートを勧めてきた。
ここは海沿いを走れば景色が良くて快適だと。

しかし、内陸の赤い荒野、アウトバックに行ってみたかったのだ。
快適な思いをしに行きたいわけではない。
海は日本にもあるが、アウトバックは無い!

過去20年近く、学生に付き合って毎年オーストラリアに行っていたけど、メルボルンやアデレードといった都市部もしくはその近郊のみで、内陸部に足を踏み入れたことは無かった。
アウトバックを知らないままでは、本当のオーストラリアをまだ分かっていない気がしていたのだ。
当初縦断ルートを計画したのは、大陸縦断そのものに魅力を感じていたのだけど、そこにはアウトバックに足を踏み入れるという目的も含まれていた。
きっと何も無くて過酷なルートなのだろうけど、どのくらい何も無くてどのくらい過酷なのか知りたかった。

ちなみに、アウトバックの未舗装路を走行する場合、燃料か水のいずれかが無くなると死ぬと言われている。
今回は舗装路しか走行しないけど、その雰囲気を味わえるルートを取ろう。
いずれ挑戦する縦断のための情報収集にもなるはず。

なので、シドニーよりも距離が長くなるブリスベンを出発地として、可能な限り奥地に入り込んでからメルボルンに向かって南下するルートを取ることにした。
具体的な走行ルートは、Googleマップを使って、1日に可能な走行距離に対して給油ポイント、宿泊ポイントを探りながら決めていった。
結果、総走行距離は3500kmで縦断より長くなった。これを1週間で走りきる計画。
飛行機の往路は、成田-上海-メルボルン-ブリスベン、復路はメルボルン-上海-成田というルートに変更。

新たに設定したルート
できるだけ奥地に行くために、オーストラリアの中で海から最も遠い町と言われるエロマンガを経由地にした
赤茶けたところがアウトバックと呼ばれる砂漠地帯で人はほとんど住んでいない
周囲の緑色の部分にほとんどの人口が分布している

ライディングの装備は今回の準備で悩んだ唯一のポイントだった。
これは出発当日まで悩んでいた。
ライディングウエアはかさばるから余計なものは持っていきたくないが、場所が場所なので想定外の場合の対応ができない。何せ一度出発してしまったら、ほとんど人がいない場所を走り続けるのだから。
日本国内のように、何かあったら付近の町で何とかする、というような考え方はできない。

現地は夏とはいえ、1日の温度差が激しいはず。
経験上、夏のメルボルンは1日のうちに20度くらいの寒暖差がある。
ただし、今回はもっと緯度が高い北方(つまり赤道に近く、暑い)に行く。
アウトバックに突入すれば気温は45度を超えるかもしれない。
さらに雨期かもしれないというところがポイント。
事前に現地人から「夏のブリスベンは降るぞ。レインスーツは絶対必要だ」という話を聞いていた。果たしてどのような装備で走るべきか。

暑ければメッシュのジャケットが最適だが、気温が低ければ、ある程度の防風性や耐寒性を考えた物が必要だし、雨が降れば防水性が必要。
限られた日程の中でで距離を稼ぎたいから、できれば雨が降ろうが晴れようが走り続けることができる装備であれば荷物も最小限になり理想的。

結局、走るのは朝から夕方、つまり気温が上がり始める前から最も気温が高いピークを過ぎた時間帯なので、基本は日本の夏装備で良いだろうというのが結論。
よって、日本の真夏でも対応できる装備とした。
ただし、雨が降っても短時間で対応できるように、下はゴアテックスのライディングパンツとブーツにして、上はメッシュのライディングジャケット。これなら急に雨が降ってきてもレインスーツの上だけを羽織れば良いし、もし気温が低くても、ジャケットのインナーライナーを着けて、その下にフリースジャケットを着れば何とかなるだろう。

ちなみに、距離を稼ぎたければ夜も走れば良いではないか、というのはオーストラリアでは通用しない。
ヘッドライトの明かりめがけてカンガルーが飛び込んでくるからだ。
走行中に衝突したら死んでしまう。もちろんこっちが。

あと、必要な装備は何だろう?
工具くらいだな。
そうそう、毒を持った生物がいる土地だからピストン式のポイズンリムーバーと、灼熱のアウトバックで身動きが取れなくなったときのために、アルミ蒸着シートのエマージェンシーブランケットを持って行こう。

持ち物のパッキングはどうするか。
普通の旅行のようにスーツケースで移動して、バイクの受け取りに行き、そこでスーツケースの発送を頼み、バイクの返却ポイントで受け取るということもできるにはできるが、日程通りに受け取れる保証は無いとのこと。それにそもそもスーツケースに全ての荷物は入らない。
というわけで、荷物はツーリング用のバッグに詰め込んで持ち運ぶことにした。

持ち物は徹底的に減らす。
着替えなどはかさばるので、2、3セットあれば良い。毎晩洗濯すれば良いのだ。夏で乾燥しているのだから乾くだろう。それに、毎日走るだけなので他にやることは無い。朝起きて、朝飯食って走って、昼飯食って走って、晩飯食って寝るだけだ。その繰り返し。余計な物は必要無い。

走行に集中して距離を稼ぎ日程内に走りきるために、可能な限り余計なことはしない方針でいこうと決めた。
基本的には写真を撮るために停まることもできるだけしないことにする。よって、デジカメは必要無い。しかし、なぜか撮影用のドローンは持って行くことにした。
あと、ヘルメットをどうやって持って行くかも問題。
バッグに入れて預け入れ荷物にすると、恐らく飛行機の積み降ろし時に、落としたり投げたり、積み上げられたりされる。
以前、一度だけ海外にヘルメットを持って行ったことがある。その時は、ダッフルバッグに入れて機内持ち込み手荷物とした。ヘルメットは機内持ち込みでも問題ないはずだが、たまに文句を付けてくる航空会社もある。まぁ、その時はその時だ。

今回オーストラリアまで利用する中国東方航空もオーストラリア国内で利用するジェットブルーも、預け入れ荷物は23kgのバッグ2個まで無料だったので、荷物は機内持ち込み1つと、預け入れ2つの合計3つにした。移動時は、この3つを持ち歩くことになる。

1つめの預け入れ荷物は、大型(82L)で筒状のツーリング用防水ドラムバッグ。これにはメインの物資を入れて、走行中はタンデムシートに載せる。
2つめの預け入れ荷物は、折りたたみ式のダッフルバッグ。渡航時には、ブーツやライディングウエアなどのライディングギアを入れておく。これは現地に着けば用済みなので、畳んで収納すればいい。
機内持ち込みの手荷物は、容量30Lの防水のツーリングバッグ。渡航時にはヘルメットを入れるが、乗車時には畳んで収納しておけば良いし、荷物が増えた際にもサブバッグとして対応できる。

よし、何とかなりそうな気がしてきた。

つづく

はじめての海外ツーリング 第1話 計画編

現在、コロナの影響で、バイクに乗りたくても我慢してる皆さんは
たくさんいるのではないでしょうか。
バイクに乗らなくても、色々我慢している人は多いことでしょう。

そんなみなさんの気晴らしや暇つぶしになればと思い
2019年末から翌年の年始にかけて、初めての海外ツーリングとしてオーストラリアを走ったときの記録を元に文章を起こしてみました。
今考えてみれば、コロナウイルスが蔓延する前に帰ってこられたのでラッキーでしたね。
これがきっかけになって、コロナ明けにドーンと行っちゃってくれると幸いです。

まずは計画編からいきましょう。
では、はじまりはじまり

以前、オーストラリアの開拓史について書いた本を読んだことがある。

オーストラリアに到着したイギリス人達にとって、この大きな陸地の内部は未知の世界であり、内海があるに違いないと思っていたそうだ。
しかし、内陸部の環境は過酷で、多くの探検家が失敗を繰り返して命を落とした。

そんな中、1862年にジョン・スチュアートがアデレードからダーウィンの縦断(つまり南から北への縦断)に成功したのみならず、往復をも成し遂げる。しかも1名の犠牲者も出さずに。
オーストラリア大陸を南北に貫くスチュアート・ハイウェイの名前は、そのジョン・スチュアートにちなんで名付けられた。

ちなみに、同国で行われている世界的に有名なソーラーカーレースは、このスチュアート・ハイウェイをダーウィンからアデレードへ南下して行われている。
そんな道で縦断ツーリングするなんて冒険ぽいじゃないか。

というわけで、数年前から、アデレードを発ちダーウィンに向かう縦断ルートの走破を考えていた。
ルートはもちろん、オーストラリア大陸の中央を南北に貫くスチュアート・ハイウェイ。
中間地点には、かの有名なエアーズ・ロックもある。
距離にして3,000km、一週間あれば走りきれると見積もった。
これなら盆休みや年末年始の休暇期間で行ける。

海外ツーリングが初めてなのに、大陸縦断だとか一週間で走りきるとか、大胆なのかセコイのか…そんなことは気にしない。
そもそも、ゆっくり旅ができるほどの休みが取れるのはいつになるのか分からないので、その時を待つわけにはいかない。
1週間で大陸縦断をするとなると、余計なことは一切できないかもしれないけど、それはそれでチャレンジ感があって良い。

2019年の夏に、「行くなら今しかない」と急に思い立ち、諸々の予約をした。時期は年末から年始にかけて。
つまり現地で年越し。

まずは、この縦断ルートを前提としてバイクのレンタルをネットで申し込むことにした。
バイクの貸し出しポイントは南のアデレード、返却ポイントは北のダーウィン。

一週間という時間制限付きで3,000kmを走るとなると、恐らくその内容はただ走るだけになる。
ビューポイントで観光しながらのんびり、というわけにはいかないだろう。
もちろんバイクの選定は重要。
時間に余裕があるならオフロードバイクでキャンプしながら、時にダートを走りながら…という選択もあるかもしれないが、今回は毎日確実に走行距離を稼ぐために長距離の高速巡航を繰り返せる機種にする必要がある。

なので、BMWの水平対向2気筒を積むRシリーズ一択とした。
これなら500~800km以上の走行を毎日繰り返せる。
本当は今乗っているR1200RSが良かったのだが、レンタルのラインナップに無かったので、より大柄なクルーザーであるR1200RTとした。

利用したのはここ BIKE ROUND OZ

オーストラリアのレンタルバイクは、日本から簡単にネット申し込みで予約ができる。
料金は、日本車とドイツ車では、あまり違いは無いと思う。
かの国では、全てのバイクが「外車」なのだ。
ただ、ハーレーはワンランク上の料金だった。
ハーレーは排気量も大きいし、ステータスも上なのだろう。

オプション装備は、タンクバッグ、トップケースと純正ナビを選んだ。
サイドバッグは標準装備だった。
ちなみに、スマホのナビでも都市部では何とかなるが、奥地に入ると携帯の電波は届かないこともあるだろう。
よって、GPSナビは必須と考えた。

ちなみに、R1200RTを一週間借りて、1,946豪ドルだった。
1豪ドルを80円で計算すると156,000円くらい。
これは対人対物保険込みの金額。
ただし、転倒などでバイクを壊すとその分の修理代は取られる。
これを軽減するオプションの保険も用意されている。

飛行機はマイルを使ったので無料だ。
往路は成田-上海-メルボルン-アデレード、復路はダーウィン-メルボルン-上海-成田というルートで予約。

道中の宿は、ポイントがたまっている予約サイト経由で予約ができる宿で繋いでいけば、うまく行けば宿泊費も無料だ。

つづく